今週のお役立ち情報
少年たちは原爆と自然災害の二重苦の末に、命が尽きた。=井上ひさし・書き下ろし作品
2008年02月25日13時09分 / 提供:PJ
【PJ 2008年02月25日】−
世界P.E.N.フォーラム「災害と文学」は21日、19時からイベントブロック『2』に入った。朗読劇「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」は、作者は井上ひさしさん、演出は栗山民也さん、音楽は宮下祥子(ギター演奏)さんだ。
リトル・ボーイとは、1945(昭和20)年8月6日、広島に投下された、原子爆弾の愛称(小さなおチンチン)である。ビッグ・タイフーンとは同年9月の枕崎台風。鹿児島県・枕崎市に上陸したときは、最低気圧916.6mbという猛烈な台風で、その勢力で広島上空をも通過し、日本を縦断した。
出演は新国立劇場演劇研究所第2期生の14人(平均年齢は25歳)で、全員が学生服とセーラー服姿で壇上に登場した。主人公3人は広島市内の小学6年生、それに老人である。
原爆が投下される前の広島が説明される。人口43万人、陸軍基地で、兵士は宇品港から南方に出征していった。原爆投下前の広島は一度の空襲もなかった。「広島県人は、アメリカに移民しておるけん、空襲は無いんよのう」と市民は口々に語っていた。
アメリカ・ルーズベルト大統領は、英国・チャーチル首相との対談で、原爆の効果を確認するために、広島、小倉、新潟、長崎には空襲しないといった。
8月6日の原爆投下(午前8時15分)の直前からはじまる。広島駅から徒歩15分の比治山(標高約70メートル)には、セミも野鳥も鳴いていた。少年3人の語りから、爆撃機から落下傘が投下され、45秒かけてゆっくり落ちてきた。太陽と同じ6000度の高温、殺人光線、爆風が広島を一瞬にして地獄にした。
14人の劇団員によって、阿鼻叫喚の地獄のようすが語られる。全身血だらけ倒れる、腕の皮膚が剥けている、大田川に飛び込む、水を求めて指の血をすする、腹部が破れて腸が飛び出す。晴天なのに、雷雲が発生し、黒い雨(放射能)が降る。1日にして12万人が死亡する。町がそっくり火葬場になった。
医療施設は壊滅し、「赤チン」「ひまし油」しかない。真夏で、被災者の耳や鼻にはうじ虫がわく。ハエばかりが勢いづく。こうした状況下で、親を亡くした少年たちは、「地獄のような恐ろしいところに、一人でよう住めん」といい、3人で行動をともにする。土管(どかん)のなかで生活する老人と知り合う。
市内は壊滅した。中国新聞社も例外でなく、8階建ての建物は倒壊寸前で、とても新聞を発行できない。同社は『口で情報を伝える』という伝達手段をとった。少年3人は中国新聞社に依頼されて、『少年口伝隊』を組織した。
「県知事のお言葉です。決してひるんではいけない。速やかに職場に復旧せよ」「山陽本線の下りは復旧のめどが立たず、上りは開通しました。被害者は無賃で乗れます」「郵便局は、通帳なしでも、2人の証人を立てれば、支払われます」「食塩は海岸に行けば、自分で作れます」
これらの情報がいかに無意味だったのか。
井上ひさしさん特有のエスプリと批判精神が、説明調でつけ加えられている。例えば、2人の証人というが身内は全員死んだとか、海岸には死体ばかりで塩田などできる場所がなかったとか。他方で、人探しの身近な情報は喜ばれたと語っていくのだ。
8月15日の終戦がきても、原爆被災者たちは次々と白血病で亡くなっていく。頭髪を洗えば、ばさっと脱毛する。血を吐いて死ぬ。個々の悲惨な状況がなおも語られる。他方で、復興支援のひと、調査団のひと、学校再開など、新たな動きが出てくるのだ。
9月に入って、大型台風が広島を直撃した。大風と天の底が抜けたような大雨になった。原爆で森林が禿山になっていた。だから、山津波に襲われた。「なんで、こげえな目に遭わんといけんのじゃ」と少年たちは泣く。それでも、生き延びた少年3人は、数日後から原爆病で亡くなっていくのだ。
同演劇研究所の劇団員に、朗読した印象を聞いてみた。「井上ひさしさんの、ことばに対するこだわりは凄(すご)いです。声に出して、耳で聞いて、立体的に立ち上がってくるんです」と話す。
■関連情報
世界P.E.N.フォーラム「災害と文学
記者HP:穂高健一ワールド
PJニュース.net
PJ募集中!
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
この記事に関するお問い合わせ / PJ募集
リトル・ボーイとは、1945(昭和20)年8月6日、広島に投下された、原子爆弾の愛称(小さなおチンチン)である。ビッグ・タイフーンとは同年9月の枕崎台風。鹿児島県・枕崎市に上陸したときは、最低気圧916.6mbという猛烈な台風で、その勢力で広島上空をも通過し、日本を縦断した。
出演は新国立劇場演劇研究所第2期生の14人(平均年齢は25歳)で、全員が学生服とセーラー服姿で壇上に登場した。主人公3人は広島市内の小学6年生、それに老人である。
原爆が投下される前の広島が説明される。人口43万人、陸軍基地で、兵士は宇品港から南方に出征していった。原爆投下前の広島は一度の空襲もなかった。「広島県人は、アメリカに移民しておるけん、空襲は無いんよのう」と市民は口々に語っていた。
アメリカ・ルーズベルト大統領は、英国・チャーチル首相との対談で、原爆の効果を確認するために、広島、小倉、新潟、長崎には空襲しないといった。
8月6日の原爆投下(午前8時15分)の直前からはじまる。広島駅から徒歩15分の比治山(標高約70メートル)には、セミも野鳥も鳴いていた。少年3人の語りから、爆撃機から落下傘が投下され、45秒かけてゆっくり落ちてきた。太陽と同じ6000度の高温、殺人光線、爆風が広島を一瞬にして地獄にした。
14人の劇団員によって、阿鼻叫喚の地獄のようすが語られる。全身血だらけ倒れる、腕の皮膚が剥けている、大田川に飛び込む、水を求めて指の血をすする、腹部が破れて腸が飛び出す。晴天なのに、雷雲が発生し、黒い雨(放射能)が降る。1日にして12万人が死亡する。町がそっくり火葬場になった。
医療施設は壊滅し、「赤チン」「ひまし油」しかない。真夏で、被災者の耳や鼻にはうじ虫がわく。ハエばかりが勢いづく。こうした状況下で、親を亡くした少年たちは、「地獄のような恐ろしいところに、一人でよう住めん」といい、3人で行動をともにする。土管(どかん)のなかで生活する老人と知り合う。
市内は壊滅した。中国新聞社も例外でなく、8階建ての建物は倒壊寸前で、とても新聞を発行できない。同社は『口で情報を伝える』という伝達手段をとった。少年3人は中国新聞社に依頼されて、『少年口伝隊』を組織した。
「県知事のお言葉です。決してひるんではいけない。速やかに職場に復旧せよ」「山陽本線の下りは復旧のめどが立たず、上りは開通しました。被害者は無賃で乗れます」「郵便局は、通帳なしでも、2人の証人を立てれば、支払われます」「食塩は海岸に行けば、自分で作れます」
これらの情報がいかに無意味だったのか。
井上ひさしさん特有のエスプリと批判精神が、説明調でつけ加えられている。例えば、2人の証人というが身内は全員死んだとか、海岸には死体ばかりで塩田などできる場所がなかったとか。他方で、人探しの身近な情報は喜ばれたと語っていくのだ。
8月15日の終戦がきても、原爆被災者たちは次々と白血病で亡くなっていく。頭髪を洗えば、ばさっと脱毛する。血を吐いて死ぬ。個々の悲惨な状況がなおも語られる。他方で、復興支援のひと、調査団のひと、学校再開など、新たな動きが出てくるのだ。
9月に入って、大型台風が広島を直撃した。大風と天の底が抜けたような大雨になった。原爆で森林が禿山になっていた。だから、山津波に襲われた。「なんで、こげえな目に遭わんといけんのじゃ」と少年たちは泣く。それでも、生き延びた少年3人は、数日後から原爆病で亡くなっていくのだ。
同演劇研究所の劇団員に、朗読した印象を聞いてみた。「井上ひさしさんの、ことばに対するこだわりは凄(すご)いです。声に出して、耳で聞いて、立体的に立ち上がってくるんです」と話す。
■関連情報
世界P.E.N.フォーラム「災害と文学
記者HP:穂高健一ワールド
PJニュース.net
PJ募集中!
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
この記事に関するお問い合わせ / PJ募集
|
|
|
コメントするにはログインが必要です
Ads by Google
前後の記事
- 3月から5月までの気温、各地方で平年並みより高い確率が4割以上=気象庁
PJ 25日14時23分 - 少年たちは原爆と自然災害の二重苦の末に、命が尽きた。=井上ひさし・書き下ろし作品
PJ 25日13時09分 - 俳句と短歌は、大地震の悲惨な状況、心の痛手を伝える
PJ 25日07時41分 - 市民と警察が協力するモデルケースを!「交通事故死ゼロを目指す日」で=千葉・浦安市
PJ 25日07時47分 - ソウルへの小さな旅、変貌する韓国の近況(5=完)
PJ 25日08時09分
PJニュースアクセスランキング
- 1

