杉山茂樹が書く、布陣の教科書
2008年03月18日22時05分 / 提供:FOOTBALL WEEKLY
年の半分を欧州行脚にあて、かつ日本代表を中心に国内サッカーを追いかけるその行動力はもちろんのこと、もっともそのエネルギーを感じるのはサッカー談義を始めたときだ。
ひとたび顔を合わせれば、サッカーに関する考えを、それこそ大滝のような勢いで語り出す。記者室はそうしたサッカー論者であふれかえっているが、中でも杉山氏のエネルギーは際立つ。
本書まえがきの中にも、「口では負けたくない」としっかり記してある。筋金入りの論客である。
本書は、そんな杉山氏の論拠、と言ってもいい。欧州と日本を行き来し、多くの名監督にインタビューしてきた杉山氏が辿りついた最先端の布陣論。欧州クラブシーンの変遷を横糸に、各布陣のメリット、デメリットが、過去の実例とフォーメーション図でわかりやすく解説され、圧倒的な説得力で迫ってくる。口で負けないだけの根拠が詰まっているのだ。
タイトルはずばり「4−2−3−1」。数多ある布陣の中で、この並びを選択したところにも、杉山氏のメッセージが窺える。
その説得力の背景には、「サイド」というキーワードがある。このエリアをいかにうまく使うかが、サッカーの良し悪し、結果に強い影響を及ぼす。欧州の名将たちの言葉でその重要性が語られ、また、過去の試合とその分析から、サイドがいかに大事かということが浮き彫りになってくる。特に、弱者が強者を倒す“ジャイアントキリング”の裏には、必ずこの鍵があると展開している。
そこで、世界の中で弱者の立場である日本が、世界を驚かすために、それらのジャイアントキリングから何を学ぶべきか。これは本書の最深部にあるテーマであると同時に、日本サッカーを憂う杉山氏の痛切な願いでもある。
今季開幕したJリーグでは、昨季アジアチャンピオンの浦和が連敗スタートを喫し、オジェック監督が解任された。引導を渡したのは、「モダンなサッカーを目指す」というストイコヴィッチ監督に率いられた名古屋だ。4−4−2の布陣で前からプレスをかけ、サイドを徹底的に使った攻撃サッカーで浦和を切り裂いた。
浦和敗戦の理由は様々語られているが、お得意の3−4−1−2が陥った構造上の問題については、あまり語られていない。杉山氏が欧州から持ち帰ったセオリーに照らし合わせてみると、その問題点は一目瞭然だ。
はて、そうなるとこの試合が、日本サッカーにおける戦術のターニングポイントになるのかもしれない。オジェックどうこうの問題ではないのか。いや、そんなことは気にもとめずに、ポンテなり強力な個がいれば、布陣なんて関係なくなるか……。
と、本書を読んで一人議論が止まらなくなった。
サッカーをもっとおもしろく観るために、もっと理解するために、そして、弱い日本が世界を驚かすために、おすすめの一冊だ。(Football Weekly編集部:田中亮平)
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