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災害は悲しみも、醜さも、喜びも。そして生きる「人間ドラマ」の宝庫

2008年03月04日04時47分 / 提供:PJ

pj
災害は悲しみも、醜さも、喜びも。そして生きる「人間ドラマ」の宝庫
「自然が豊かだから、災害がある。だから、人間が住むんです。災害のないところには人間は住めません」と高田宏さんは語る。スペース・ゼロ(東京・渋谷区)で。(撮影:穂高健一、2月25日) 写真一覧(3件)
日本は火山噴火、洪水、地震などに見舞われる、災害列島だ。「単に火山にとどまらず、『災害列島に生きる』とタイトルに近いところで執筆しました」と高田さんは語る。同時に、人間のさまざまな行動に目をむけている。

 日本ペンクラブ主催の世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」の4日目の最終日、25日のスタートは、高田宏さんの書き下ろし『火山列島に生きる』だった。高田宏さんは小説、エッセーで活躍する作家。災害に関しては現地の取材、資料発掘など幅広く活動してきた。この分野では経験が豊富だ。

 高田さんは1990年の九州・島原の雲仙・普賢岳の大噴火から入った。舞台の大型スクリーンには「テレビ長崎」提供の、噴煙がもくもく上がる普賢岳が映し出された。

 同災害では、溶岩ドームが出現すると、映像や写真で全国に届けられた。と同時に、TVや新聞社の取材陣から、20人からの多数の死者がでた。立入り規制を超えた取材が問題になった。高田さんは、同現場にいたフリージャーナリストの江川紹子さんのことばを引用する。

 『(雲仙・普賢岳の火砕流の死亡事故では)、危険を伴う取材における安全性確保について、大きな警鐘を与えた。その後は、より慎重な対応するメディアが多い。それ自体は結構なこと。だが、いささか慎重になりすぎている。メディアごとに基準の判断が違っていてもいい』と江川さんは述べている。

 最近の取材姿勢について、『メディアが自分と違うやり方、異なる基準で行動する者に、不寛容になったり、攻撃的になったり、足を引っ張ったりしている。それは非常に残念だ』とつけ加えている。

 つまり、高田さんや、その語りを通して江川さんは、戦争や自然災害という危険地域で、「よりよい報道」をするためにはリスクとか、危険とかはつきまとう。それをあまりにも怖(おそ)れて、危険地帯(イラクなど)に踏み込むジャーナリストを批判ばかりしていると、報道の萎縮(いしゅく)になってしまうと指摘しているのだ。

 災害のなかで人は好(よ)くも悪くも本性を見せるもの。1959年の伊勢湾台風の取材から、高田さんは人間ドラマの面を紹介している。そのまま引用させてもらう。

 妊婦の話では、「くらやみの暴風雨のなか、波に巻かれながら、夫が彼女をしっかり抱えてくれたそうです。波にもまれて流れている屋根を見つけ、夫は渾身の力で屋根へ押し上げてくれました。そして力つきて波にのまれて行きました。そのとき大声で夫が叫びました。『おなかの子を、たのむ!』その叫びがいまも耳に残っています」と語ったというのだ。

 他方で、醜い話をも紹介する。小学校の一階が水没し、二階が避難所になっていた。そこに炊き出しのおにぎりがボートで運ばれてきた。やくざぽい男が、まっさきに手を出し、他のものを暴力で脅し、たくさんのにぎりめしを独り占めにした。空腹の人たちは、男の怒鳴り声と暴力を怖(おそ)れて何もいえなかった。「ぼく(高田さん)も、はずかしく口惜(くや)しいけれども、ただ見ているだけでした」と語る。

 災害は人間ドラマの宝庫だともいえる。喜びも、悲しみも、醜さも、あらゆることが混在しているようだ。

 1977年8月の有珠山噴火では、上空1万2000メートルまで噴煙が上がり、洞爺湖温泉街は石と灰の町になった。同様に、山の木々も、畑も埋まり、人びとの暮らしが崩壊した。一人の死者も出さなかったのは、多くの知恵と勇気があったから。とりわけ岡村正吉・虻田(あぶた)町長の果たした役割は大きかった、と高田宏さんは語る。
 
 岡村町長は、火山弾で直撃されて、へこんだ車で町を走り回っていた。(火山の)状況を掌握し、沈着な判断を下し、町の人びとにパニックを起こさせなかったのだ。

 「避難準備は完了している。オレ(町長)が命令を出すまで、家で布団をかぶって寝ていろ。避難のシンガリはオレがつとめる。死ぬときはオレが一番先なんだ」といい、町民の気持ちを落ち着かせた。他方で、念入りな避難準備を進めていた。その結果、全員が無事に避難できたのだ。

「地震、台風、津波など、あらゆる自然災害には優れたリーダーが現れる」と高田さんは話す。関東大地震のときには、デマから朝鮮狩りに奔走した連中がいた。一方で、東京・神田佐久間町では冷静なリーダーがいて、的確な状況判断と指揮の下で、町をほぼ無傷に守りぬいた、と事例を紹介する。

 さらにさかのぼること、江戸時代の火山大噴火にふれていく。伊豆大島・三原山は有史以来最大の噴火だった。浅間山の大噴火では鎌原村が埋まった(同フォーラムで立松和平さんが『浅間』で紹介)。伊豆諸島・青ヶ島の爆発は島の地形を変えた。高田さんは豊富な資料を下に、それら荒々しい自然災害と、被災者とのかかわりを紹介するのだ。

 地震、噴火、台風、水害、雪崩、津波といった荒ぶる自然災害は、その自然に鍛えられた人間の心の歴史をもみせています。しばしば美しい人間の母体でもありましたと、高田さんは全文を朗読しながら結んだ。【了】

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記者HP:穂高健一ワールド
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一

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