【門倉貴史の眼光紙背】第16回:「できちゃった婚」増加の死角
2008年01月16日11時00分 / 提供:眼光紙背
若者を中心に、妊娠の事実が判明してから結婚するいわゆる「できちゃった婚」が増加傾向にある。
「できちゃった婚」で成立したカップルは毎年どれぐらいの数に上るのか。正確な数字は把握できないが、厚生労働省が人口動態統計をもとに集計した『05年度出生に関する統計』によって、結婚の期間が妊娠の期間よりも短い第一子出生の割合をみると、年々上昇傾向にあることが分かる。1980年の10.6%から2004年には26.7%へと上昇した。実数でみると、少子化の進展により全体の出生数が減少するなかにあっても、結婚の期間が妊娠の期間よりも短い第一子出生数は、1980年の8万3000人から2004年には13万9000人へと増加した。こうした事実は、社会のなかで「できちゃった婚」が広く浸透してきたことを示唆している。
日本で「できちゃった婚」が増えるようになった背景には、男女間で、結婚をする前から頻繁に性交渉を持つケースが一般化したことがある。また、社会的に影響力のある有名スポーツ選手や有名芸能人の間で「できちゃった婚」をする事例が目立ち、結婚前の妊娠を特殊なケースと考える風潮が薄れてきたことも、「できちゃった婚」の増加に影響していると考えられる。
ところで、「できちゃった婚」は、比較的若いカップルの間に多いという特徴がある。たとえば、先に紹介した厚生労働省の統計によって、母親の年齢別に、結婚の期間が妊娠の期間よりも短い第一子出生の割合をみると(04年)、15〜19歳では81.7%、20〜24歳では58.3%となっており、平均的な割合(=26.7%)に比べて圧倒的に高い数字となっている。
「できちゃった婚」が良いか悪いかという倫理的な価値判断は別として、一般的な傾向として若いカップルは収入が少ないため、生活基盤がしっかりしていない状態で子供が生まれてしまうことになる。その意味で、「できちゃった婚」をした若いカップルは、ある程度生活基盤が固まってから計画的に子供をつくるカップルに比べて、万が一のリスクに備えることが難しいと言わざるをえない。
実際、社会経験が浅く、雇用・収入が不安定な若い男女が勢いだけで「できちゃった婚」をしたものの、子供の養育費の捻出などで家計が火の車になっている家庭は少なくない。また、計画性のない妊娠でやむを得ず「できちゃった婚」をするカップルは、そうでないカップルと比べて、結婚後に収入の問題などで夫婦仲が悪化して離婚する確率も高まる。これは、妊娠してから急いで結婚するので、お互いに相手のことをよく知らないままに共同生活を開始することになるためだ。離婚して「シングル・マザー」となっても、10代をはじめ若くして母親になった女性は仕事や家事、育児など全般的な生活力が十分ではない。そのため、収入が途絶えて生活が困窮化し、最終的に生活保護を受けなくてはならない状況に追い込まれている母親もいる。
このような家庭では、自分の子供に十分な教育費をかけることができなくなるため、子供が大人になったときに(高収入の)就業の機会が狭められることになる。「ワーキングプア」の生活が親から子供へと受け継がれてしまうことにもなりかねないのだ。
「できちゃった婚」の増加は、少子化の問題が深刻化している日本にとっては、子供が増えることになるのだから望ましい現象、祝福すべき現象ととらえる人は多い。ブライダル産業も「できちゃった婚」を「おめでた婚」などと表現して、その増加をビジネス・チャンスとしてとらえているようだ。
ただ、見落としやすい視点ではあるが、「できちゃった婚」の増加によって「ワーキングプア」や所得格差の問題が、より一層深刻化するリスクがあることには十分な注意が必要だろう。
プロフィール:
門倉貴史(かどくら・たかし) 1971年生まれ。エコノミスト。BRICs経済研究所代表。専門は、日米経済、アジア経済、BRICs経済、地下経済と多岐にわたる。オフィシャルサイト:門倉貴史のBRICs経済研究所
眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧
「できちゃった婚」で成立したカップルは毎年どれぐらいの数に上るのか。正確な数字は把握できないが、厚生労働省が人口動態統計をもとに集計した『05年度出生に関する統計』によって、結婚の期間が妊娠の期間よりも短い第一子出生の割合をみると、年々上昇傾向にあることが分かる。1980年の10.6%から2004年には26.7%へと上昇した。実数でみると、少子化の進展により全体の出生数が減少するなかにあっても、結婚の期間が妊娠の期間よりも短い第一子出生数は、1980年の8万3000人から2004年には13万9000人へと増加した。こうした事実は、社会のなかで「できちゃった婚」が広く浸透してきたことを示唆している。
日本で「できちゃった婚」が増えるようになった背景には、男女間で、結婚をする前から頻繁に性交渉を持つケースが一般化したことがある。また、社会的に影響力のある有名スポーツ選手や有名芸能人の間で「できちゃった婚」をする事例が目立ち、結婚前の妊娠を特殊なケースと考える風潮が薄れてきたことも、「できちゃった婚」の増加に影響していると考えられる。
ところで、「できちゃった婚」は、比較的若いカップルの間に多いという特徴がある。たとえば、先に紹介した厚生労働省の統計によって、母親の年齢別に、結婚の期間が妊娠の期間よりも短い第一子出生の割合をみると(04年)、15〜19歳では81.7%、20〜24歳では58.3%となっており、平均的な割合(=26.7%)に比べて圧倒的に高い数字となっている。
「できちゃった婚」が良いか悪いかという倫理的な価値判断は別として、一般的な傾向として若いカップルは収入が少ないため、生活基盤がしっかりしていない状態で子供が生まれてしまうことになる。その意味で、「できちゃった婚」をした若いカップルは、ある程度生活基盤が固まってから計画的に子供をつくるカップルに比べて、万が一のリスクに備えることが難しいと言わざるをえない。
実際、社会経験が浅く、雇用・収入が不安定な若い男女が勢いだけで「できちゃった婚」をしたものの、子供の養育費の捻出などで家計が火の車になっている家庭は少なくない。また、計画性のない妊娠でやむを得ず「できちゃった婚」をするカップルは、そうでないカップルと比べて、結婚後に収入の問題などで夫婦仲が悪化して離婚する確率も高まる。これは、妊娠してから急いで結婚するので、お互いに相手のことをよく知らないままに共同生活を開始することになるためだ。離婚して「シングル・マザー」となっても、10代をはじめ若くして母親になった女性は仕事や家事、育児など全般的な生活力が十分ではない。そのため、収入が途絶えて生活が困窮化し、最終的に生活保護を受けなくてはならない状況に追い込まれている母親もいる。
このような家庭では、自分の子供に十分な教育費をかけることができなくなるため、子供が大人になったときに(高収入の)就業の機会が狭められることになる。「ワーキングプア」の生活が親から子供へと受け継がれてしまうことにもなりかねないのだ。
「できちゃった婚」の増加は、少子化の問題が深刻化している日本にとっては、子供が増えることになるのだから望ましい現象、祝福すべき現象ととらえる人は多い。ブライダル産業も「できちゃった婚」を「おめでた婚」などと表現して、その増加をビジネス・チャンスとしてとらえているようだ。
ただ、見落としやすい視点ではあるが、「できちゃった婚」の増加によって「ワーキングプア」や所得格差の問題が、より一層深刻化するリスクがあることには十分な注意が必要だろう。
プロフィール:
門倉貴史(かどくら・たかし) 1971年生まれ。エコノミスト。BRICs経済研究所代表。専門は、日米経済、アジア経済、BRICs経済、地下経済と多岐にわたる。オフィシャルサイト:門倉貴史のBRICs経済研究所
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