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【書評】『はじめまして三倉茉奈です。はじめまして三倉佳奈です。』 三倉茉奈・三倉佳奈著
2008年03月22日15時14分
創成社 08年2月23日初版発行 本体1800円+税 写真は『〜茉奈です。』表紙 (撮影;佐々木隆、3月11日) 写真一覧(4)
現在在学中も含め、芸能人が「大学に通った」例のほんの一部である。あくまで在学中(既に)「芸能活動を行っていた」人のみを挙げており、卒業・中退後に芸能人になった例や、スポーツ選手・作家などは含めていない。
その中で、以下の条件を付けると、該当者はかなり限定されてしまう。大学入学前から全国区でテレビに出ていた売れっ子で、高校を卒業し(大検や高卒認定の受験が必要なく)、浪人などせず現役(18歳)で入学し、夜学などではなく昼間の授業を受講し、中退せず、きちんと4年間で、つまり「一般人の通常のパターンで」無事卒業……。
断っておくが、夜学や大検を下に見るつもりは全くない。芸能人でも一般人でもそれぞれ事情があり、やむを得ない理由での留年・中退なども多々あるだろう。不肖、「一般人」佐々木とて、かなりイレギュラーな学歴の持ち主である。自分などを引き合いに出すのは恐縮だが、だからこそ、一般人と比べてあらゆる意味で多忙、そして何かと気苦労も多いであろう芸能人が、「普通に」大学に通い、そして卒業「できる」ことに、心から敬意を表したいのである。櫻井翔(慶應義塾大)、倉木麻衣(立命館大)、ベッキー(亜細亜大)……。
そして、三倉茉奈・三倉佳奈。言わずと知れた日本一有名な双子タレントは、2人ともこの春、関西学院大学社会学部メディア専攻を「ストレートで」卒業する。22歳の誕生日である2月23日(土)に発売されたフォトエッセイ『はじめまして三倉茉奈です。はじめまして三倉佳奈です。』には、芸能活動をしながら大学に通う彼女らの「気苦労」というよりは、「特権」そして「良き思い出」が、少なからず綴られている。
「大学1年生の頃、楽しかった。大学に入学して、新しい友達がいっぱいできた。キャンパスを歩けば、声をかけられる顔の広さが自慢だった。毎日の新しい出会いにわくわくした」(佳奈、中略有り)
「大学時代、私には休む時間なんてなかった。仕事をしているか、大学の授業に行っているか、友達と遊ぶか。昼から夜まで完璧なスケジュールを組み立てる」(佳奈)
「(大学4年夏の)ゼミ合宿、短い時間だったけど楽しかった。というより、みんなとひと晩一緒に過ごせたことが、嬉しかった。夜なんて何をするわけでもないんだけど、ぼおっとして、外に出てみたら、星が凄く綺麗で。この日のことは忘れないだろうな。」(茉奈、中略有り)
仕事は東京や東海地方(「遊びに行こっ!」など)が多く、大学は兵庫にある。新幹線や飛行機に4年間で何百回も何千回も(?)乗ったはずで、その時間や手間暇だけを考えても頭が下がる。よく、「大学生は遊べて(自由な時間が多くて)羨ましい」などと言われがちだが、それはあくまで一般人の話。学業と芸能活動、両立がいかに難しいか、冒頭22名の大半が留年・中退していることからも伺える。
決して、彼らの学習能力が低いわけでも時間の使い方が下手なわけでもない。恐らく一般人が理解できるレベルを超えた苦難を「達成」できたマナカナらが格段に優秀なのである。この点、世間的にもっと「評価」されて然るべきだろう。
バラエティやCMにあれだけ出ていたのに、収録時間・日数も少なくないはずなのに、いったい、いつ授業に出ていたのだろう。どうやって勉強していたんだろう、テスト期間は仕事を休んでいたのだろうか、卒業論文には何を、どのように書いたんだろう。2人は同じゼミだったとのことだが、その他の授業も全て一緒に受けていたのだろうか。周りの学生達の「反応」は具体的に如何ばかりだったのだろう、好奇の目に晒されたりしなかったのだろうか。校舎内を歩いていると、周りに大量に人が集まり、勝手にケータイで写真を撮られまくる(by明治大・山下)なんてことはマナカナはなかったのだろうか? 考えれば考えるほど、2人とも本当に凄いと思う。
余談だが、佳奈の思い出として「大学1回生の時の話。一つ年上のサークルの先輩に『今度、お茶しようよ』って言われてドキッとした」とさりげなく(?)書かれていたのには少々驚かされた。彼女らがサークルに入っていたこと、そして、大学生とはいえ既にキャリア10年近い「芸能人」を気軽にナンパ(?)する、恐らくは一般人の「先輩」関学大生がいたということに。この「先輩」の人物像や性別、何のサークルなのか、結局佳奈が(茉奈も)一緒に「お茶に行った」のかどうか、いずれも本書では明らかにされていない。色んな意味で興味深いところだ。
本書はフォトエッセイということで、本人達撮影の写真、エッセイ、ともに充実している。「遊びに行こっ!」などの収録で主に各地を訪れた際の風景写真、珍しい?スチール写真、先述のゼミ合宿の写真などが満載。まったくの偶然だが、少なくとも佳奈の使っているカメラは、佐々木所有の物と全く同じメーカー・型・色ということが判明し、ある種の(一方的な)親近感を覚えた。
三倉姉妹を語る上で最大のキーワードとなるのはもちろん「双子」。性格、言動はもちろん、服装含め外見があまりに酷似しているため、ショーウィンドウに映った姿などを本人たちが勘違いすることさえあるという。その双子キャラを生かし、9歳でのデビュー以降、22歳となった現在に至るまでほとんどの芸能活動をコンビで行っている。
本書『はじめまして〜です』はある意味、それとは一線を画した「ソロ活動」ともいえる。もちろん解散(姉妹で?)の布石とか、実は2人は仲が悪いとかそういう意味ではない。双子としてだけではない、あくまで個々の「大学生兼任芸能人」としての三倉茉奈・三倉佳奈を、ファンに、そして世間に知って欲しいという2人の思いが強く込められている。
「フォトエッセイ用の写真撮影。今回は、茉奈と佳奈は別々で撮影。撮影時間がずらしてあって、ほとんど顔も合わせないから、お互いの衣装もメイクも、撮影場所もわからない。エッセイに関しても、お互い全部秘密。だから佳奈の文章は1回も見たことない。こんなに本格的に分けたのは初めて。あの子、何書いてるんだろ?
