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「TPO」より大切なこと

 ファッション誌を読んでいると何かと出てくる「TPO」。時と場所と場合を考えてオシャレをしよう、という考え方です。女性誌では特に「TPO」というのが重視されていて、鍋パーティーの時はこの服装が適切、花見ではこれがモテる、夜遊びにはコレ、海でのデートはこれがマスト、というような感じで、TPO別に細かく服装が提案されています。さらに、2週間コーディネートや1ヵ月コーディネート、というものまで載っているので、「TPO別にいつも違う服を着ているように思わせるのがオシャレ」という認識が、多くの女性にはあるのではないでしょうか。

 そういう理由からか、女性も「TPOをわきまえたファッション」というのを男性に求めます。それこそがオシャレであり、好感が持てるファッションだと言います。でも、ちょっと待って欲しい。男性だって、冠婚葬祭やドレスコード等、ある程度のTPOはきちんとわきまえています。それ以上の、女性誌並みのTPOをですね、男性のカジュアルシーンに求める方が酷じゃないですか?季節の数だけ服を揃えたり、ハイキングでは本格的なアウトドアブランドを着用したり、レストランではラグジュアリーな服でセレブ風に決める。確かにオシャレで女性にモテそうなことは認めます。しかし、そんなお金がかかりそうなことよりもですね、もっと大切なことがあると思うのです。


 ファッションにおいて、「TPO」というのは何よりも最優先しなければいけない概念のような感じさえするのですが、この言葉、実は和製英語、それもアパレル業界の陰謀、と言ったら表現が悪いのですが、アパレル業界の仕掛けた販促フレーズとして生まれたのをご存知ですか?

 「TPO」というのはVANの創始者であり、アイビーを日本に持ち込んだ、故・石津謙介氏が発案した言葉です。その石津謙介氏の著書『 できる男の服装戦略―ビジネスチャンスをものにする』にこんなことが書いてあります。

「日本メンズ・ファッション(MFU)」という団体があって、 1961年に、「TPO」という新語を作った。正直な話、これは明らかに生産者側、すなわち、アパレルメーカーの考え出した言葉であると断言できる。というのは、当時、日本のビジネスマン、サラリーマンといった一般社会人、特に男性は、一体背広服を何着くらい持っているのだろうか、調査機関を使って調べてみたことがある。出た答えは、平均2.6着という数字であった。


もう、おわかりかと思いますが、春夏秋冬という季節で着分けるだけでは限界があるので、洋服を着る機会を増やし、服をたくさん買ってもらおうと、生まれたのが「TPO」なのです。「洋服は時、場所、目的によって着分けるのが常識です」と煽ったのです。

 「TPO」はキャッチーなだけではなく、理にかなっている言葉です。だから、これだけ一般化しているのでしょう。特に女性は男性と比べアパレル業界と距離が近いので、すっかり、影響されてしまっていますが、冷静に考えると、『CanCam』のキャッチフレーズである、「めちゃモテ」と「TPO」は大差ありません。販促フレーズという点で同じです。もちろん、「TPO」を考慮して、細かく着分けることができたら素敵です。「めちゃモテ」でめちゃくちゃモテたらハッピーなことです。でも、必要以上にモテる必要がないのと同じで、必要以上に服を着分ける必要なんてないと思いませんか?


 確かに「TPO」は大切です。しかし、もっと大切なことがあるのです。「TPO」を意識して、カメレオンのようにその場に溶け込むよりも、「自分のスタイル」を意識する方が大切だと思うのです。「TPO」の発案者である石津氏も『男たちへの遺言 ダンディズムの方法60』でこんなことを述べています。

英語には「He has a style」という言い回しがある。彼には独自のテイストがある、流行に左右されない彼独自の様式があるということである。英国人は、男は独自のスタイルを持つべきだと考えている。いや、そうでない人間を軽蔑すらしている。


流行や販促フレーズでカメレオンのようにファッションがころころ変わる男性をどう思います?服をたくさん持っていたらオシャレなのですか?中身で勝負というのは置いといて、お金回りは悪くないようだけど、この人はどんなファッション(スタイル)が好きなんだろう?と掴みどころがありませんし、服装からその人がなかなか見えてきません。主張がないファッションに興味は持ちませんし、よくわからないものは記憶に残らないのではないでしょうか。 Yahoo!知恵袋には「コロコロとファッションが変わる人は浮気性という感じがするし」という意見もありました。

 それに対し、ひと目見ただけで、それが誰であるかがわかる、そんな独自の「スタイル」を持っている男性の方が記憶に残ります。1つのものを愛用し続けたり、いつも同じようなテイストの服を着ていたり、そういうこだわりのある男性の方がモテると思いませんか?いつも変わらないその姿に安心しませんか?一緒にいて落ち着きませんか?

 だから、女性の口から放たれる「TPO」という言葉に惑わされてはいけません。「TPO」の行き着く先は、たくさんの服とそれを揃える経済力です。これみよがしに高級ブランドを着用しなくてもオシャレができるように、 TPO別に服をたくさん揃えなくてもオシャレはできるのです。「自分のスタイル」を、常識の範囲で、TPO別に対応させればいいのですから。まずは「TPO」より「スタイル」を意識する。これが大切だと思います。


Elastic - ファッション、女性誌、トレンドをウォッチするブログ
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