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新作映画レビュー/オシャレなポスターに惹かれた方は要注意
2008年03月22日11時30分 / 提供:超映画批評
マイ・ブルーベリー・ナイツ/30点
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』を見たがる人は、ウォン・カーウァイ監督の信奉者かノラ・ジョーンズのファン、それよりはるかに少数だがジュード・ロウマニア以外にいるはずがないと私は思っていた。しかし最近、周辺のおしゃれな女子数名が立て続けに見たいというので聞いたところ、揃って「ポスターに一目ぼれした」という。CDのジャケット買い、小説の表紙買いというのはよく聞くが、映画にもそういうものがあるらしい。
ニューヨークの古いデリの若きオーナー、ジェレミー(ジュード・ロウ)は、お客のエリザベス(ノラ・ジョーンズ)から「別れた彼氏がきたら渡して!」と、不要になった合鍵を預かる。そんな頼みをしょっちゅう聞いていたジェレミーは、彼女ともすぐに親しくなる。毎夜遅くやってきて、売れ残りのブルーベリーパイを愛しげに食べる彼女に好意を抱くジェレミーだったが、あるときエリザベスは突然NYを飛び出し、一人旅に出てしまう。
そこから先、アメリカを縦断するエリザベスとNYのジェレミーの物理的距離は離れる一方だ。ただそのまま疎遠になるわけでは無く、エリザベスはちょくちょく彼に手紙で近況&心情報告をする。
だがこれも曲者で、手紙は書くも返信先が不明なのでジェレミーは返事を届けられない。女にとっては失恋後の手ごろな精神的リハビリかもしれないが、男はただ食べられ消えてゆくブルーベリーパイとは違う。届かぬ返事にこめるジェレミーの思いは日に日に強まっていく。
その結果、物理的距離は離れながらも二人の心理的距離は逆に縮まっていく。普通は互いの距離を頻繁なコミュニケーションによって埋めるのに、この映画のカップルはまったく逆の方法で成し遂げる。恋のせつなさを描く名手ウォン・カーウァイ監督は、かように画期的な恋愛ドラマ作りに成功した。ただ、それがどうしたと言われれば返す言葉も無い。
そもそもこの監督の映画は、物語を楽しむ類のものではない。初のハリウッド&英語作品である上、毎度のスター起用主義のせいで誤解されがちだが、ウォン・カーウァイはきわめて個性的な映画作家。
これをデートムービーに使おうなどとは、間違っても考えないほうがよい。万が一初デートで彼女がこれを選んできたら、相手の男性は不運である。なにしろ最後まで目を覚まし続けねばならぬ試練に耐えるハメになるのだから。そしてその難関を達成しても、きっと何のご褒美も出ない。
ウォン・カーウァイ映画は、観客に作品へ擦り寄ることを要求するタイプだから、監督の意図を何割かでも感じ取り、共感する形で楽しむのが基本。つまり、正しい解釈探しが好きな人に向く。
だが、そんなものには興味を持たず、自分の好きに感じ取りたい人も世の中にはいる。そして、そのどちらが正しい映画の見方と断じることはできない。
被写界深度がやたらと浅い前ボケ画面は、前者にとっては対象を覗き見るような距離感が絶妙でステキ! アジアンチックでスタイリッシュなさすがの映像美だわ! となるが、後者の人にはうっとおしいだけ。会話する二人を同一フレームに入れず、徹底して一人ずつクローズアップする特徴的な演出もまたしかり、だ。
ともあれ、表紙買いするおつもりの冒頭の女性たちにはご愁傷様というほかない。えっ、忠告してやれと? この世でもっとも説得するのが困難な相手に、どう説明しろとおっしゃるか。
監督:ウォン・カーウァイ
出演:ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、レイチェル・ワイズ、エド・ハリス
公式サイト:http://www.blueberry-movie.com/
2008年3月22日より日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にて公開
©Block 2 PICTURES 2006
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』を見たがる人は、ウォン・カーウァイ監督の信奉者かノラ・ジョーンズのファン、それよりはるかに少数だがジュード・ロウマニア以外にいるはずがないと私は思っていた。しかし最近、周辺のおしゃれな女子数名が立て続けに見たいというので聞いたところ、揃って「ポスターに一目ぼれした」という。CDのジャケット買い、小説の表紙買いというのはよく聞くが、映画にもそういうものがあるらしい。
ニューヨークの古いデリの若きオーナー、ジェレミー(ジュード・ロウ)は、お客のエリザベス(ノラ・ジョーンズ)から「別れた彼氏がきたら渡して!」と、不要になった合鍵を預かる。そんな頼みをしょっちゅう聞いていたジェレミーは、彼女ともすぐに親しくなる。毎夜遅くやってきて、売れ残りのブルーベリーパイを愛しげに食べる彼女に好意を抱くジェレミーだったが、あるときエリザベスは突然NYを飛び出し、一人旅に出てしまう。
そこから先、アメリカを縦断するエリザベスとNYのジェレミーの物理的距離は離れる一方だ。ただそのまま疎遠になるわけでは無く、エリザベスはちょくちょく彼に手紙で近況&心情報告をする。
だがこれも曲者で、手紙は書くも返信先が不明なのでジェレミーは返事を届けられない。女にとっては失恋後の手ごろな精神的リハビリかもしれないが、男はただ食べられ消えてゆくブルーベリーパイとは違う。届かぬ返事にこめるジェレミーの思いは日に日に強まっていく。
その結果、物理的距離は離れながらも二人の心理的距離は逆に縮まっていく。普通は互いの距離を頻繁なコミュニケーションによって埋めるのに、この映画のカップルはまったく逆の方法で成し遂げる。恋のせつなさを描く名手ウォン・カーウァイ監督は、かように画期的な恋愛ドラマ作りに成功した。ただ、それがどうしたと言われれば返す言葉も無い。
そもそもこの監督の映画は、物語を楽しむ類のものではない。初のハリウッド&英語作品である上、毎度のスター起用主義のせいで誤解されがちだが、ウォン・カーウァイはきわめて個性的な映画作家。
これをデートムービーに使おうなどとは、間違っても考えないほうがよい。万が一初デートで彼女がこれを選んできたら、相手の男性は不運である。なにしろ最後まで目を覚まし続けねばならぬ試練に耐えるハメになるのだから。そしてその難関を達成しても、きっと何のご褒美も出ない。
ウォン・カーウァイ映画は、観客に作品へ擦り寄ることを要求するタイプだから、監督の意図を何割かでも感じ取り、共感する形で楽しむのが基本。つまり、正しい解釈探しが好きな人に向く。
だが、そんなものには興味を持たず、自分の好きに感じ取りたい人も世の中にはいる。そして、そのどちらが正しい映画の見方と断じることはできない。
被写界深度がやたらと浅い前ボケ画面は、前者にとっては対象を覗き見るような距離感が絶妙でステキ! アジアンチックでスタイリッシュなさすがの映像美だわ! となるが、後者の人にはうっとおしいだけ。会話する二人を同一フレームに入れず、徹底して一人ずつクローズアップする特徴的な演出もまたしかり、だ。
ともあれ、表紙買いするおつもりの冒頭の女性たちにはご愁傷様というほかない。えっ、忠告してやれと? この世でもっとも説得するのが困難な相手に、どう説明しろとおっしゃるか。
監督:ウォン・カーウァイ
出演:ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、レイチェル・ワイズ、エド・ハリス
公式サイト:http://www.blueberry-movie.com/
2008年3月22日より日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にて公開
©Block 2 PICTURES 2006
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