ゲストさんログイン

ウェブ検索

最新ニュース! クリックするほどよく分かる

[PR]過払いの無料弁護士相談受付中!

「自然災害」は、真実とはちがうヒーローを作り出した

2008年02月29日08時07分 / 提供:PJ

pj
「自然災害」は、真実とはちがうヒーローを作り出した
ユーモア小説『サラブレットに乗った小悪魔』は、南太平洋では話題になった作品。スペース・ゼロで(東京)。(撮影:穂高健一、24日) 写真一覧(5件)
ユーモア小説『サラブレットに乗った小悪魔』(1985年発表)は、南太平洋ではかなり話題になった作品。作者のアルバート・ウェントさんは太平洋の島・サモアの作家だ。

 日本ペンクラブ主催の世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」では、3日目の24日に取上げられた。約90枚の同小説を朗読するのは、30歳の活動写真弁士・片岡一郎さん、ピアノは柳下美恵さん。スクリーンに映し出される絵は、里中満智子さんだった。

 主人公のピリーは元旗手だった。サラブレットに乗っていたころ、ルール違反は日常的だった。かれは行く手を邪魔するものをけ散らす。ピリーはだれからも『サラブレットに乗った小悪魔』と怖(おそ)れられていた。あるとき一番人気の馬をインコースのフェンスに追い込み、転倒させた。馬はあごの骨を折り、その場で射殺。ピリーは競馬界から永久追放されたのだ。

 その後のピリーは悪事を働き、あっちこっちで小犯罪を起こしてきた。イノシシを盗んだ窃盗罪、売春あっ旋、船乗りの所持品強奪、百ポンドの小切手の偽造、暴動を煽(あお)った罪、教会の積立金を持ち逃げした罪で、刑務所に入ったり、出たりの人生だ。当然ながら、ピリーは家族や親戚から、迷惑がられ、嫌われ者だった。厄介な小悪魔である。

 サモア・タファイガタ刑務所には、農園を貫いて流れる川がある。嵐の日、2人の看守が濁流に押し流された。職員のなかでも、囚人に対して最も残虐な態度をとっていた看守たちだ。それにもかかわらず、囚人ピリーは荒れ狂う川に入り、2人を救おうとした。

 一人の看守の命は救えた。しかし、もう一人の看守とピリーはともに濁流に押し流されてしまった。命を絶った。ピリーはなぜ荒れ狂う川から、残虐な看守を助ける気になったのか。それは永遠の謎だ。

 親戚筋はピリーが死んでくれたことで、ほっと胸をなでおろした。他方で、サモアの作詞作曲家が、ピリーの行為は美しく、英雄的なバラードとして、ポピュラーソングにしたのだ。曲名は『ピリー・ザ・キッドのバラード』で、あちらこちらで大人や子どもまでもが歌う。サモアでは大ヒットした。

 ♪ われら英雄、ピリーは濁流に流された悪玉看守を救おうと、川に飛び込んだ。
   逆巻く川は、ピリーを飲み込み、彼の姿は見えなくなった。
   若者ピリーは勇敢だった。われらみんなのお手本だ。
   だけど 彼のために涙は無用 ピリーは天国に行ったのだから

 こうした歌詞が10章も続く。面白くないのは家族だ。生前はさんざん迷惑をかけてきたピリーが英雄になった。そんな歌を苦々しく聴くのだ。『若者ピリーだって、あいつは50歳を過ぎていた。みんなに好かれていただって? 誰からも好かれていなかった、あいつは嫌われ者だった』。ことごとく声高に反論するのだ。

 嵐の洪水という自然災害のなかで、ピリーはヒーローとして生まれ変わった。事実とはあまりにも相違するといっても、偶像は変わらない。ピリーの死後から一年経っても、そのことは変わらない。いつまでもヒーローと歌い続けられているのだ。

「災害」が生み出した、人間社会の一つの断面として象徴的な作品だ。


引用文献
 翻訳:河野至恩
 朗読脚本:吉岡忍(日本ペンクラブ編:災害と文化)

【了】

■関連情報
記者HP:穂高健一ワールド
PJニュース.net
PJ募集中!

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一

関連ワード:
サモア  洪水  刑務所  ワールド  イノシシ  
Ads by Google
コメントするにはログインが必要です
ログインしてください
投稿

関連ニュース:サモア

PJニュースアクセスランキング

注目の情報
過払い金返還の無料弁護士相談!
消費者金融に払い過ぎた利息が取り返せる可能性があります
完済後もOK。返済中であれば取り立てを止めることができます
借金215万円がゼロになり、368万円戻ってきた事例も!!


弁護士相談24時間受付中

写真ニュース

「自分の子供との間に壁をつくってはいけない」と反省=みじめな「アル中」(その6) 昔とんぼの旅日記-イラン編(19) 宮崎県庁本館もブルーのライトアップで糖尿病予防を呼びかけ 紅葉で色づくも色悪く=広島・安芸の宮島
東武鉄道、最大の工場でビッグなイベントを開催 みちのく福島 紅葉便り(4) 写真は掛け算で考えていなくもない=背面液晶表示の使い方 秩父鉄道、創立110周年を迎える
「OTAふれあいフェスタ」ちびっ子まとい振りのど根性。初冬のカメラ散歩(5)=東京 コンソーシアム福岡・連続市民公開講座(その4)=東アジアの大気汚染と地球温暖化 「誰もが泳ぎたくなる川を」大阪・橋下知事、水都再生河川水質改善に意欲 ツカサネットよおまえもか! 11月末をもって一時休止の告知

特集

ケータイでニュースを見る
QRコード 行きの電車、帰りの電車で
livedoorニュースを読もう!
ケータイにメールを送る
livedoor サービス: