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【眼光紙背】不十分な日本の子育て支援策

門倉貴史の眼光紙背:第23回

近年、日本で「シングルマザー」となる女性が増えてきている。「シングルマザー」というのは、離婚や死別、あるいは未婚のまま母親になり、20歳未満の子供を扶養している女性たちのことを指す言葉だ。

「シングルマザー」の人たちは、どれぐらいの数に上るのか。総務省の「国勢調査」によると、子供と同居する配偶者のいない母親(15歳〜49歳)は、1985年の段階では約120.8万人であったが、95年には約134.6万人へ、そして、05年には約148.9万人へと増加した。最近では、結婚して子供をつくった後に離婚する夫婦が増加しており、これが「シングルマザー」が増える大きな要因となっている。夫の家庭内暴力などが原因で離婚、「シングルマザー」の道を選ぶ女性も少なくない。

一部の読者は別れた夫から養育費を請求すればいいのではないかと思うかもしれないが、協議離婚で養育費の取り決めをしないまま別れてしまったり、養育費の不払いなどがあって、実際に養育費を受け取っているのは、離婚によって母子家庭となった「シングルマザー」の5分の1程度にすぎないのだ。

「シングルマザー」は仕事と育児を両立させなくてはならないので、時間の融通の利くパートタイマーなど非正社員として働いているケースが多い。たとえば、厚生労働省の「全国母子世帯等調査結果」によると、シングルマザーの就業形態で最も多いのが「臨時・パート」で、全体の43.6%を占める。

収入が少ないうえに、子供の養育費もかかるため、「ワーキングプア」の状態になりやすいのだ。「全国母子世帯等調査結果」によると、シングルマザーの平均年収は213万円となっており、通常の世帯の4割程度にすぎない。なかには、子供の学費を捻出するために、深夜も含めてパートタイマーの仕事を4つもかけもちしている女性もいる。
また、「シングルマザー」の多くは、母子家庭ということで世間から冷ややかな目でみられやすいといった精神的な悩みも抱えている。

さらに深刻なのは、仕事が忙しくて子供と一緒にいる時間が十分にとれないため、子供が不登校になったり「ひきこもり」になってしまうケースがあるということだ。不登校や「ひきこもり」になると将来ニートになる可能性が高まる。こうなってくると「ワーキングプア」の状況がスパイラル的に悪化していくことになりかねない。

政府は、生活が困窮している「シングルマザー」が増加傾向にあることを踏まえて、03年7月に母子家庭への就労支援策を打ち出した(「母子家庭の母の就労の支援に関する特別措置法」)。具体的には、パートタイマーとなっているシングルマザーを正社員として採用した企業に対しては、1人につき30万円の奨励金を支給するなどといった内容だ。

しかし、これまでのところ、政府のシングルマザー支援策はうまく機能しているとはいえない。たとえば、「シングルマザー」の就労支援をした企業への助成を行った自治体は2006年度時点で26%と、低い水準にとどまったままだ。また「シングルマザー」が高い収入を得るための教育訓練給付金の支給件数も伸びていないという。
教育訓練給付金の制度については、「教育訓練中に所得の保証がない」、「忙しい時間を割いて講習を受けても、教育訓練の内容が基礎的なものにとどまっており、高賃金に結びつくようなものではない」といった不満の声も上がっている。

政府は、シングルマザー支援策の軸足を、これまでの資金面での援助から就労支援による自立に移そうとしており、将来的に児童扶養手当(全額支給の場合、児童一人あたり1ヶ月4万1000円)を削減することを目指している。当初は、今年度から削減をする予定であったが、世論の反発を受けて、結局、児童扶養手当削減案は凍結されることになった。シングルマザーの就労支援が不十分となっている現状では、国の財政状態が厳しいとしても、児童扶養手当を削減するべきではない。

プロフィール:
門倉貴史(かどくら・たかし) 1971年生まれ。エコノミスト。BRICs経済研究所代表。専門は、日米経済、アジア経済、BRICs経済、地下経済と多岐にわたる。オフィシャルサイト:門倉貴史のBRICs経済研究所


眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧

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