国語力アップに辞典の効用 広辞苑、10年ぶりに改訂
2008年01月10日11時01分 / 提供:J-CASTニュース
岩波書店の「広辞苑第六版」が2008年1月11日に発売される。広辞苑は1955年からの累計で1100万部を誇る、ベストセラー辞典。第六版は、1998年以来10年ぶりの改訂になる。この間、インターネットで無料検索できる「ネット辞書」に押され、時事用語辞典は「紙」からの撤退が目立った。そんな中、「広辞苑」はあくまで「紙」にこだわり、「紙で引く」ことの効用を説いている。
辞書を引く習慣づけで国語力アップ
2007年4月に文部科学省が全国の小学6年生と中学3年生の計221万人を対象に行った全国学力テスト。11月にその結果が発表され、いまの子どもは「応用力が弱い」「記述式が弱い」ことが明らかになった。
日本語力の低下を示すデータはまだある。独立行政法人のメディア教育開発センターが大学生の基礎学力を測定するためのプレースメントテストを実施した結果、私大生の2割、短大生の3人にひとりは日本語基礎力が中学生レベルだったことがわかり、「いまの学生たちの日本語力は戦後最悪です」(センターの小野博教授)と、関係者を嘆かせた。
国語の時間割が減ったなど、ゆとり教育の弊害を指摘する声は少なくないが、とにかくこれからが肝心。「学ぶ力」をつけさせる教育が始まった。06年4〜5月に大阪府教育委員会が行った「学力実態調査」では、「家に辞典がある子どもは学力が高い」という因果関係もわかった。06年に開校した京都市の立命館小学校は深谷圭助教頭が提唱した「辞書引き学習法」を取り入れ、小学校1年生から辞書に慣れ親しむ取り組みを進めている。
この辞書引き学習は、日常生活の中で自然と「辞書を引く」行為を動機付けていく活動。辞書を使って、知っている、知らないに関わらず、言葉を調べる習慣をつけることで、自発的に勉強に取り組む姿勢を育むのが狙い。辞書に詰まっているたくさんの言葉を「読む」ように引くことができれば、言葉を知り、漢字を知り、国語力が備わってくるという。深谷教頭は「辞書は語彙力だけでなく、自ら学ぶ力がつく。言葉に興味を持ち始める小1のときが始め時」としている。
岩波書店が、東京と大阪の小学校で延べ5年間以上国語を教えている先生を対象にした「児童の国語力と辞書に関する調査」によると、「辞書を引くことの、子どもの国語力向上への効果」について、「非常に効果がある」と答えた人は48.0%。「まあ、効果がある」は47.0%と、「効果がある」という回答が95.0%を占めた。この調査でも国語力の低下の原因として「本を読まなくなった」ことをあげた人は多かったが、このような反省もあって、全国の小学校で「朝の読書運動」や「読み聞かせ」教育が広がってきている。読書するように辞書を引く、辞書を手にとる、わからないことはすぐに確かめる。そうした習慣を身につけることが子どもたちの「本読み」の楽しみを深めることにもつながる。
「紙」の効用
10年前に売上げが年間約1200万冊といわれた紙の辞書だが、その後2003年頃で800万冊、06年には700万冊を下回ったと推測されている。それに代わって売上げを伸ばしてきたのが電子辞書。富士キメラ総研の調べでは、電子辞書市場が本格的に拡大した2000年、01年には330万台となったがこれがピークとも目され、2010年くらいまでを予測しても300万台前後で推移するとみられている。
電子辞書というと、手のひらサイズの専用端末が一般的。搭載している辞書も国語、英和・和英は当たり前、新たに中国語などの第二外国語も加わり、さらには受験学習タイプや旅行タイプなどの目的別とコンテンツの充実は目覚しい。広辞苑はここにも搭載されている。
また、パソコンや携帯電話を利用してインターネット上から「引ける」オンライン型も普及してきた。必要な、わからない言葉を、必要なときに、簡単に引ける便利さがそこにはある。
こうした中で「紙」の辞書については、読解力や語彙力を補うための「辞書引き学習」などが広がりをみせ、そのよさを指摘する声が高まっている。先の岩波書店の調査では、「紙の辞書」を引くことの効果として、「ほかの言葉も目に入ってくるので知識が広がる」「集中力や探求心が身につく」などの効用をあげている。
「紙」のよさは、「残る」ことだ。気になる言葉を引いて、赤鉛筆で印を打つ。紙辞書世代にはそんな経験があるだろう。調べた言葉を2度、3度引くこともあって、ひとつの言葉にたくさんの意味があることを覚えていく。使い慣れてくると手になじんで、おおよその見当を付けて調べたいページをパッと開けることもできる。中学に入学するとき、両親から国語辞典をプレゼントしてもらう、なんてこともあった。使えば使うほど味わいが増して、学生時代の思い出までもが詰まっていくかのようで、当時の紙の辞書をいまも手元に置いている人は少なくないはず。こうしたことは調べたら終わってしまう電子辞書やネット辞書にはないことだ。
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