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【眼光紙背】空港施設運営企業に対する外資規制の是非

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【眼光紙背】空港施設運営企業に対する外資規制の是非
保田隆明氏

保田隆明の眼光紙背:第19回

羽田空港の商業施設を運営する日本空港ビルデングの20%株式をオーストラリアのマッコーリーが取得したことで、国交省と与党は空港施設運営企業に対して外資の保有割合を3分の1未満にする法律の制定に動き出している。ただ、与党内も一枚岩ではなく、「その規制は本当に必要なのか」「外資の対日投資がますます減退する」という疑問や規制に反対の声も内部であがっている。いったいこの規制は必要なのか、必要ないのであろうか?

■規制賛成派の意見

空港は国の安全保障上重要な施設であり、それに外資の保有規制をかけるというのは当然であるという考えがまずある。これは、もっともであり、実際海外の主要国でも、空港運営企業に対しての外資保有規制や、政府が過半数の株式を保有することなどを定めている国が多い。イギリスやイタリアのように外資規制がなくその結果空港施設運営企業が外資系のファンドなどになってしまったという国もあるが、決して多数派ではない。

また、規制をすると言っても、3分の1未満にするというだけの話であり、全く保有できないと言っているわけではないのだから、これぐらいいいじゃないかという論もある。

■規制反対派の意見

規制を導入することにより、海外から日本への投資意欲がますます減退してしまうという議論がある。確かに近年の日本の株式市場は必ずしも海外の投資家にとって投資をしやすい環境にはなく、実際、外国人投資家は日本市場で買い越しの状態が数年続いたが、ここ数ヶ月間は売り越しに転じている。東証の売買高に占める外国人投資家の割合が7割に迫る状況において、これ以上外国人投資家の売りを誘発するような規制を導入するべきではない、という意見である。

もうひとつは、空港施設運営企業が天下り先となっているため、国交省は天下り先の確保のために外資規制を導入しようとしているのではないかという疑念である。天下り防止のためにも規制はすべきでないという議論である。

■成田と羽田は別もの

さて、今回の空港施設運営企業に対する外資規制であるが、なぜ話題がここまでヒートアップしているかと言えば、成田空港を運営する企業が来年以降に上場を予定しているからである。羽田は路線のほとんどが国内線であるが、成田はわが国の最大の国際空港であり、これを外資に抑えられるとまずいということである。

さて、この羽田と成田であるが、現在マッコーリーが株式を20%取得した日本空港ビルデング(羽田)は、実は単なる商業施設運営会社である。羽田空港内の商業施設を運営し、そこからの収入がメインの売り上げである。滑走路や管制塔などを持っているわけではない。この企業が大量の資金調達をしたとしても、滑走路が増えるわけでもなんでもないのである。言うなれば、東京駅の商業施設を運営しているのと同じようなものである。

一方、成田の場合は、滑走路などまさに空港そのものを保有しており、これを買収すれば確かに空港が取得できるという構図である。したがって、今回の空港施設運営企業に対する外資規制を議論するに当たっては、羽田には規制をすべきでなく、成田には規制をしてもいいというのが、規制反対派の意見でもある。

■国民には分かりにくい

さて、そのように羽田と成田の違いの説明を聞いた人は違いを認識することができるが、ニュースなどではそこまで詳しく解説されていることは少なく、国民には両方同じようなものに思えて、確かに安全保障上は規制も必要だろうと思う。そこになぜ規制に反対する議員が出るのだろうという疑問が沸くと同時に、議論をまとめ切れていない自民党に対してふがいなさを感じてしまうことであろう。

また、天下り防止を外資に頼るというのも全くみっともない話で、天下り防止はこの外資規制の枠組みとは別のところで議論をすべきである。そもそも天下りの問題はこれら空港施設運営企業に限った話ではなく、もっと大きな話あるため、本気で天下り問題解決を議院が取り組むなら、これを歓迎しない国民はいないだろう。

なお、今回外資規制を導入したところで、影響を受けるのは上場企業のうち、現在のところは日本空港ビルデング1社のみ、成田が上場しても2社である。日本には3,500ほどの上場企業が存在するが、それら二つに外資規制を導入したところで、外国人投資家がこぞって日本市場から去って行くとも思えない。

外国人投資家の日本離れを心配するのであれば、空港施設ではなく、構造改革を真剣に進めていくということが先決であるはずである。どうも議論が摩り替わっているのでは、という印象を受けざるを得ない。



プロフィール:
保田隆明(ほうだ・たかあき)…1974年生まれ。投資銀行などの勤務を経て、ワクワク経済研究所代表。金融、ビジネストレンドについて、書籍・テレビ・ラジオ・ブログを通じてわかりやすく解説している。公式サイト:http://wkwk.tv/
近著:「デキる人は皆やっている 一流のキャリアメイク術」、「投資銀行時代、ニッポン企業の何が変わったのか?


眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧

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