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コント番組を殺した視聴者の“声”と局の“自主規制”

2008年03月18日09時00分 / 提供:日刊サイゾー

日刊サイゾー
コント番組を殺した視聴者の“声”と局の“自主規制”
 近年、『8時だョ!全員集合』(TBS/69〜85年)や『オレたちひょうきん族』(フジテレビ/81〜89年)などに代表される、バラエティ番組の本流ともいえるコントバラエティが、急激にその数を減らしている。現在、地上波で全国放送されているのは、プライムタイムの(しかも芸人でなくアイドルメイン)『SMAP×SMAP』(フジテレビ)だけで、そのほか深夜枠の『コンバット』(同)や『サラリーマンNEO』(NHK)など、数えるほどになってしまった。

 かつては隆盛を誇ったコントバラエティが、ここまで数を減らしてしまったのは一体なぜなのだろうか? その要因のひとつとして、まず注目しなければならないのが、局による番組ガイドラインの強化。つまり、自主規制による笑いの表現の収縮である。

「もちろん番組への苦情、クレームなんかは昔からありました。特にテレビ業界に“ヤラセの笑い”を知らしめた『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ/85〜96年)や、裸の若い女性が出てきたりする『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』(TBS/86〜92年)なんかは、放送すれば必ず苦情が来ていたと聞きます。でも、当時はそんな視聴者の意見に、制作者側も過剰反応を示していませんでした」(局関係者)

 それでは、一体いつから局の自主規制が厳しくなったのだろうか?

「96年4月に、『子どものいじめを助長しかねない』との理由から、日本PTA全国協議会が『ダウンタウンのごっつええ感じ』に内容改善を求め抗議したんです。世間ではいじめ問題が騒がれていた時期だったので、この一件は結構大きく報道されました。これだけなら大丈夫だったんでしょうけど、翌年6月に酒鬼薔薇聖斗が逮捕されてから、青少年へのテレビの影響というものが本格的に議論されるようになったんです」(同)

 そして、決定的だったのが98年1月に黒磯で起こった中学生徒が女性教諭を刺殺した事件だったと前出関係者は言う。刺殺した少年が、ドラマ『ギフト』(フジテレビ)で、主人公がバタフライナイフを使っているシーンに憧れたと供述したことが報道されると、当時同ドラマを再放送中だったフジ系列の東海テレビは放送を即中止。マスコミは「少年がドラマの影響で人を殺した」などと報道を行った。この事件を境に、各局は表現の自主規制を強めていったのだ。

 また、企業コンプライアンスの大切さが叫ばれるようになったという社会背景も関係している。消費者の声に過敏な反応を見せるスポンサーや広告代理店が、番組制作に対して大きな影響力を発揮しているという現実があるからだ。

「コントバラエティが減っているのには、メディアの多様化や制作費の問題も当然あります。テレビ広告費は業界全体でこの2年間減少していますが、反対にインターネット広告費は2年連続で増加しています。各局は映画やイベント、不動産などのサイドビジネスで収入を確保しようとしていますが、局側としては、コスト削減のため、なんとか番組制作費も抑えたい。しかし、コントバラエティには時間も労力も必要なんです。つまりお金がかかる。たとえば簡単なロケ番組やクイズ番組などは2本、3本撮りなどにすることで制作費を抑えることができる。セットを組んでやるようなしっかりしたコントバラエティは、同じ時間とお金をかけても、1本撮影できればいいほうでしょう」(放送評論家・金沢誠氏)

 その結果、タレントさえ集めれば安価で作れる、クイズや雑学、グルメなどを絡めたトークバラエティ番組が量産されているというわけだ。そういった番組は、老人や子どもを交えて家族で安心して見ることができるが、もっと濃い笑いを見て育ち、テレビ業界に入ってきた若手ディレクターや放送作家にとっては、なんともわびしい状況だ。取材を進めると、制作側には、今のテレビをやりづらく感じている人が決して少なくないことがわかる。現場からはこんな声も聞こえてくる。

「確かに今のテレビバラエティは、作る側にとっては厳しいのが現状です。でも、たとえば『めちゃイケ』(フジ)みたいな番組は、ギリギリのところで頑張っていると思うんです。だからこそ、『めちゃイケ』を真似する番組も多い。上手なテロップの挿入の仕方だなあ、とか思ったら、その放送の1カ月後にしれっとほかの番組が同じテロップの入れ方を真似ている。『あの番組が流行っているからうちも真似しよう』なんてやると、パクるほうもパクられる番組も、どちらも飽きられて共倒れしちゃうのに……」(某局プロデューサー)

 インターネットや携帯電話など他メディアに視聴者を奪われ、かつての勢いを失ったテレビ界では、スポンサー資金確保のために、ますます視聴率重視傾向が強くなっている。そして、それがまた負のスパイラルを巻き起こすのだという。

「かつてのコント番組にも、そういう側面はあったんじゃないですか? 劣化したパクリ番組が氾濫して飽和状態になって、世間は『コント番組なんてもうつまらない』という風潮になった。それで、最後には本当に面白かった番組までなくなってしまう。これを“はやりすたりだから仕方がない”で片付けちゃったら、『めちゃイケ』みたいに本当に面白いバラエティを追求しているスタッフはかわいそうです」(同)

 ダウンタウンの松本人志は『ごっつええ感じ』の終了にともない「本当に面白いことはもうテレビではできない」と嘆き、今でもラジオ番組『放送室』(JFN)にて、放送作家の高須光聖とともにたびたびテレビの自主規制について批判を繰り広げている。思いきり金と時間をかけた贅沢なコントバラエティが復活し、再びお茶の間を賑わす日は、もう来ないのだろうか。
(テルイコウスケ/「サイゾー」3月号より)

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