沖縄で発生した女子中学生に対する暴行事件について、メディアの見方が割れている。週刊新潮が「『危ない海兵隊員』とわかっているのに」という見出しを掲げ、中学生側にも不注意な部分があったことを示唆する一方で、朝日新聞は「被害少女は悪くない」との見出しを掲げ、「責任転嫁は許さぬ」といった女性団体の声を紹介。朝日の記事は新潮の記事を念頭に置いている可能性もあり、「メディア対決」の様相も呈してきている。

「根拠もなく中傷する物言いが繰り返された」と朝日

   地元紙の報道を総合すると、2008年2月10日、中学2年生の女子生徒(14)が、友人2人と沖縄市の商業施設「コザ・ミュージックタウン」に遊びに来ていたところ、20時半頃に大型バイクに乗った男に「送っていくよ」などと誘われ、後部座席に座って、男の自宅まで連れて行かれた。女子生徒は怖くなって一旦は逃げ出すが、男に追いつかれ「ドライブしよう」と言われ、車に乗った。22時半、この車内で暴行されたとされる。女子生徒は北谷町(ちゃたんちょう)の公園で車から降ろされ、うずくまっているところを警察に保護された。

   女子生徒が男の自宅や人相などを覚えていたことから、2月11日未明、沖縄県警は米海兵隊2等軍曹タイロン・ハドナット容疑者(38)を強姦容疑で逮捕した。同容疑者は、「抱きついたりはしたが、暴行はしていない」などと容疑を否認し続けているという。

   沖縄県では、1995年にも、海兵隊員3人による強姦事件が発生しており、事件をきっかけに反米軍基地運動が急速に加速した、という経緯がある。そのため、今回の事件も沖縄の世論に火を付ける可能性が高いからなのか、各紙とも、今回の事件については

「米軍に綱紀粛正を求めるのは当然」

といった論調でほぼ一致している。

   ところが、被害を受けた女子中学生周辺にも非があったのでは、と言いたげな記事もあるのだ。

   例えば、週刊新潮の2月21日号(首都圏では2月14日発売)では「『危ない海兵隊員』とわかっているのに 暴行された沖縄『女子中学生』」との記事を掲載。女子生徒は、大規模な米軍基地を抱える沖縄市在住である一方、実家は宜野湾市郊外にあるとして

「宜野湾の基地はコザ(編注: 沖縄市の旧名)とは比較にならない。米兵の怖さを肌身に染みて知らないから、付いて行ってしまったのでは」

という、ミュージックタウン周辺の商店主の声を紹介、いわば

「コザの人間は、普段から米兵に対して警戒するが、女子生徒は『コザの人間』ではなかった」

といった見方を示しており、記事はこのように結ばれている。

「いずれにせよ、『危ない』はずの米兵に気軽に付いていったツケは14歳の少女にとってあまりに重いといわざるをえない」

直接的な表現ではないにせよ、女子生徒の「脇の甘さ」を暗示するような書き方ではある。

   これに対して、朝日新聞は2008年2月17日の紙面で「被害少女は悪くない」という見出しの記事を掲載。記事はこのような書き出しで始まっている。

「米兵による性犯罪が起きるたび、『ついてゆく方も悪い』などと被害女性に責任を転嫁し、根拠もなく中傷する物言いが繰り返された」

さらに、今回の事件もこれに該当すると指摘。ネット上で事件について繰り広げられている議論や、先述の週刊新潮の記事を念頭に置いているものとみられる。記事では、女性団体が

「沖縄のことも被害者のことも何一つ知らない人たちが、被害者を中傷することだけは、絶対に阻止したい」

などとして、東京や沖縄でデモを予定していることを報じている。

広島市内の強姦事件でも同様な論争が起きる

   もっとも、女子中学生側の環境について指摘した記事でも、まずは容疑者への非難から始まっており、決して「女子中学生が悪い」という主張を展開している訳ではない。その点で朝日新聞の記事は「議論がかみ合っていない」との見方もできなくない。

   また、同様のケースとして、広島県の藤田雄山知事が、07年10月に広島市内で発生した米海兵隊員による強姦事件について発言した内容が議論を呼んだこともある。発言は、事件の状況を念頭に「朝3時に盛り場でうろうろしている未成年もどうかと思う」と指摘したもので、「被害者に非があったかのような言い方だ」「正論を述べたまでだ」などと、関係機関には賛否両論が寄せられた。

   なお、この事件では、書類送検された4人の海兵隊員については不起訴処分とされている。検察側は不起訴の理由を発表していないが、被害女性の供述にもあいまいな点が多く、嫌疑不十分と判断されたものとみられている。

   その一方で、この4人については、米軍の軍法会議にかけるかどうかを検討中で、米軍岩国基地で行われた予備審問で、女性は

「1人と性行為をすることには同意したが、途中で3人が車に入ってきて、4人に暴行された」

などと説明。事態は混迷を深めつつある。

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