今週のお役立ち情報
授業時間を増やすと学力が向上するか、の問いに答えられない教育界の無責任度
2008年03月11日07時48分 / 提供:PJ
【PJ 2008年03月11日】−
3月8日、NHKで放映された日本人の学力に関する特別番組では出演者と視聴者に対していくつかの質問が用意されていました。最初の質問は「授業時間や教える内容を増やすことで学力が向上すると思いますか」というものでした。
驚いたのは日本の教育界がいまだに授業時間と学力という基本的な関係に答えを見つけていないという現実です。それが直線比例のような単純な関係でないことは私にもわかります。しかし、授業時間増加に否定的な佐藤学・日本教育学界会長が「学力の高い国は授業時間が少ない傾向がある」と説明したことから、他に有力な根拠がないものと推定できます。
以下、教育に無知な素人の立場からに過ぎませんが、素朴な疑問を述べたいと思います。
学力低下が大きく注目されるようになったきっかけは「分数ができない大学生」という本であったと思います。著者の岡部恒治氏と戸瀬信之は数学者、西村和雄氏は経済学者であって、教育学者ではありません。もうひとつのきっかけはPISAの調査結果ですが、いずれも日本の教育界の外部からもたらされました。
もしこのような外部からの要因がなければ、日本の教育は批判にさらされることなく、ゆとり教育を「悠々」と続けていたかもしれません。さらに授業時間を減らしていた可能性だってあるでしょう。日本の教育界は果たして、教育の現状を調査・評価し、よりよい方向を目指すという機能をもっているでしょうか。
教育界の事情ですが、基礎資料を得るための全国学力調査は1966年に中止され、全面的に再開されたのは学力低下が問題になった2007年とされています。一方、2006年には1966年以来40年ぶりに教員の勤務実態調査の全国調査が決まりました。
学力調査は学校間の過当競争になるという理由で、勤務実態調査は管理強化につながるという理由で、どちらも日教組の反対によって中止されたと言われています。
言うまでもなく教育は理論通りにはいかない分野ですから、その成果を評価しながら試行錯誤を繰り返し、方向を見つけ出すという作業が常に必要です。教育の目標は学力だけではないにしても全国的な学力調査が重要な意味を持つのは自明でしょう。
授業時間と内容を大きく減らす、実験的な「ゆとり教育」を実施する以上、その評価の仕組みは当然必要と考えられます。仕組みがなかったのか、あったけれど機能しなかったのか、知りませんが、外部から学力低下を指摘されるまで表面化しなかったという事実は教育界に当事者能力にかかわる深刻な問題があることを示唆しているように思います。
教育の結果を評価するための調査を否定・軽視してきた人々に教育全体に対する責任感があったのでしょうか。自ら結果を評価するという基本機能の欠如を温存してきた現在の教育システムを見直す必要はないでしょうか。
出席者の1人、杉並区立和田中学校校長の藤原氏の話は興味深いものでした。藤原氏による革新的な試みは一部に反対があるものの、高い評価を受けつつあります。これが教育界ではなく民間出身の校長によって行われたという事実に注目したいと思います。
(初めに掲げた質問の結果は「思う」が54%、「思わない」が46%であったのですが、これは授業時間の増加に81%が賛成という別の世論調査の結果と大きく矛盾していて、調査方法に疑問が残りました)【了】
■関連情報
ゆとり教育の前になぜ実験をしなかったのか
噛みつき評論(記者のHP)
PJニュース.net
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 岡田 克敏【 京都府 】
この記事に関するお問い合わせ / PJ募集
驚いたのは日本の教育界がいまだに授業時間と学力という基本的な関係に答えを見つけていないという現実です。それが直線比例のような単純な関係でないことは私にもわかります。しかし、授業時間増加に否定的な佐藤学・日本教育学界会長が「学力の高い国は授業時間が少ない傾向がある」と説明したことから、他に有力な根拠がないものと推定できます。
以下、教育に無知な素人の立場からに過ぎませんが、素朴な疑問を述べたいと思います。
学力低下が大きく注目されるようになったきっかけは「分数ができない大学生」という本であったと思います。著者の岡部恒治氏と戸瀬信之は数学者、西村和雄氏は経済学者であって、教育学者ではありません。もうひとつのきっかけはPISAの調査結果ですが、いずれも日本の教育界の外部からもたらされました。
もしこのような外部からの要因がなければ、日本の教育は批判にさらされることなく、ゆとり教育を「悠々」と続けていたかもしれません。さらに授業時間を減らしていた可能性だってあるでしょう。日本の教育界は果たして、教育の現状を調査・評価し、よりよい方向を目指すという機能をもっているでしょうか。
教育界の事情ですが、基礎資料を得るための全国学力調査は1966年に中止され、全面的に再開されたのは学力低下が問題になった2007年とされています。一方、2006年には1966年以来40年ぶりに教員の勤務実態調査の全国調査が決まりました。
学力調査は学校間の過当競争になるという理由で、勤務実態調査は管理強化につながるという理由で、どちらも日教組の反対によって中止されたと言われています。
言うまでもなく教育は理論通りにはいかない分野ですから、その成果を評価しながら試行錯誤を繰り返し、方向を見つけ出すという作業が常に必要です。教育の目標は学力だけではないにしても全国的な学力調査が重要な意味を持つのは自明でしょう。
授業時間と内容を大きく減らす、実験的な「ゆとり教育」を実施する以上、その評価の仕組みは当然必要と考えられます。仕組みがなかったのか、あったけれど機能しなかったのか、知りませんが、外部から学力低下を指摘されるまで表面化しなかったという事実は教育界に当事者能力にかかわる深刻な問題があることを示唆しているように思います。
教育の結果を評価するための調査を否定・軽視してきた人々に教育全体に対する責任感があったのでしょうか。自ら結果を評価するという基本機能の欠如を温存してきた現在の教育システムを見直す必要はないでしょうか。
出席者の1人、杉並区立和田中学校校長の藤原氏の話は興味深いものでした。藤原氏による革新的な試みは一部に反対があるものの、高い評価を受けつつあります。これが教育界ではなく民間出身の校長によって行われたという事実に注目したいと思います。
(初めに掲げた質問の結果は「思う」が54%、「思わない」が46%であったのですが、これは授業時間の増加に81%が賛成という別の世論調査の結果と大きく矛盾していて、調査方法に疑問が残りました)【了】
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