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【眼光紙背】新銀行東京:早期の整理が求められる

【眼光紙背】新銀行東京:早期の整理が求められる
保田隆明氏

保田隆明の眼光紙背:第21回

新銀行東京の経営問題が話題となっている。東京都が1,000億円を出資していたが、このたび新たに東京都が追加で400億円の出資をするという議案を石原都知事が議会に提出した。

■市場環境、経営環境が大きく変わった

この新銀行東京の設立構想が持ち上がった2003年は、日経平均株価が8,000円を割り中小企業の資金調達環境は最悪であった。もともと、中小企業への融資というのは、一番難しい層である。大手金融機関が中小企業への融資に長年及び腰なのも、リスクの見極めが難しいからである。そこで、中小企業への融資を専門に行う商工ローン業者がこの層への資金提供を担うという構図が以前は存在した。しかし、過酷な取り立て問題により商工ローンバッシングが起きたことで、中小企業の資金調達環境はますます悪化した。

そういう背景があったので2003年当時は、中小企業への無担保融資を目玉に掲げるこの銀行の設立意義に反対する向きはほとんどなかった。しかし、2004年以降株式市場が急速に持ち直して、景気の回復基調が鮮明になると大手金融機関も少しずつ中小企業への融資を拡大することとなった。新銀行東京にとって、市場環境や経営の前提条件が設立構想時と実際に設立された2005年では大きく変化していたのである。優良中小企業を大手金融機関が取り込み、新銀行東京に回ってくる融資先はおのずとリスクの高い中小企業になっていくという構図である。今振り返ってみると、新銀行東京は設立時期がよくなかった。

■ネガティブスパイラルが加速する前に整理すべき

今や新銀行東京の経営不安問題は皆の知るところとなってしまい、この銀行に積極的に預金をしたいと思う人は少なくなっていくことが予想される。銀行は、集めた預金を貸し出すことで収益を上げるので、預金が先細ることは生命線にかかわる問題である。また、融資を受ける企業にとっても、いつ経営破綻をきたすか分からない銀行から融資を受けるよりは、他の銀行から融資を受けたいと思うであろう。そうなると、新銀行東京は、他から融資を断られたリスクの高い企業ばかりがやってくる駆け込み寺になってしまい、不良債権の温床となる。

これらをきちんと審査して、リスクに見合った金利で融資を行えば問題ないのではあろうが、大手金融期間ですらそのノウハウを持ち合わせておらず、まして設立して間もない銀行にこのリスクの高い層をきちんと評価するシステムが内部で構築されているとは考えにくい。

今銀行を整理するのも大変だが、不良債権が大きくなってしまった後で整理するほうがインパクトが大きく厄介である。問題解決の先延ばしをすることで、解決できないほど問題が大きくなりすぎたのが、バブル崩壊後の日本の状況であった。過去に学ぶと、傷口が浅いうちに膿を出し切って整理してしまうに限る。

■問題の責任は都民にもある…

設立してたったの3年で整理となれば、責任問題が浮上するのは間違いなく、都庁、金融庁を含めて、皆それを恐れて積極的に整理をすべきと言い出すことができないのであるが、このまま放っておくと事態は悪い方向にしか進んでいかない。

実は都民にも今回の責任は大いにある。新銀行東京擁護派の石原都知事を、去年の都知事選で再選してしまっているのである。あの当時からこの銀行の経営問題は明らかになっており、石原氏を再選した時点で、新銀行東京の経営責任の一端を都民も担ってしまっている。都民のお金で銀行に出資した1,000億円が戻ってこなくとも、そして今回追加で出資することになるかもしれない400億円が焦げ付いても、彼を積極的に選んだ都民の責任ということにもなってしまう。

石原都知事にしてみると、昨年再選されたという強みで、新銀行東京について強行突破していく後ろ盾を得ているような状況であるが、本当に都民のことを考えれば面子や対面ではなく、実を取っていかに傷口を浅くするかを講じるべきではないだろうか。


プロフィール:
保田隆明(ほうだ・たかあき)…1974年生まれ。投資銀行などの勤務を経て、ワクワク経済研究所代表。金融、ビジネストレンドについて、書籍・テレビ・ラジオ・ブログを通じてわかりやすく解説している。公式サイト:http://wkwk.tv/
近著:「デキる人は皆やっている 一流のキャリアメイク術」、「投資銀行時代、ニッポン企業の何が変わったのか?


眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧

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