今週のお役立ち情報
好天でも意外な落とし穴、冬山スキーでの強風に注意=乗鞍岳
2008年03月03日13時42分 / 提供:PJ
【PJ 2008年03月03日】−
2日、乗鞍岳の肩にある「肩ノ小屋」まで山スキーハイキングを楽しんだ。ここの標高2777メートルで、宇宙線観測所があることで知られる。ただ、冬季なので山小屋は閉鎖中だ。乗鞍高原スキー場のリフトを3本乗り継いで、スキー場の最高地点からスタート。樹林帯を抜けると、広々とした雪原が広がる。歩き始めて約3時間で小屋に到着した。
前の日の吹雪とはうってかわり、この日は快晴。午前8時半と始発直後のリフトに乗り、出発地点へ。ここでスキーの裏に滑り止めのシールを貼(は)り、スキー靴のかかとが上がるよう、ビンディングをセットした。辺りを見回すと山スキー・スノーボード客でごった返しており、新雪を滑ろうとわれ先にルートを登り始めていたグループが何組もあった。
午前中から気温もぐんと上がり、登り始めは上着が必要もないほど。ぽかぽかした陽気で、春スキーという気分だ。先輩2人と一緒に登ったのだが、2人はわたしを残して、どんどん先に行ってしまった。さすが、元遠征隊員。50歳近くになっても山岳耐久レースなどに出場して、自己研さんを積んでおられる。それに引き換え、わたしは普段の運動不足を痛感したのだった。
それまで春の陽気と雪山の景色を楽しんでいたのだが、森林限界を超えたころから急に寒くなってきた。ザックに入れてあったセーターと目出し帽、そして手袋の追加インナーを取り出して着用した。下界は暖かかったので、必要ないかなと思っていたのだが、やはり持ってきて正解だった。
わたしはこの日、ピッケルとアイゼンを持ってこなかったので、初心者コースの小屋までを予定していたが、先輩らは乗鞍岳の最高峰、剣ケ峰を目指していた。小屋まであと200メートルというところだろうか。時折、暴風雪が吹き荒れ、思うように先に進めない。雪面は風紋でがたがたとなったアイスバーンと化し、帰りにこれを滑るのかと思うと、気が萎(な)えてきた。
やっとの思いで小屋に到着した。風があたらない場所を見つけて、ザックを下ろした。先輩らに追いつこうと、3時間ぶっ続けで歩いていたので、へとへとだった。温かいお茶とドーナツを一気に飲み込むと、急に元気が出てきた。わたしのほかに5組ほどのパーティが休憩しており、山頂を目指そうか、それとも山を下りようか判断に迷っていた。
わたしがのんきに携帯電話で周りの景色を撮影していると、隣に座っていた登山客が話しかけてきた。「上まで行くんですか」「いや、装備を持ってきませんでしたから、きょうはここでおしまいです」「風すごいみたいですよね。わたしもやめます」「ここは風がなく、暖かくて良いですね」。こんな会話を交わした。
空は真っ青で、陽が強く射し、サングラスをしていないと目をやられてしまう。小屋から山頂方向を見上げると、細かな雪がものすごい勢いで谷を吹き抜けていくのがよく分かった。その吹雪の中から2つの人影が降りてきた。
「大丈夫ですか」「風でストックが突けないくらいの風だよ。ピッケルに持ち替えたんだけど、風がやむのを待っている時間のほうが長かったんで降りてきた。俺の耳どうかなってる」「先輩、耳がどす黒くなっていますよ」「また、やっちゃったよ。軽い凍傷。感覚がいまないんだ」。
急いでスキーを履き、山を下った。歩いて登った1時間の距離はスキーで下ると5分もかからない。樹林帯に入ると、いままでの風がうそのようやみ、急に暖かくなった。3人で山の上での出来事を話していると、下から登ってきた登山客から声をかけられた。「上のほうは、そんなに風が強いんですか」。先輩が「いや、すごかったですよ。耳がしびれるくらいですから」と答えると、凍傷の対処法を親切に教えてくれた。すると先輩はひと言「ありがとうございます。でも、わたし医者ですから大丈夫です」と、ばつが悪そうに答えていた。
この先輩は以前の高所登山で指に凍傷を負ってしまい、半年も外科手術ができなくなってしまった。病院の上司から「医者を続けるのか、山屋を続けるのか、どっちかにしろ!」と怒鳴られたそうだ。先輩は帽子の上にフードをかぶっていても軽い凍傷になってしまった。わたしは目出し帽の上にスキー帽を重ね、それをフードで覆うといういでたちだったが、それでも寒かった。強風の威力を改めて実感した。
今年に入って雪山での遭難が相次いでいる。遭難者の一人が記者会見で「山を甘く見ていた」と話していたのが印象的だった。一歩間違えると、冬山は事故に直結してしまう。万全な装備を調え、無理をせず、危ういと感じたら撤退する判断が必要だ。こんなことが今回の教訓だった。【了】
