前回の記事では火災が起きた詳細をお伝えしましたが、本当に大変なのはその後です。というわけで、火災が起きたらその後、一体何が起きるのか、何をするべきなのかをまとめてみようと思います。一生の内で必ず何度か遭遇するお葬式とは違い、保険会社の人によると「火事になる確率は一生に一度ではなく、300年に一度の確率」とのことで、滅多に遭遇することがない、あるいは遭遇したくない種類のイベントなので、知っているようで知らないことが多いはずです。

詳細は以下から。
■消火中
火事が起きて119に電話、消防車が来て消火中であってもいろいろな作業が待っています。まず消防隊員に炎上している建物に普段は誰がいるかを報告します。同一の住居に住んでいる全員を消火中は外に退避させるためです。

次にその建物の責任者を特定します。アパートやマンションであれば家主ですし、それ以外であればその住居の建築主、今回であれば会社の建物なので代表取締役になります。そしてこの責任者と出火原因になった当事者の2名が今後のいろいろな手続きに当たることになるわけです。

1.消防記録のための事情説明
何が原因で火事が起きたのかを消防署の人に説明します。その際には名前、年齢、生年月日、住所を聞かれます。また、今回は会社なので何の仕事をしているのかも大ざっぱですが答えることになります。あとは何階建てなのか、どの部屋から出火したのかなどを答えます。

2.警察に説明
次に警察の人が来るのでこちらも同じように説明します。消防署の方は出火原因などの消防記録であるのに対し、警察の方は事件なのか事故なのかという観点で調査することになります。今回は出火原因が明白だったのですが、それでも一応事情説明は必要です。

3.家の壁や天井破壊の許諾
消防活動に際しては部屋の壁や天井の中が熱でやられてさらに燃える場合があるため、破壊する必要が出てくるケースがありますので、その際には事前に呼ばれて事情説明を受けます。壊す前に熱を見るメーターみたいなモニターを使って、何度になっていて危険だから破壊します、というような感じになります。また、煙が部屋から抜けない場合も破壊することがあるそうです。

■消火作業終了直後
消火があらかた終わってもまだ終わりではありません、むしろここからが始まりでした。

4.ガス会社の人からの説明
火事が起きると必ずガス会社と電気会社が消防から呼ばれます。ガス会社の人はガスの元栓のチェックなどを行います。今回は台所のガスコックが熱で変形するという事態になり、台所自体を修復するまでまともに使用できない状態なので、閉栓処理をその場でお願いしておきました。

5.電気会社からの説明
消火活動のために水をかけまくるため、電気が漏電したり、あるいは絶縁状態が悪くなるため、ブレーカーも落とされます。これについては消火活動終了後、水が引いて安全になったら元に戻りますが、後ほど電気屋さんを自前で呼んで「電気設備調査結果のお知らせ」のハガキを書いてもらうことになります。つまり、火災時の放水により電灯回路がおかしいかもしれないので調査したよ、その結果大丈夫だったよ、という報告です。

6.「り災状況申告書」を消防署から受け取る
火災保険の手続きをするために必要な「り災証明書」を出してもらうためのもので、消防法第34条に基づき提出を求められるものです。受け取ってから5日以内に出すことになります。






■保険の手続き
今回は自社ビルなのでほかにテナントが入っているわけでもなく、家主にボコボコにされるというようなこともなかったわけですが、だからといって焼けた後を放置しておく訳にはいきません。ちゃんと修復し、状態復帰させてまた使えるようにしなくてはいけません。今回は300年に1回しか遭う確率がないにもかかわらず日本国民の6割が加入していると言われている火災保険を使うことにしました。こういうときのための保険とはいえ、ほかの保険と違ってわからないことがいっぱいでした。

7.現場写真の撮影
消防署、警察、電気会社、ガス会社が去ったあとからが本番です。まずは現場の写真を可能な限り多く撮影します。これは後の保険金請求の際に役立つことがありますので、あらゆるものを細かく撮影しておきましょう。前述の「り災状況申告書」を書く際にも役立つので、多く撮影すればするほど便利です。火事が起きた直後では平静な精神状態を保てない場合が多々あるので、その際には信頼できる身近な人に撮影を頼んだ方が無難ですし、身近な人は逆に率先して記録しておいてあげてください。

8.保険会社に連絡
火事のあとの現場は痛々しいのですぐに掃除したくなりますが、保険会社が来て状況をチェックするまではそのままにしておきましょう。まずは保険会社に電話です。GIGAZINEの場合は損保ジャパンを利用していました。電話する際には以下のページに書いてあるものが必要になるので用意しておきましょう。

Yahoo!保険 - 火災保険を学ぼう“請求手続きの流れ”

9.鑑定人が来る
さて、火災保険においてはできるだけ多くの保険代金が必要になるわけですが、言うまでもなく保険会社は支払いを渋ります。そこで、中立的な視点で鑑定するプロ、「鑑定人」の出番となるわけです。

火事等の保険金手続きと鑑定人
保険契約者側にとっては少しでもたくさんの保険金が欲しいですし、損害保険会社としては支払う保険金はできるだけセーブしたいところ。そうした保険金支払いの現場にあって、両者の利害からも離れた中立的な視点から鑑定するプロである鑑定人の存在は、ある意味安心して査定を任せられるのではないでしょうか。

