サッカー界に生息する人種はなかなか本音を語らないものだ。クラブの制約もあるし、イメージ保身も考えなくてはならない。そもそも正直であることが善とは見なされない。
 ならば、とイタリアの人気作家ベッペ・セヴェルニーニがスポーツ誌『SPORT WEEK』上で始めた企画がある。週のトピックとなる発言をピックアップして、“おそらく本音ではこう言いたかったのだろう”とシニカルな解釈を加えた超訳がそれである。通が思わずニヤリとさせられるニュアンスが満載だ。
 先週の犠牲者は、ミランの次期キャプテンと目されるMFアンブロジーニだった。少々長いが、イタリアン・ジョークの一つとして楽しんでいただきたい。

【3月10日、アンブロジーニの発言】

「シェフチェンコのミラン復帰? そうなれば皆、大歓迎さ。彼は大事な友人だし、再びトップレベルのストライカーに戻るために正しいモチベーションを持っていると信じている」

【おそらく本当に言いたかったこと:作家による超訳】

『あいつが帰ってきたら? 皆でこう言って歓迎してやるよ。“おやおや、これはあの老いぼれシェバさん、何でまたこんなところにいんの? ロンドンで、てめえんとこのガキはちっとは英語うまくなったのかい?”ってな!

 もうやつは、かつてのシェフチェンコじゃない。俺にはわかる。最近よく泣きごと言ってるだろ。“ロンドンは楽しくないよ。誰も僕のこと好きじゃないし、誰も僕をプレーさせてくれない。ドログバが僕をいじめるんだ。ミラノが恋しいよ……”とか。年取ると涙もろくなるって言うしな。ロナウドと同じだ。

 俺は思うんだが、外国じゃサッカー選手ってのはプロフェッショナルだ。あるがままに判断されて、それ以上でもそれ以下でもない。それがミラノだと、選手は半分神様扱いされるからな。

 あ、ベルルスコーニ会長、おはようございます! ちがうんです、僕が今言っていたのは、ほんの半分だけ、という意味です!(ミランにおいて)誰が神様かってことは、選手全員よくわかってます! ガリアーニ副会長だって、会長のことを毎朝拝んでます。
……ふぅ、あぶなかったぜ。とにかくだ、シェバ、言っておく。もし“ベルルスコーニ会長”が、おまえに帰ってこい、って電話するのなら俺たちから何も言うことはない。だがもし、おまえに電話をするのが“イタリア共和国首相ベルルスコーニ”なら、発言に気をつけろ。むしろ何も言わない方が身のためだ。(※イタリアでは4月上旬に国政総選挙が予定されており、元首相のベルルスコーニ会長は政権奪回に奔走中)

 ま、帰ってきたら2、3ゴールくらいは決めてくれるだろ? 何つっても夏のキャンプが今から楽しみだな〜。俺たちベテランだけで目一杯楽しもうぜ? パトとカカーら若モンは携帯ゲームで遊ぶだろうから放っておけ。おまえ、俺、ファヴァッリ、エメルソン、ロナウド、ブロッキ、ザンブロッタ、ピルロ、セードルフ、カラチ。俺たちでたっぷりトランプゲームして遊ぼうぜ。え、サポーターはチームの“大幅刷新”を望んでる? 問題ない。トランプのカードは新品に変えるから。ビンゴゲームも楽しいよなあ!(※トランプもビンゴも年寄りの暇つぶしと見なされている)
 あ、そういえば、アンチェロッティの後釜で(シェフチェンコを冷遇した)モウリーニョが来るんだってな? お〜い、シェバ? 冗談だよ、泣くなよ〜』

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