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 小田 光康【 東京都 】
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前の日の吹雪とはうってかわり、この日は快晴。午前8時半と始発直後のリフトに乗り、出発地点へ。ここでスキーの裏に滑り止めのシールを貼(は)り、スキー靴のかかとが上がるよう、ビンディングをセットした。辺りを見回すと山スキー・スノーボード客でごった返しており、新雪を滑ろうとわれ先にルートを登り始めていたグループが何組もあった。
午前中から気温もぐんと上がり、登り始めは上着が必要もないほど。ぽかぽかした陽気で、春スキーという気分だ。先輩2人と一緒に登ったのだが、2人はわたしを残して、どんどん先に行ってしまった。さすが、元遠征隊員。50歳近くになっても山岳耐久レースなどに出場して、自己研さんを積んでおられる。それに引き換え、わたしは普段の運動不足を痛感したのだった。
それまで春の陽気と雪山の景色を楽しんでいたのだが、森林限界を超えたころから急に寒くなってきた。ザックに入れてあったセーターと目出し帽、そして手袋の追加インナーを取り出して着用した。下界は暖かかったので、必要ないかなと思っていたのだが、やはり持ってきて正解だった。
わたしはこの日、ピッケルとアイゼンを持ってこなかったので、初心者コースの小屋までを予定していたが、先輩らは乗鞍岳の最高峰、剣ケ峰を目指していた。小屋まであと200メートルというところだろうか。時折、暴風雪が吹き荒れ、思うように先に進めない。雪面は風紋でがたがたとなったアイスバーンと化し、帰りにこれを滑るのかと思うと、気が萎(な)えてきた。
やっとの思いで小屋に到着した。風があたらない場所を見つけて、ザックを下ろした。先輩らに追いつこうと、3時間ぶっ続けで歩いていたので、へとへとだった。温かいお茶とドーナツを一気に飲み込むと、急に元気が出てきた。わたしのほかに5組ほどのパーティが休憩しており、山頂を目指そうか、それとも山を下りようか判断に迷っていた。
わたしがのんきに携帯電話で周りの景色を撮影していると、隣に座っていた登山客が話しかけてきた。「上まで行くんですか」「いや、装備を持ってきませんでしたから、きょうはここでおしまいです」「風すごいみたいですよね。わたしもやめます」「ここは風がなく、暖かくて良いですね」。こんな会話を交わした。
空は真っ青で、陽が強く射し、サングラスをしていないと目をやられてしまう。小屋から山頂方向を見上げると、細かな雪がものすごい勢いで谷を吹き抜けていくのがよく分かった。その吹雪の中から2つの人影が降りてきた。
「大丈夫ですか」「風でストックが突けないくらいの風だよ。ピッケルに持ち替えたんだけど、風がやむのを待っている時間のほうが長かったんで降りてきた。俺の耳どうかなってる」「先輩、耳がどす黒くなっていますよ」「また、やっちゃったよ。軽い凍傷。感覚がいまないんだ」。
急いでスキーを履き、山を下った。歩いて登った1時間の距離はスキーで下ると5分もかからない。樹林帯に入ると、いままでの風がうそのようやみ、急に暖かくなった。3人で山の上での出来事を話していると、下から登ってきた登山客から声をかけられた。「上のほうは、そんなに風が強いんですか」。先輩が「いや、すごかったですよ。耳がしびれるくらいですから」と答えると、凍傷の対処法を親切に教えてくれた。すると先輩はひと言「ありがとうございます。でも、わたし医者ですから大丈夫です」と、ばつが悪そうに答えていた。
この先輩は以前の高所登山で指に凍傷を負ってしまい、半年も外科手術ができなくなってしまった。病院の上司から「医者を続けるのか、山屋を続けるのか、どっちかにしろ!」と怒鳴られたそうだ。先輩は帽子の上にフードをかぶっていても軽い凍傷になってしまった。わたしは目出し帽の上にスキー帽を重ね、それをフードで覆うといういでたちだったが、それでも寒かった。強風の威力を改めて実感した。
今年に入って雪山での遭難が相次いでいる。遭難者の一人が記者会見で「山を甘く見ていた」と話していたのが印象的だった。一歩間違えると、冬山は事故に直結してしまう。万全な装備を調え、無理をせず、危ういと感じたら撤退する判断が必要だ。こんなことが今回の教訓だった。【了】
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
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