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少年たちは原爆と自然災害の二重苦の末に、命が尽きた。=井上ひさし・書き下ろし作品

少年たちは原爆と自然災害の二重苦の末に、命が尽きた。=井上ひさし・書き下ろし作品
広島に原爆が投下された日に、原子雲が発達し、「黒い雨」が降る。砂で、雨の音を出す劇団員たち。(撮影:穂高健一、22日) 写真一覧(3件)
【PJ 2008年02月25日】− 世界P.E.N.フォーラム「災害と文学」は21日、19時からイベントブロック『2』に入った。朗読劇「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」は、作者は井上ひさしさん、演出は栗山民也さん、音楽は宮下祥子(ギター演奏)さんだ。

 リトル・ボーイとは、1945(昭和20)年8月6日、広島に投下された、原子爆弾の愛称(小さなおチンチン)である。ビッグ・タイフーンとは同年9月の枕崎台風。鹿児島県・枕崎市に上陸したときは、最低気圧916.6mbという猛烈な台風で、その勢力で広島上空をも通過し、日本を縦断した。

 出演は新国立劇場演劇研究所第2期生の14人(平均年齢は25歳)で、全員が学生服とセーラー服姿で壇上に登場した。主人公3人は広島市内の小学6年生、それに老人である。

 原爆が投下される前の広島が説明される。人口43万人、陸軍基地で、兵士は宇品港から南方に出征していった。原爆投下前の広島は一度の空襲もなかった。「広島県人は、アメリカに移民しておるけん、空襲は無いんよのう」と市民は口々に語っていた。

 アメリカ・ルーズベルト大統領は、英国・チャーチル首相との対談で、原爆の効果を確認するために、広島、小倉、新潟、長崎には空襲しないといった。

 8月6日の原爆投下(午前8時15分)の直前からはじまる。広島駅から徒歩15分の比治山(標高約70メートル)には、セミも野鳥も鳴いていた。少年3人の語りから、爆撃機から落下傘が投下され、45秒かけてゆっくり落ちてきた。太陽と同じ6000度の高温、殺人光線、爆風が広島を一瞬にして地獄にした。

 14人の劇団員によって、阿鼻叫喚の地獄のようすが語られる。全身血だらけ倒れる、腕の皮膚が剥けている、大田川に飛び込む、水を求めて指の血をすする、腹部が破れて腸が飛び出す。晴天なのに、雷雲が発生し、黒い雨(放射能)が降る。1日にして12万人が死亡する。町がそっくり火葬場になった。

 医療施設は壊滅し、「赤チン」「ひまし油」しかない。真夏で、被災者の耳や鼻にはうじ虫がわく。ハエばかりが勢いづく。こうした状況下で、親を亡くした少年たちは、「地獄のような恐ろしいところに、一人でよう住めん」といい、3人で行動をともにする。土管(どかん)のなかで生活する老人と知り合う。

 市内は壊滅した。中国新聞社も例外でなく、8階建ての建物は倒壊寸前で、とても新聞を発行できない。同社は『口で情報を伝える』という伝達手段をとった。少年3人は中国新聞社に依頼されて、『少年口伝隊』を組織した。

 「県知事のお言葉です。決してひるんではいけない。速やかに職場に復旧せよ」「山陽本線の下りは復旧のめどが立たず、上りは開通しました。被害者は無賃で乗れます」「郵便局は、通帳なしでも、2人の証人を立てれば、支払われます」「食塩は海岸に行けば、自分で作れます」

 これらの情報がいかに無意味だったのか。

 井上ひさしさん特有のエスプリと批判精神が、説明調でつけ加えられている。例えば、2人の証人というが身内は全員死んだとか、海岸には死体ばかりで塩田などできる場所がなかったとか。他方で、人探しの身近な情報は喜ばれたと語っていくのだ。

 8月15日の終戦がきても、原爆被災者たちは次々と白血病で亡くなっていく。頭髪を洗えば、ばさっと脱毛する。血を吐いて死ぬ。個々の悲惨な状況がなおも語られる。他方で、復興支援のひと、調査団のひと、学校再開など、新たな動きが出てくるのだ。

 9月に入って、大型台風が広島を直撃した。大風と天の底が抜けたような大雨になった。原爆で森林が禿山になっていた。だから、山津波に襲われた。「なんで、こげえな目に遭わんといけんのじゃ」と少年たちは泣く。それでも、生き延びた少年3人は、数日後から原爆病で亡くなっていくのだ。

 同演劇研究所の劇団員に、朗読した印象を聞いてみた。「井上ひさしさんの、ことばに対するこだわりは凄(すご)いです。声に出して、耳で聞いて、立体的に立ち上がってくるんです」と話す。

■関連情報
世界P.E.N.フォーラム「災害と文学
記者HP:穂高健一ワールド
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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