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「お約束」の偽装/松尾 順

いまさら言うまでもなく、「偽装」は良くないこと。
やってはいけないことです。


でも、提供する側受ける側の両者が了解済みの

「お約束」

の偽装ってありますよね。

その一番卑近な例は、駅前の立ち食いそば店で出される

「えび天ぷら」

でしょう。

私は、若いころ福岡から東京に出てきて初めて、
駅の立ち食いそば屋の

「えび天うどん」

を食べた時、うどんの上に鎮座しているえび天の衣の大きさと、
中に入っているえびの身の「小指並の小ささ」の落差に愕然と
したものです。(オオゲサですけど)


これじゃあ、「えび天」というより、

「シュリンプ天」

と呼んだほうが正確だよなあ!

当時はそう思いました。

まあ、今でも立ち食い店に行くたびに、
あんな小さいエビの身に、あれだけ巨大な衣を着せることが
できる職人芸には感心していますが。


でも、別に文句を言ったりはしません。

あの「えび天」に文句を言う人は、
外国人旅行者とかでもない限りたぶんいませんよね。

実質的な「偽装」とわかっていて受け入れています。


そもそもエビ1尾200円そこらの値段で、
まともなエビが食べられるはずもありません。

それでも、食べる側の心情としては、
トッピングの天ぷらは丼からはみ出すくらいの大きさがうれしい。
たとえ、中身は小指大でも・・・

バカ正直に、エビの真実の大きさ通りの天ぷらを揚げたら、
見かけが貧相となってしまい、注文する人が激減しますよね。

こうした、消費者心理を踏まえた上で、
「お約束」のエビ天偽装は続けられているということでしょう。


まあ、ほかにも贈答用のお菓子箱などの

「上げ底」

も、両者が握り合った「偽装」ですね。

実質よりも、見栄えを優先することの必要性を
贈り手、貰い手の双方が納得しています。


そういえば、古典落語の名作のひとつ、

「長屋の花見」

は、貧乏長屋の連中が花見に出かけたはいいが、
先立つものはないので、番茶を薄めたものを「酒」、

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