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「残念で遺憾」? 「大失態」の茨城県警
2008年03月25日07時48分
【PJ 2008年03月25日】− 「スーツにネクタイ、ニット帽にリュックサック」が23日に茨城県土浦市のJR常磐線荒川沖駅で無辜(ムコ)の市民8人を無差別に殺傷したときの金川容疑者の格好である。駅の現場には19日の殺人事件で指名手配中の男を捜索するため私服警官8人が配置され、警戒を行っていた。そのなかでのあまりにも傷ましい惨劇であった。
掲題の「残念で遺憾」は、23日に開かれた記者会見で茨城県警の石井孝刑事部長が「こういう結果になったのは残念で遺憾」と発言したもの。さらに同部長は「(張込および警戒は)ベストを尽くしたつもりだ」とも語った。19日に一人の人間が殺害され、電話で「早く捕まえてごらん」と挑発までされたなかでのこの日の無差別殺戮である。「ベストを尽くした」などとよくもしゃあしゃあと言えたものである。
山上高広さん(27歳)が何のいわれもなくその若い命を奪い去られ、2人の方が重体、5人の方が軽傷を負わされたのに、県警幹部のこの事態認識の甘さと事実の重みに対する鈍感さは一体何なのか。
TVインタビューで殺害された山上さんの知人が「警察は170人態勢で警戒していたというがこんな事態となった。警察は一体、何のためにあるのか」といった主旨のことを述べ憤っておられたが、まさに同感である。
警察官の配備は怠りなくやっており「ベストを尽くした」が、しかしその間隙(かんげき)をぬって容疑者が疾風(ハヤテ)のごとく殺りくを行ったので、仕方がなかった。できるだけのことはやったなかでの事件です。落ち度はなかったと考えています。だから非常に「残念で遺憾」だと言っているとしか、県警幹部の発言からは聞き取れぬ。
「警察の責務」を警察法は、第1章総則の第2条において「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする」としっかり定義している。今回の事件を語るのに大上段に警察法の条文まで持ち出し振り回すことに、わたしはある種の哀しみを覚える。こんなことまで持ち出さずとも警察が何たるか、国民はよく知っているはずだからである。しかしこの条文はいま警察官自身がよく熟読玩味し、己の職務・使命をよく理解する必要があると思えばこそ、わざわざここに大仰に引用させてもらったのである。
99年に発覚した神奈川県警の一連の不祥事もみ消し事件以来、ここ10年ほど警察の不祥事は後を絶たず、警察に対する国民の信頼は地に落ちたとも言える。
その信頼回復のため国家公安委員会は2000年3月に「警察刷新会議」(座長:氏家齊一郎 当時(社)日本民間放送連盟会長、顧問:後藤田正晴元内閣官房長官・元副総理)を設置し、同年7月13日には「警察刷新に関する緊急提言」をまとめた。提言は「この刷新会議は、相次ぐ警察不祥事に対する国民の怒りと警察のあるべき姿へ立ち返ってほしいという願いを受けて、(中略)討議を重ねてきた。私たちは、警察がこれほどの国民の批判、不信感を受けるに至ったことを深く憂慮して、その原因はどこにあるのかを討議し、それを防ぐ方策はないかを考えてきた。」で始まっている。
その巻頭言からは警察に対する信頼が大きく揺らいだことへの当時の強い危機感が伝わってくるようである。緊急提言の第7に「警察職員の責任の自覚を」という項立てがあり、「警察職員は『国民の生命、身体及び財産の保護』という職務を改めて胸に刻み、安全を願う切実な期待にこたえていかなければならない」と、きわめて当然のことが強調されていた。
この「職務を改めて胸に刻」んで今回の事件に当たっておれば、こうした大失態を犯すことはなかったのではないか。殺人容疑者が付近に潜んでいる可能性が高い緊急配備のなか「スーツにネクタイ、ニット帽にリュックサック」の姿の男に不審の念を抱かぬ弛緩した意識。今、現在、己の責務は何であるかを肝に銘じておるのであれば、職務質問なり特別な注意を払うに十分な風体であると素人でも考えるのだが、いかがであろうか。その意味において、刑事部長の「ベストを尽くした」「残念で遺憾」という言葉は、警察の責務を胸に刻んでいる人間からは決して発されるはずのない言辞であった。「警察としての責務を忘れた大失態であった」と深い謝罪の念を表すべきであった。「遺憾」とは「期待したようにならず、残念に思う様子」を表す言葉である。茨城県警は170名もの厳戒態勢という形式的な緊急配備に甘んじ、いったい何を期待していたのだろうか。いざという時に「ベストを尽くした」と言い訳できるように小役人的に期待していたのだろうか。
