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【よこ顔】ジャズマンから、津軽三味線の流浪芸人に=大内和己さん(下)

2008年02月20日07時45分 / 提供:PJ

pj
【よこ顔】ジャズマンから、津軽三味線の流浪芸人に=大内和己さん(下)
「私は青森が大嫌いで、逃げていました。だから、津軽の三味線も悲しみの思い出の一つだった」と長年のトラウマを語ってくれた。(撮影:穂高健一、東京・新宿で、1月25日) 写真一覧(2件)
(中)からのつづき。生きる支えを失くした大内和己さんは、出身地の青森に帰ってみた。実家はすでに無人で、叔父が家屋の管理をしていた。ひとまずそこを住まいとした。1棹(さお)の三味線が知人からもらい下げられた。それを奏でてみると、それは幼いころに納戸で独り聞き入った、懐かしい三味線の音だった。

 「私が長年もとめていたのは、この三味線の音だと、気づいたのです。私は青森が大嫌いでした。ともかく青森から逃げていました。だから、津軽の三味線も悲しみの思い出の一つとして信じ込んでいたわけです。しかし、三味線との再会によって、私は生き永らえる、生きる勇気がわいたのです」と話す。

 近くの公園で、一番むずかしいといわれる『津軽じょんがら節』を朝から晩まで弾(ひ)いていました。

 ある日、宮城県・仙台市内の知り合いを訪ねた。大内さんは路肩で、ためしに門付けで三味線を弾いてみた。すると、お金をくれたひとがいたのだ。「高橋竹山は門付けしながら、芸を磨いた芸人だ。私もそうしてみよう」と思い立ったのだ。

 1997年に、まず北海道をスタートし、48都道府県の行脚をはじめたのだ。県庁所在地はすべて回る、そして、1カ所は3日間と決めた。

 「立ち止まる人も皆無、1日で止めたくなった場所もありました。それでも耐えて、3日間は滞在したという。逆に、お金がたくさん入る場所でも、3日間で切り上げました。私の目的は自分の音色を見つけることですから」と話す。

 大内さんはかつてジャズをやってきた。「サンバと坊さま三味線、このふたつは底流では結びつきます。『土着』という共通語でくくれるのです」と語る。大内さんは「根っこの音楽」を求めているのだ。

 大内さんは全国行脚のなかでも、求めている音とリズムがつかめず、苦悶(くもん)の中にいたという。あるとき津軽弁をしゃべりながら、弾くと、そこには探し求めていたリズムがあったのだという。

 「坊さまは津軽弁を語りながら、三味線を弾いていた。これだと思いました。探し求めていたのは、高橋竹山師のリズムと音なんです。それはとても神秘的で、複雑なリズムでした。この坊さま三味線のリズムこそ、未来の自分の音楽がある、と確信しました」と語るのだ。

 「しかし、私は、心から尊敬する高橋竹山師そのものじゃない。仁太坊のことば『人まねしないで、自分の三味線を弾け』が座右のことば。となると、高橋竹山師のコピーであってはいけない。だから、竹山師の弾き方を習いに行かない」。大内さんは自分のアイデンティティーに拘泥するのだ。

 全国行脚の一方で、大内さんはその力量が認められてきて、舞台から声がかかるようになった。舞台に立てば、出演料や拍手がもらえる。「その気になって、路上に出たら、だれも聞いてくれない。何かが足りないんです。2日目、3日目になると、人が集まる。聞いているほうが分かるのです。路上は勉強になる。止めたら、自分はダメになる」と自分自身に厳しさを求めている。

 東京都内の路上の1コマを教えてくれた。65歳だという女性が声をかけてきた。『私は青森出身です。子どものころ、吹雪のときに、坊さまがわが家にきて三味線を弾きました。腹に響く、その音が忘れられない』という。最近、あちらこちらで、その音を求め、三味線を聴いてまわったらしい。『坊さま三味線はもう無くなったと思った。あなた(大内さん)の音はむかしの青森の音です』といってくれました」と話す。

 「私は両親へのトラウマから、青森を遠ざけたり、対峙したりしてきた。しかし、三味線を持って全国を回るうちに、青森と正面から向かい合う私がいました」と話す。

 大内さんには、この先の目標を聞いてみた。「作曲をして、坊さま三味線を新たな音楽として成立させたい」。歌舞伎の歴史を見れば、ルーツは『河原者』と呼ばれていた、能舞台に比べ、邪道の興行だった。歌舞伎はいまや重要無形文化財で、歌舞伎役者は人間国宝になったりする。

 坊さま三味線は江戸時代から、貧しい芸人たちの日銭稼ぎで、差別され、蔑(さげす)まされてきた。「坊さま三味線は将来必ず、見直されるはずです」と語る、大内さんは全国行脚を続けているのだ。【了】

■関連情報
大内和己さん
FAX 03−3994−5617
080−5613−1260
Eメール:126.kazumi.oto@ezweb.ne.jp

記者HP:穂高健一ワールド
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パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一

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