写真撮影で感じたことはいっぱい。大きく違うのは、佳奈がいないこと。撮影していても横に佳奈はいない。撮影していると、自分は『マナカナ』としていつも存在してたんだってことに気付く。無意識の間にカナと比べちゃうから、いつも劣等感みたいなものを持ってた。
でも、今回は比べる必要なんてなくて、自分が自分とだけ向き合えた。それに、撮影前に、今日は『マナカナ』のマナではなく1人の『三倉茉奈』だから。って言ってくださって、2分の1じゃない自分を感じられたことが凄く嬉しい」 (3段落茉奈、中略有り)
見かけ上は1冊の普通の書籍だが、実は背表紙から見て右側から茉奈の『〜茉奈です。』、左側から佳奈の『〜佳奈です。』と、事実上2冊に分担されている。奥付も別個にされており、それぞれ「最後のページ」(本の全体でいう真ん中ページ)には2人の写真がちょうど「向き合う」形で、お互いへの手紙が掲載されている。別々とはいっても決して「バラバラ」ではない、常に「一緒の2人」なのである。
長くても2ページ以内に収まる、ごく短いエッセイが多数収録されている。テーマは様々だ。先述の大学生活のほか、芸能人としての仕事・ファッション・(幼少時の)思い出・趣味思考・空想・将来の夢……。双子だけに、テーマの選び方も文章センスもよく似ているが、やはり、「別人」だけに微妙に違う。
この「差」は本書を「読み比べた」人でないとわからない、字面で説明するのは困難なことではあるが、逆に言えば、一度でもじっくりと読めばきっと気がつくことである。本人達が「言われたことがある」という表現を借りれば、「茉奈が演歌、佳奈がHip Hop」、佐々木なりの解釈では、本当に玄妙な相違だが「茉奈が藍色、佳奈が群青色」とでもなろうか。どちらが上でも下でもない、2人いてこそ、2種類あってこそ、「2冊」読み終えてこそ、本書の真の魅力が引き出され、2人の所懐が理解可能となるのである。
2人の撮影日などは別ながら「場所」だけは同じ写真が何枚かある。その辺りがある意味、本書テーマの象徴なのだろう。そして、芸能人でありながら2人が大学に進んだ本当の理由もエッセイに書かれているが、さらに、佳奈は「卒業」というタイトルで以下のように書いている。
「卒業と言えば、甘えてる自分に卒業。大学を出たら、もう仕事一本だけになる。今まで学業を理由に逃げてきたことは、全部受け止めなきゃいけない。仕事への甘え。自分自身への甘え。甘えを卒業して、女優としてこの世界でやっていく、自覚と責任を持つんだ。卒業式は、早く済ませようっと。」
野球のバッテリーでもテニスのダブルスでも、漫才コンビでも、理想の夫婦でも運命の恋人でもない。文字通り生まれながらの特別な「2人組」。その単純な二元論に留まらない、双子の提携による新たな学説の研究発表が開講されようとしている。大学という名の踏み切り板から、跳び箱の段をまた1つ上げて。【了】
■関連情報
livedoor BOOKS 『はじめまして三倉茉奈です。はじめまして三倉佳奈です。』
マナカナ公式ホームページ
創成社 『はじめまして三倉茉奈です。はじめまして三倉佳奈です。』公式ブログ
関西学院大学HP
同・「マナカナ卒業・トーク&ライブ」開催の案内 ※イベントは既に終了
マナカナ、今後はソロ活動も視野 恋愛は「そういうお年頃」 (オリコン) - 2008年2月24日(日)6時30分
マナカナが関学大を卒業 学食が名残惜しい!? (産経新聞) - 18日(火)16時16分
佐々木隆公式ブログ 「ストロボは人の弱さを笑いながら照らす」
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パブリック・ジャーナリスト 佐々木 隆【 愛知県 】
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