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校長が教え子を脅迫した事件の報道・・・ひとりの人間を葬った報道に予断はなかったか

2008年03月21日08時31分 / 提供:PJ

pj
教え子だった女性に交際を強要する脅迫のメールを送った疑いで、公立高校の校長が逮捕された事件がありました。逮捕直後の3月9日のアサヒコムには「女性が在学中だった02年1月にみだらな行為をして以降、女性が嫌がっているにもかかわらず、計5年間にわたり関係を迫ったとされる」「校長室のパソコンからメールを出した」「メールの数は数十回に及んだ」などと、悪質な脅迫者像を伝えている印象があります。

 勤務中に私用メールを出すことはわざわざ非難するほどのことでもないと思うのですが、これを書いた記者はきっと聖人のような清廉潔白な人物なので許せないのでしょう。

 容疑者が脅迫の容疑を否定している状況では、警察発表は女性側の言い分が中心になっていると考えられます。報道は警察発表の中から取捨選択し、まとめられたものでしょう。警察以外の取材からは教育熱心な評判のよい先生という矛盾する事実だけが報道されています。

 容疑者側の言い分は犯意を否定したということしか載っていません。容疑者は悪質な犯罪者であるという予断に基づいて記事が書かれたということはないでしょうか。事実は起訴、裁判を経て明らかになるでしょうが、裁判で有罪が決まるまでは犯罪者でなく容疑をかけられただけの状態です。

 この種の事件では、有罪となって刑事罰を受ける前に、社会的な制裁を受けるケースが多く見られ、被疑者にとってはその方がより大きい痛手になりがちです。逮捕段階での報道によって被疑者は回復不能な罰を受けてしまいます。メディアがろくに調べもせず、裁判より先に容疑者を裁いてしまうのです。

 この2月の沖縄の米兵による暴行事件では米兵が性的暴行を一貫して否定しているにもかかわらず、それを前提とした記事が全国を駆け巡りましたが、結局、告訴取り下げになり、真偽は不明のままということになりました。しかし、容疑者の主張どおり「体にさわっただけ」であれば彼は大変理不尽な扱いを受けたことになります。もし日本人ならば社会的に致命傷を受けるでしょう。

 そして昭和50年5月、ある銀行の支店長が2歳になる知的発達の遅れた子の幼女を餓死させた、として逮捕され、9カ月後、有罪判決を受けたあと彼は自宅へ戻ることなく電車に飛び込んで自殺した事件を思い出します。後に、誤認による朝日の悪意ある報道が彼を死に追いやったとする朝日内部の調査報告が作られました(参照)。この報告を知らない人にとって、彼は死後も鬼のような父親のままです。

 「新聞記者 疋田桂一郎とその仕事」には次のように記述があります。

 「情報の味付けによって記事の扱いが大きくなれば、それが広報担当者ないしは警察幹部の点数になるのである。東京の各警察署は警察記事の切り抜きにはげみ、扱い件数の多さと扱い段数の大きさを競っている」

 警察の発表に、既に事件のストーリーが作られていることが多く、またメディアは記事を短くまとめるときにわかりやすいストーリーが必要になります。したがってストーリーに矛盾する事実は省略されがちになります。わかりやすいストーリーで世間を驚かしたいという動機は警察とメディアの双方が持っているわけです。

 問いたいのは、逮捕直後、双方の言い分が食い違っている段階で、警察発表に基づく一方の言い分によりかかっただけの安易な報道を大々的にしてよいのかということです。もし間違っていれば、容疑者に取り返しのつかない被害を与える危険を冒してまで報道することに果たして意義があるのでしょうか。せめて確証が得られるまでは抑制した報道にすべきではないでしょうか。【了】

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 岡田 克敏

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