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中国での捜査を迷宮入りさせるな=毒入りギョウザ事件

2008年02月14日14時36分 / 提供:PJ

pj
中国での捜査を迷宮入りさせるな=毒入りギョウザ事件
誰が農薬を入れたのか(画像はJTホームページより)
中国製冷凍ギョーザによる農薬中毒事件で13日、中国の検疫当局が記者会見し、「(農薬が)人為的に混入された可能性はほとんどない」と発表した。並行する公安当局による捜査についても「現時点では故意を疑わせる形跡はない」と言及し、検疫と公安の結論が一致していることを強調した。

 記者会見したのは、中国国家品質監督検査検疫総局(以下、検疫総局)のナンバー2、魏伝忠・副局長である。検疫総局は中国国務院の直属機関であり、そのトップは日本の国務大臣に相当する。今回の記者会見は、12日に検疫総局のトップ、李長江・局長が、ギョーザを製造していた天洋食品(河北省)を視察し、生産管理に問題がなかったことを確認したことを受けて行われた。

中国の検疫当局は、ギョーザ事件にどう取り組んできたか
 「官僚政治」の弊害を肌身に感じてきた日本人は、毒入りギョーザ事件に対する中国政府の対応が、官僚政治の悪弊と感じているはずだ。責任の所在を明確にせず、自分の責任を回避するために徹底的な調査をせず、権力で事件全体をねじ伏せようとする。似たような構図で起こった事件は、日本にも多くある。薬害事件はその典型だろう。

 日本で中毒患者が出たことが明らかになったのは1月30日で、検疫総局はその日のうちに「ただちに調査を行う」と発表した。翌日には、検疫総局の王大寧・輸出入食品安全局長が記者会見し、「(保存していた)ギョーザのサンプルと原材料から(有機リン系農薬)メタミドホスは検出されなかった」と述べた

 2月2日には、河北省輸出入検査検疫局の程方・局長が、「工場職員30人を調査したが不審な点はなかった」「メタミドホスが使用されていたことはあり得ない」と述べ、3日には再度の立ち入り調査を行い、6日には検疫総局・輸出入安全局の李春風・副局長が、「生産過程で混入する可能性は低い」「今回の事案は構造的な問題ではなく、個別の事案」と発表した。そして12日には検疫総局のトップが視察し、13日の「(農薬が)人為的に混入された可能性はほとんどない」とする記者会見に至る。

 事件発覚の翌日から現在に至るまで、中国の検疫当局の姿勢は「生産管理に問題はなかった」と一貫している。なにを根拠に「問題なし」なのか。報道で伝えられた調査の経緯を調べると、化学的調査を行ったのは、工場に残っていたサンプルについてだけである。あとは、工場の薬品保管記録を調査してメタミドホスを使用した形跡がないとし、工場の内部を行政官が視察して管理体制に問題はなかったとしただけである。「生産管理に問題はなかった」という結論が最初から用意されていた、とわたしは思っている。

 日本なら、と考える。工場は即時閉鎖、製造機器や工場の床や壁などのあらゆる部分を拭き取って、農薬の高精度検出を行うだろう。工場内で混入したことが疑われるなら、従業員が直接・間接に農薬に接触している可能性もあり、従業員の健康管理のための血液検査も行うだろう。

 検疫総局は、そのような「客観的」調査を行わずに、記録の確認と工場の視察だけで、「問題なし」と結論づけたのだ。大臣級の高官が視察して「問題なし」と言ってしまった現在となっては、結論は覆せないだろう。「中日友好の発展を望まない少数の過激分子が極端な手段に出たのかもしれない」と6日に発言した魏伝忠・副局長が、1週間後には「人為的混入の可能性はほとんどない」と発表している。官僚機構とはそういうものだ、と日本人はよく知っている。

「安全」の意味がちがう
 工場での生産プロセスに問題があり、偶然に農薬が混入した、と考えている日本人は少ないだろう。農薬の濃度を考えれば、誰かが故意に農薬を混入したのだと考えるのが当然だ。そして、中国に求めているのは、その「誰か」を特定することにほかならない。「誰か」の特定には時間がかかるとしても、「いつ」「どこで」「どうやって」のいずれかは明らかにしてくれるだろうと期待しているはずだ。

 にもかかわらず、検疫総局は「工場はきちんとしている」と繰り返している。視点が違うのだ。日本人が求めているのは「きちんとした工場なのにどうして農薬が入ったのか」を明らかにすることだ。

 検疫総局は、一日も早く生産・輸出を再開することだけを目指しているように見える。2002年、中国産の冷凍ほうれん草から、農薬クロルピリホスが検出されたことがある。厚生労働省は、中国政府に検査データの開示を求めたが、結局、データは開示されなかった。中国政府は「冷凍ほうれんそう加工企業が直接管理し、適切な農薬使用・管理が実施されているほ場から収穫されたほうれんそうだけを原料とする」という新たな基準を制定しただけである。

 つまり、輸出食品に問題があったとき、「今後は注意するから文句を言うな」というのが、中国の基本姿勢だ。

 だが今回の冷凍ギョーザでは、重症の有機リン中毒患者を出している。「今までのことはさておき」というのは許されない。起きてしまった事件を検証し、その結果を基に再発防止策を立てなければ、次は死亡事件に繋がると日本人の誰もが予感している。その危機感を、中国政府は理解しているのか。理解していないとすれば、食品の「安全」に対する考え方が、中国と日本で全く違うといわざるを得ない。そんな国からは食品を輸入できない。

あとは公安当局の捜査に期待するしかない
 「現時点では故意を疑わせる形跡はない」と言うのは、その形跡を見つけ出せない調査や捜査に問題があるのだ。検疫総局のトップが「問題なし」と言ってしまったのならば、もはや公安当局の捜査に期待するしか道はない。公安当局は、まだ捜査経過を公表していないため、捜査の詳細は明らかではないが、従業員の勤務表を調査しているとの報道もあり、内部犯行の可能性を捨てていないのだろう。

 事件から2週間が経った。意識不明の重体だった女の子も、快方に向かっているらしい。命を落とさずに、本当によかったと思っている。だが、納得できる捜査結果が出なければ事件は終わらない。いや、終わらせてはいけない。【了】

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 小林 亮一

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