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大洪水から、一つの共同体の集落が生まれた=中国人作家の名作から

大洪水から、一つの共同体の集落が生まれた=中国人作家の名作から
中国人作家の莫言(Mo Yan:バクゲン)さんは、名作『秋の水』をみずから朗読する。スペースゼロ(東京・渋谷区)で。(撮影:穂高健一、2月25日) 写真一覧(3件)
【PJ 2008年03月03日】− 中国からノーベル文学賞が出るとすれば、最初は莫言(Mo Yan:バクゲン)さんだろう、といわれている。莫言さんの短編『秋の水』は、彼の名を世界的なものにした。日本ペンクラブ主催の世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」の4日目の最終日、25日の最後は、中国人作家の莫言さんだった。名作「秋の水」を自ら朗読した。日本語朗読は講談師の神田松鯉さんで、渋い味で会場を酔わせた。同時に、シャオ・ロンさんの中国琵琶(びわ)が独特の雰囲気をかもし出していた。

 『秋の水』のストーリーは、「ノアの箱舟」の中国版ともいえる。広大な大湿原のなかに小高く目立つ丘があった。そこに男と女が駆け落ちでやってきた。掘っ立て小屋を作る。兵隊も役人もやってこない、隔絶された社会だ。ふたりは荒れた土地を耕し、魚を取り、キツネやウサギを狩っていた。湿地のカニも食料になった。

 ここからストーリーが動き出す。収穫の数日前になって、10日間も雨がつづいた。大洪水となり、丘の周囲がすっかり水没してしまう。小屋では、女が臨月だが、難産でなかなか生まれない。洪水がなおもつづき、食料が底をついてくる。ネズミとの間で、食べ物の争奪がはじまる。人間と小動物たちとの共存関係が描かれている。

 濁流の川から、最初は死体が漂着した。次は生きた女が流れ着いた。彼女は女医で産婆の役を果たし、赤子が生まれた。その後も生存者が一人ふたりと流されて丘にたどり着く。小さな事件とか、偶然とか、残虐なものとかが混合した状態となる。他方で、一つの開拓地ができてくるのだ。やがて村へと形成されていく。

 作品は冒頭に、祖父が88歳の大往生が死んだ。孫が生前のお祖父さん(若き日に駆け落ちした男、主人公)から聞いた話、という語りから導入されている。『祖父や、おなじ年ごろの老人がむかし話をする。聞いていると、地形から奇談逸話の類まで、どれも突拍子もない話ばかり。鬼火がちらほら煌(きら)めくようで、ウソかマコトか判然としない』と述べられている。

 この点の押さえどころがしっかりしている。だから、荒唐無稽(むけい)な話の連続に思えるのだが、『人間社会が形成される最初のストーリー』として、しっかり伝わってくる。

 ラストシーンは、お祖父さんが教えてくれた「わらべ唄」だった。『緑のバッタは草を食べ、赤とんぼは赤い虫を食べ、紫のコオロギは紫そばを食べた』と唄われていく。

 最後の一声は、獏言さんがみずから『コケコッコーッ』と鶏の鳴きまねだった。日本人と中国人では鶏の泣きまねがまったく違う。それだけに、会場から愉快な笑いが起きた。

 狭い国土の日本では、広大な湿地に人間が一人ふたりと集まってきて村が形成される、という発想は持ちにくい。砂漠も荒野もある中国大陸ならではの作品だろう。

 インタビュールームで、「日本では、中国最初のノーベル文学賞は莫言さんだろう、といわれていますが?」と質問を向けてみた。「スウェーデンの方からいわれたら、受賞の可能性はあるでしょうね」とジョークを飛ばしていた。

引用文献

翻訳:藤井省三
朗読脚本:吉岡忍(日本ペンクラブ編:災害と文化)

【了】

■関連情報
記者HP:穂高健一ワールド
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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