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「ジクロルボス」混入でマスコミは大混乱=毒入りギョウザ事件

2008年02月06日07時05分 / 提供:PJ

pj
「ジクロルボス」混入でマスコミは大混乱=毒入りギョウザ事件
メタミドホスとジクロルボス。どちらも有機リン(P)だが、性質は異なる。
5日、昨年11月に福島県内で「異臭がする」との苦情を受けて回収した冷凍ギョーザから、日本では劇薬に指定されている殺虫剤「ジクロルボス」が検出されました。この冷凍ギョーザは、パッケージからトルエンやキシレン、ベンゼンなどの有機溶剤が検出されていましたが、一連の毒入りギョーザ事件を受けてあらためて中身を検査した結果、ギョーザの皮から110ppmの濃度のジクロルボスが検出されたと伝えられています。

 ジクロルボスは、日本でも殺虫剤として使われています。家庭では、黄色い樹脂に染みこませた製品が使われています。長期間ゆっくりと揮発するので、数カ月間使える殺虫剤として、使われている方も多いと思います。劇物のため、薬局にハンコを持って行って、住所と名前を書いて買います。これらの製品は、まれなケースですが、閉め切った部屋で使うと人体に害がある場合があり、厚生労働省は平成16年に使用法について注意を喚起しました。殺虫剤ですから、大量に人体に入ると害がある、ということです。当たり前のことだと思います。

 化学辞典(東京化学同人)によれば、ジクロルボス(DDVP)の沸点は120℃で、水によく溶けます(1ccに1グラム)。水に溶かすと沸点は高くなりますが、ギョーザの皮にジクロルボスが付いていても、食べる前にはフライパンで焼くのですから、ほとんどは揮発してしまうでしょう。調理すればほとんどが揮発する、という点は、メタミドホスとの大きな違いです。もしかすると、メタミドホスのように、多数の冷凍ギョーザに入れられていた可能性もあるわけですが、健康被害が報告されていないのは、焼けば飛んでしまう性質のためかもしれません。

 さて、ジクロルボスが検出されたことを受けて、マスコミは大騒ぎです。ただ、どのニュースでも「日本でも使われている」ということを強調しすぎて、今回の毒入りギョーザ事件の核心がぼやけてしまいそうな気がします。

 わたしは、5日のPJニュース「使われたのは農薬の原液?=毒入りギョーザ事件」に書いたとおり、メタミドホスの混入は、農薬の原液によるものだと考えています。中国でその農薬が簡単に手に入る状況だったことを考えると、日本国内で混入した可能性よりは、中国国内で混入した可能性のほうがはるかに高いと思っています。この重大な疑惑がありながら、「日本でも使われている農薬が入っていた」ことを強調して報道することは、問題を曖昧(あいまい)にします。

 ジクロルボスが入っていたことを軽視しているのではありません。日本でも使われている劇薬のジクロルボスが食品に入っていたことは大問題で、日本国内で入れられた可能性はないか、劇薬の販売は適正に行われていたのか、十分に捜査する必要があります。十分に捜査した上で、もし日本で入れられた可能性が低い、という結果になれば、中国側に厳正な捜査を要求することになるでしょう。

 中国の食品管理はどうなっているのか、日本には輸入国として毅然(きぜん)と問いただす責任があります。パッケージについていた、トルエン、キシレン、ベンゼンについても同じです。ですが、同じ工場で作られたギョーザの事件だからといって、一つの事件かどうかは、まだわかりません。

 メタミドホスの場合は、深刻な健康被害が実際に多数報告されていて、しかも、日本で混入された可能性が低いのです。ジクロルボスとは明らかに状況が違います。メタミドホスを「誰がどうやって入れたのか」を中国側に追求してもいい段階にあるのです。「ジクロルボスが日本で入れられた可能性があるから、メタミドホスも日本で入れられたのかも」という印象を与えるのは、筋違いのミスリードです。マスコミが情報を攪乱(かくらん)しているようにすら見えます。この期に及んで中国に気を遣っているのではないかと邪推してしまいます。

 食品の薬物汚染は、食品の輸出大国である中国と、輸入大国の日本のどちらにとっても大問題です。政治問題化すれば、それぞれの国の威信を背負うことになって、結局は泥沼に陥(おちい)ります。政治問題にしないためには、明らかになった事実を、冷静に客観的に考えることが必要です。ジクロルボスの捜査を早急に開始し、メタミドホスの真相を究明する、という二段構えにしないと、全部ごちゃごちゃになってしまいます。

 最後に、マスコミ報道にもう一点だけ注文を付けます。ジクロルボス110ppmというのは、わかるようでわからない表現です。ppmは濃度の表記で、何グラム入っていたのかは不明です。例えば、1個20グラムのギョーザが20個入った商品の場合、パッケージの中のギョーザ全部を検査して110ppmならば0.044グラム、1個のギョーザを検査しただけならば2.2ミリグラム(0.0022グラム)です。注射器で入れたのなら、いくつかのギョーザだけの濃度が高いでしょうし、燻蒸(くんじょう)などで混入したのなら、全体に濃度が高いでしょう。そういう判断材料を市民に伝えるためにも、濃度表記よりも具体的な量のほうが適切だと思います。もっとも、そういう判断材料は市民に伝える必要がない、と考えているのなら話は別ですが。【了】

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 小林 亮一

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