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【眼光紙背】マックのプレミアムローストコーヒーの巧さ

【眼光紙背】マックのプレミアムローストコーヒーの巧さ
保田隆明氏

保田隆明の眼光紙背:第23回

少し前の話になるが、マクドナルドがコーヒーをリニューアルし、プレミアムローストコーヒーとして販売している。味もカップもグレードアップしたが、価格は100円に据え置き。いまどき、自動販売機やコンビニで缶コーヒーを買っても100円以上する中で、100円で買える煎れたてコーヒーというのはコーヒー好きにとっては魅力的だろう。

コーヒーの味の違いがわかる中高生、大学生があまり多く存在するとは思えず、おのずと対象顧客となるのは30代、40代の大人である。この層は従来マクドナルドがあまり取り込めていない層であり、わざわざハンバーガーではない商品をリニューアルしたのは、まさにこの新顧客層の取り込みを狙ったものである。

マクドナルドは昨年から一部店舗を従来のハンバーガーショップからカフェに転換し、「マックカフェ」の展開を行っている。その狙いはまさに、サラリーマンや家族層など新顧客層の取り込みにある。ただ、マックカフェの業績は当初予定を下回っている。マクドナルドが展開しているカフェという以外に、中身の面において今のところ他のカフェとあまり大きな差別化ができていないことが不振の一番の要因である。

マックカフェは、マクドナルドにとってはカフェ業という新規事業でありながら、サラリーマンや主婦層という新規顧客を取りに行くものである。新規事業と新規顧客層開拓を同時に行うのは簡単ではない。通常は、どちらかだけをまずは行うのが定石である。

その点、今回のプレミアムローストコーヒーは、従来のマクドナルドの店頭で販売されているものであり新規事業ではない。あくまで従来の商品のリニューアルという形で新規顧客層を開拓している。マックカフェよりも当初の投資額が小さく、ローリスクである。新規顧客層を呼び込むことができれば、他のマクドナルドの商品の売り上げにもつながる可能性も高い。

モノが売れるには、人々の行動パターンに定着することが重要であるが、コーヒーのように中毒性の高い商品の場合は、一度顧客をつかむとリピーターとして定着する率が高いので、むしろ主力商品であるハンバーガーよりも収益に対する寄与度は強力となる。サラリーマンが通勤途中、ランチや客先とのミーティングからの帰り道に「ちょっとスターバックス寄っていく」ではなく、「ちょっとマックに寄っていく」ことが習慣化しかねないのである。

もともとマクドナルドのコーヒーは、ある調査会社の調査ではスターバックスのコーヒーより美味しいと感じる人が多いぐらい、隠れた人気商品ではあった。プレミアムローストコーヒーによる集客が成功すれば、マクドナルドの店舗売上にプラスであるのみならず、業績不振のマックカフェの拡大戦略に歯止めをかけることもできる。ここ最近毎月客数、売上高の両方でプラスのマクドナルドであるが、ハンバーガーではない商品でも集客が可能となれば、しばらくはこの好調ぶりが続く可能性が高いと思われる。

政府は先日、景気見通しを「踊り場」とし、下方修正を行ったが、こういう外部環境も1杯300円のコーヒーから1杯100円のコーヒーへ顧客を後押しすることになろう。


プロフィール:
保田隆明(ほうだ・たかあき)…1974年生まれ。投資銀行などの勤務を経て、ワクワク経済研究所代表。金融、ビジネストレンドについて、書籍・テレビ・ラジオ・ブログを通じてわかりやすく解説している。公式サイト:http://wkwk.tv/
近著:「デキる人は皆やっている 一流のキャリアメイク術」、「投資銀行時代、ニッポン企業の何が変わったのか?


眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧

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