- 必見! 美しく神秘に満ちた山岳写真。受賞作品がずらり=東京(下)
PJ 05日09時24分
- 2

- “信州ダービー”勝利! 天皇杯長野県代表に。=松本山雅FC
PJ 04日07時13分
- 3

- 川越街道が真昼間に陥没、周辺は大渋滞に=埼玉・新座
PJ 04日07時07分
- 4

- 必見! 美しく神秘に満ちた山岳写真。受賞作品がずらり=東京(上)
PJ 04日12時05分
- 5

- みじめな「アル中」−体験者断酒実戦論(その3=回復過程の心理状態)=三重・伊勢
PJ 25日05時24分
- 6

- 「AVのマネしないで」AV女優・紅音ほたるが呼びかけ
PJ 07日10時46分
(3)
- 7

- ゴミ拾い、ゆるく楽しく仲間を作る=ナカメンバー
PJ 14日08時29分
- 8

- サザンの「勝手にシンドバット」で「今何時!?」「まだ早い!」のウラ話=神奈川・茅ヶ崎
PJ 29日08時55分
(5)
- 9

- 名水百選の湧水「妙音沢」を訪れる=埼玉県新座市
PJ 29日08時36分
- 10

- 「モウー」驚いたな、73頭の乳牛が大都会のど真ん中に出現=東京
PJ 06日07時59分
注目の情報
この石けん、なぜ、体臭に良い?
今、この石けんが「体臭に悩む男性」中心に、15万個も売れている。
なんでも今、全額返金キャンペーンを実施しているらしく、さらに売れ
続けていると。そこで早速、私も試してみると…凄い!
その秘密とは>>








行きの電車、帰りの電車で