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【よこ顔】ジャズマンから、津軽三味線の流浪芸人に=大内和己さん(上)

2008年02月17日16時20分 / 提供:PJ

pj
【よこ顔】ジャズマンから、津軽三味線の流浪芸人に=大内和己さん(上)
大内和己(かずみ、58)さんは、プロ・ジャズマンから、坊様三味線に転進した。(撮影:穂高健一、東京・上野公園で、1月25日) 写真一覧(4件)
津軽三味線が奏でる『津軽じょんがら節』は、いまや全国に知れわたるメジャーな曲となった。津軽三味線の演奏者たちは演芸場、宴会、TV、ラジオなどで活動する場が与えられている。同時に、多くの人たちを魅了させている。

 これらを背景に、昨今は太棹(ふとざお)を弾(はじ)く津軽三味線の演奏者を目指すひとが多い。伝統芸能の伝承は一般的に家元に弟子入りして学ぶ。最近の津軽三味線も同様に、その傾向にある。

 大内和己(かずみ、58)さんは、プロ・ジャズマンだったが、そこから身を引いた。ここ12年間には三味線ひとつで、野宿もいとわず、48都府県をまわっている。大内さんは独力で、『津軽坊さま(ぼさま)三味線』の音色、失われた三味線の曲節を追い求めている。

 寒風が吹く1月の東京・上野公園で、三味線を弾く大内和己さんから、話を聞くことができた。『ひとつの音を求めて生涯を懸ける。こういう生き方もあるのか』という強い印象をもった。

 「津軽三味線は坊さまとよばれた、盲人の門付け芸人たちによって生まれました。津軽では、坊さまとは乞食(こじき)と同意語です」と大内さんは話す。

 津軽三味線のルーツは江戸時代までさかのぼるようだ。本州の最北端の津軽は、真冬ともなれば雪深く、寒風が雪面をなでる。三味線一つで、その日暮らしの糧を求めて村々を歩く、地位も身分も与えられない、蔑(さげす)まれた『坊さま(乞食)三味線』を弾くひとたちがいた。

 「多くは流行り病(伝染病など)で失明し、盲目となったひとたちです」と話す。士農工商の身分外で、祭りや宴会場など華やかな場所では、三味線を弾くことすらも認められていなかったのだ。かれらは民家の軒下で、三味線を奏でて銭や米を乞う、『門付け』と呼ばれる方法で生きていた。

 坊さま三味線の特徴は「たたき三味線」である。それを生み出したのが、仁太坊(秋元仁太郎)だった。仁太坊は幕末のころ船頭の子として生まれた。幼くして母親、父親を失い、そのうえ天然痘から失明した。三重苦、四重苦の仁太坊は三味線弾きの流浪の人生となったのだ。

 三味線の音は、冬場は雪に吸収されてしまう。家のなかにいる人、隣りあう家でも、「坊さま三味線がきた」とを知らしめて、銭や米をもらう。それには音がよく響くことが必要だった。仁太坊は艱難辛苦の末に、三味線をたたき付けるように弾く、新しい「たたき三味線」を生み出したのだ。

 「坊さまは苦節の日々を生きてきた。そして、野垂れ死にするひとが多かった」と大内さんは語る。現在の津軽三味線の演奏者からは想像できない、およそ縁遠い、過酷な生活だった。「いまや津軽から坊さまは消えてしまった。と同時に、坊さま三味線の音色も消えていったのです」と大内さんは話す。

 大内和己はかつて一度も三味線師匠の門をたたいたことがない。独り全国行脚で、本来の津軽坊さま(ぼさま)三味線の音色を求めているのだ。尊敬する仁太坊は、自分の弟子たち(全員が盲人)に、「人まねしないで、自分の三味線を弾け」と言いつづけてきたという。仁太坊のことばに感銘する大内さんは、先人とおなじ厳しい環境に身をおき、自ら修験道に似た道を歩んでいるのだ。津軽三味線の世界では、もはや数少ない流浪芸人なのだ。【つづく】

■関連情報
大内和己(かずみ)さん
FAX 03−3994−5617
080−5613−1260
Eメール:126.kazumi.oto@ezweb.ne.jp

記者HP:穂高健一ワールド
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パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一

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