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時代に逆行する遺物的減税“租特”にメスを【辻広雅文 プリズム+one】


 四角の箱をイメージしていただきたい。税の仕組みを、簡単に例えてみよう。底面が課税の対象範囲と考えてほしい。高さが税率である。とすれば、底面と高さを掛け合わせた直方体の体積が税収となる。税制にとっての理想型は、安定的かつ公平であること、つまり課税対象範囲がなるべく広く、税率が低い、平べったい四角の箱なのである。

 戦後の1950年、シャウプ勧告によって新税制として導入された日本の所得税、法人税は、この理想型から始まった。ところが60年近くを経て、今、そこに“無数の穴”が空いている。租税特別措置(以下、租特)という名の特定産業、団体に対する減税の穴である。
 祖特は、今国会の焦点であるガソリン税などの増税措置や家計に対する優遇措置もあるが、ほとんどは企業向けの減税措置である。設備投資、減価償却、研究開発などさまざまな名目で減税を行い、企業のキャッシュフローを増大させる方向に導く。重厚長大産業を興し、輸出企業を伸長させ、高度成長を実現するために、補助金とならんで実に有効な産業育成策だった。官民が一体となって、あらゆるシステムを利用して経済発展を遂げる、開発主義と呼ばれる手法の一環であり、各国に共通する発展途上期の必須政策とも言えるだろう。

 だが、この祖特が、依然として1兆2000億円弱もの減税措置として残っているのはいかがなものか。驚くのは、そのなかには、1951年に船舶や船員の不足解消を目的とした「船舶の特別償却」措置などという“遺物”が混じっていることだ。名目も対象も少しずつ変えながら、国土交通省(旧運輸省)と造船業界は既得権として守り抜いてきたのである。
 祖特は、各省庁が傘下の特定産業を優遇、時に癒着の温床となる、と指摘されてきた。「船舶の特別償却」は、その典型的事例であろう。厄介なのは、減税措置は法律の条文になるだけで、予算書には盛り込まれないから国会のチェックがきかず、財務省すら正確な実態は把握できていないことだ。


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