不自然な「ビデ倫」摘発 カギを握るは警察の天下り

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 3月1日、アダルトビデオやDVDの自主審査機関「日本ビデオ倫理協会」(ビデ倫)の審査部門責任者らがわいせつ図画頒布幇助容疑で、同時に、AVメーカーの役員ら5人も同頒布容疑で警視庁に逮捕された。大手メディアの報道は、この事件を「インターネットの普及やAVソフト販売競争が激化する中で、モザイクを薄くする必要に迫られたメーカーが、ビデ倫を抱き込み、過激な作品を流布させた」という文脈で解説。

 だが、今回摘発の対象となった作品は、逮捕されたメーカー代表自身が、逮捕以前に「ほかに摘発するものは、いくらでもあるでしょう?」と語っている通り、昨今の市場動向からすると、決して度を超したものではないという見方が業界内では強い。

「過激化する一方のAV業界全体に対する見せしめ的な逮捕であったことは、間違いないでしょう。ただ、警察の思惑は、それだけではないと思いますよ」

 そう語るのは、今回逮捕されたメーカーA社の関係者。この関係者によると、容疑のかかったビデ倫と各メーカーに警視庁が強制捜索に入ったのは、昨年8月。その後、ビデ倫関係者やメーカー社員は、執拗に取り調べを受け続けてきた。A社に至っては、この間、主要な制作機材を警察に押収されていたため、まったく業務ができず、倒産寸前に追い込まれていたそうだ。

「逮捕もされず、業務もできず、蛇の生殺し状態だった。警察からは、『年末には身柄を持っていく』と言われていたのですが、結局、逮捕は3月。容疑固めに時間がかかった、無理のある逮捕だったんです」(前出・関係者)

 そんな不自然とも取れる逮捕劇の裏では、こんな興味深い情報が流れていた。あるメーカー社員が証言する。

「昨年の初夏、ビデ倫はA社に対して、今回摘発された作品を自主回収するよう促していたんです。そのきっかけは、ほかのAV自主審査機関からビデ倫に『修正が甘すぎるのでは?』というクレームが入ったことらしい。A社はそれを拒否し続けていたところ、8月の強制捜索が行われたんです」

 ビデ倫は、メーカー90社以上が加入する審査機関の最大手だが、最近は、ほかの審査機関の影響力が拡大し、加入社を奪い合うような状況も生まれていたという。そんな各機関がばらばらの審査基準を持つ中、「ビデ倫の審査はザル」と業界内では評判で、厳密な修正作業を要求している他機関からしてみれば、不満が募っていた面もあったようだ。

「彼らが警察に働きかけたという見方があるんです。そもそも、AVの審査機関の多くには、警察OBが天下って、当局との調整役をやっています。警察OBがいる審査機関がOKを出したものは、お上のお墨付きと一緒、警察も摘発しないという不文律があるから、警察OBの受け入れは必須。それはビデ倫も一緒だったのですが、実は強制捜索が入る数カ月前に、ビデ倫にいた警察OBが退任しているんです。つまり、警察OBがいなくなった隙に当局が動いたわけですから、ここに意図的なものを感じないわけにはいきません」(前出・メーカー社員)

 ビデ倫でいえば、長らく事務局長という肩書が、警察の天下りポストとされてきた。このポストは、一説には週2〜3日出社し、1日5時間未満の労働で、月額60万円以上の報酬がもらえるといわれている。ところが、昨年夏からは、このポストから警察OBが外れているというのだ。

「警察OBが外れた原因は、ビデ倫が同ポストの待遇を下方修正しようとして警察が反発したとか、競合する審査機関が警察OBを厚遇で多数迎え入れ、ビデ倫に誰も行かなくなったなど諸説あります。いずれにせよ、この空白のポストと今回の逮捕劇は無関係ではないと思いますよ」(同)