亡くなった方々やご遺族の無念、さらに被害にあわれた方々の恐怖を思うと、警察の事態認識の甘さと事実の重みに対する鈍感さに言いようもない強烈な腹立ちを覚えて仕方がないのである。【了】
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掲題の「残念で遺憾」は、23日に開かれた記者会見で茨城県警の石井孝刑事部長が「こういう結果になったのは残念で遺憾」と発言したもの。さらに同部長は「(張込および警戒は)ベストを尽くしたつもりだ」とも語った。19日に一人の人間が殺害され、電話で「早く捕まえてごらん」と挑発までされたなかでのこの日の無差別殺戮である。「ベストを尽くした」などとよくもしゃあしゃあと言えたものである。
山上高広さん(27歳)が何のいわれもなくその若い命を奪い去られ、2人の方が重体、5人の方が軽傷を負わされたのに、県警幹部のこの事態認識の甘さと事実の重みに対する鈍感さは一体何なのか。
TVインタビューで殺害された山上さんの知人が「警察は170人態勢で警戒していたというがこんな事態となった。警察は一体、何のためにあるのか」といった主旨のことを述べ憤っておられたが、まさに同感である。
警察官の配備は怠りなくやっており「ベストを尽くした」が、しかしその間隙(かんげき)をぬって容疑者が疾風(ハヤテ)のごとく殺りくを行ったので、仕方がなかった。できるだけのことはやったなかでの事件です。落ち度はなかったと考えています。だから非常に「残念で遺憾」だと言っているとしか、県警幹部の発言からは聞き取れぬ。
「警察の責務」を警察法は、第1章総則の第2条において「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする」としっかり定義している。今回の事件を語るのに大上段に警察法の条文まで持ち出し振り回すことに、わたしはある種の哀しみを覚える。こんなことまで持ち出さずとも警察が何たるか、国民はよく知っているはずだからである。しかしこの条文はいま警察官自身がよく熟読玩味し、己の職務・使命をよく理解する必要があると思えばこそ、わざわざここに大仰に引用させてもらったのである。
99年に発覚した神奈川県警の一連の不祥事もみ消し事件以来、ここ10年ほど警察の不祥事は後を絶たず、警察に対する国民の信頼は地に落ちたとも言える。
その信頼回復のため国家公安委員会は2000年3月に「警察刷新会議」(座長:氏家齊一郎 当時(社)日本民間放送連盟会長、顧問:後藤田正晴元内閣官房長官・元副総理)を設置し、同年7月13日には「警察刷新に関する緊急提言」をまとめた。提言は「この刷新会議は、相次ぐ警察不祥事に対する国民の怒りと警察のあるべき姿へ立ち返ってほしいという願いを受けて、(中略)討議を重ねてきた。私たちは、警察がこれほどの国民の批判、不信感を受けるに至ったことを深く憂慮して、その原因はどこにあるのかを討議し、それを防ぐ方策はないかを考えてきた。」で始まっている。
その巻頭言からは警察に対する信頼が大きく揺らいだことへの当時の強い危機感が伝わってくるようである。緊急提言の第7に「警察職員の責任の自覚を」という項立てがあり、「警察職員は『国民の生命、身体及び財産の保護』という職務を改めて胸に刻み、安全を願う切実な期待にこたえていかなければならない」と、きわめて当然のことが強調されていた。
この「職務を改めて胸に刻」んで今回の事件に当たっておれば、こうした大失態を犯すことはなかったのではないか。殺人容疑者が付近に潜んでいる可能性が高い緊急配備のなか「スーツにネクタイ、ニット帽にリュックサック」の姿の男に不審の念を抱かぬ弛緩した意識。今、現在、己の責務は何であるかを肝に銘じておるのであれば、職務質問なり特別な注意を払うに十分な風体であると素人でも考えるのだが、いかがであろうか。その意味において、刑事部長の「ベストを尽くした」「残念で遺憾」という言葉は、警察の責務を胸に刻んでいる人間からは決して発されるはずのない言辞であった。「警察としての責務を忘れた大失態であった」と深い謝罪の念を表すべきであった。「遺憾」とは「期待したようにならず、残念に思う様子」を表す言葉である。茨城県警は170名もの厳戒態勢という形式的な緊急配備に甘んじ、いったい何を期待していたのだろうか。いざという時に「ベストを尽くした」と言い訳できるように小役人的に期待していたのだろうか。
亡くなった方々やご遺族の無念、さらに被害にあわれた方々の恐怖を思うと、警察の事態認識の甘さと事実の重みに対する鈍感さに言いようもない強烈な腹立ちを覚えて仕方がないのである。【了】
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