今回は若葉総合鑑定というところが来ることになりました。

で、2007年10月7日の13時頃に鑑定人到着。名刺をもらい、現場へ案内します。電気は止めているので照明がないわけですが、鑑定人は暗くてよくわからない場合に備えてちゃんと懐中電灯を持ってきていました、さすがです。この際、建物の間取りを記した図面があればその図面を提示することになるわけですが、今回は図面がなかったのでその場でメジャーを使って計測し、簡易的な図面を作成。また、今回は日曜日なので保険会社にオンラインで問い合わせできないため、持っていた保険証書を提示、何の保険に入っているか、保険の範疇は何かを見ることに。

その結果、保険の対象は「建物」と「商品」であることが判明。今回は商品には何も被害はなかったので「建物」のみ。会社所有の什器や製品などは対象に入っていないのでサヨウナラ、残念。次回からはちゃんと保険をかけておくことを決意。いわゆる家財保険などがそれに該当します。

Yahoo!保険 - 火災保険を学ぼう“家財保険”

ちなみに、今回の火災保険の場合、「建物」とは鑑定人の説明によれば、「新築時に最初から建物自体にねじ止めされているような種類のものを指す」とのこと。例えば、台所の上に最初からある棚だとか、天井の照明、据え付けのエアコン、アンテナ線、風呂場などはすべて建物の範疇ですが、ガスコンロや洗濯機、炊飯器などは入りません。

以降の手順としては、土建屋さんや電気屋さんに電話して、現状復帰のための見積もりを取ってもらうことになります。それを鑑定人の事務所へFAXすることに。ただし、今回の場合、台所は今後の「火の用心」を考えて取り払うなどする場合には、その分が保険の支払金に加算されることも。また、合い見積もりを取って一番高くなるケースを出されても、保険会社の方でも別途見積もりを算定するので、それとあまりにもかけ離れる場合には別途協議が必要になって時間がかかるそうです。

また、鑑定人によると、保険会社が「従業員による過失なので従業員が賠償すべき」と言ってくる可能性も場合によっては考えられるそうですが、今回の場合は少額なのでそういうことにはならないとのこと。全焼などの場合にはこのあたりでもめることもあるそうです。

加えて、保険額が数十万円で済む場合には簡易な手続きのみになりますが、数百万円を超えてくる場合にはその建物の所有者がダレなのかを証明するために登記簿の提出を求められることがあるそうです。その場合、登記簿に記載されている者が保険をかけるのが通常なので、法人名義で保険をかけているのに登記簿では個人だった場合、その変更手続きが別途必要になるので余計に時間がかかるとのこと。なんだかいろいろと面倒そうな手順も発生しそうですが、最終的には何事もなく平穏無事にすぎました。

なお、実際にはさらに保険会社から確認の連絡が来るそうですが、1回目の電話でこちらが不在だったため、「またかけ直します」ということでしたが、結局これ以降、電話はかかってきませんでした。

10.見積もりを出してもらう
保険会社に出す現状復帰のための見積書が必要になるので、リフォーム業者を呼んで見積もりを作ってもらいましょう。実際には来てもらってから現場を見てもらい、それから図面を引いてもらったりという作業になります。普通のリフォーム時とあまり変わりませんが、消火作業時に天井や壁に穴を開けた場合にはその個所も保険の対象となりますので、ちゃんと指示しておきましょう。また、見た目は特に傷んでいなくても、急激な高熱と消火によって水をかけられて急激に冷却されることで建築物の素材自体の強度が大幅に下がるので、その点も調べてもらいましょう。見た目は大丈夫だが実はかなり危ない状態という場合もあるそうです。今回の場合、10月7日に頼んでからいろいろとあれやこれやとしていき、見積もりが最終的に完成したのは10月22日でした。

11.「り災証明書」を出してもらう
さて、保険を出してもらうためにはもう一つ、「り災証明書」というものが必要になります。これは消火直後に消防署からもらえる「り災状況申告書」に必要事項を記入の上、5日以内に提出すればOK。記入事項は多岐にわたりますが、わからない部分は空欄でかまわないそうです。発行の手数料は1枚あたり100円でした。

12.保険金請求書に記入
10月29日、「保険金請求書」が郵送されてきたので記入し、返送します。このあたりの作業は迅速に行いましょう。



13.保険会社から振込
というわけで最終的に保険代金が振り込まれたのは11月13日でした。なお、今回はリフォーム業者に一回も連絡がなかったそうですが、通常は「こういう感じの見積もりであればこういう感じの支払いになるがよろしいか?」ということで振込前に確認が最低1回程度はあるとのこと。確認もなしに突然振り込んで来るというケースは珍しいそうです。どうやら損保ジャパンはそういう主義らしい。

というわけで、それからあともいろいろとあって、実は25日から現状復帰作業(いわゆるリフォームと同じ)を開始しています。この件についてはまた来年の2月あたりに完成予定なので、その頃に改めてレポート予定です。

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