2008年1月にTVアニメが放映される『狼と香辛料』の原作本(ラノベ)。不作と評判な来期の新作アニメの中では一応期待されてます。

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日本文化を二カ国語(英語&日本語)で紹介する『Begin Japonology』という番組があります。これはNHKの海外向け番組で、出演者の会話は全員英語で放映されるのですが、日本語も副音声(日本語のアテレコ)で流れるため英語が苦手な人でも楽しめるという番組なのです。外国人向けに紹介される日本文化が、かなり面白いので日本人にもオススメだったりします。そんな番組で先日、日本の漫画(MANGA)が取り上げられていたのであります。そういうわけで今回は、NHKが海外に向けてMANGAをどのように紹介したかを書いてみたいと思います。
※番組内で紹介された作品名は基本的に「英語表記」を主とし、補足として「日本語表記」を書きます。また、コメントやナレーション等は全て副音声の日本語を元にしています。


●『Begin Japanology』(NHK総合)
放送日時:2007年12月2日(日)・深夜1時55分〜2時25分
放送局:NHK総合
キャスター:ピーター・バラカン、光岡ディオン
ゲスト:伊東順二

■日本漫画のルーツ
番組冒頭、フランスの漫画専門店で日本の漫画が売られている映像が流れます。店内には『Fruits Basket(フルーツバスケット)』『FULL METAL PANIC!(フルメタル・パニック!)』『HUNTER×HUNTER』『VIDEO GIRL AI(電影少女)』などの単行本が置かれているのを確認。日本の漫画はフランス国内だけでも1千万部以上が発売されているそうです。

いきなり画面は『鳥獣人物戯画』に描かれたウサギやカエルの絵に切り替わり、「日本の漫画の歴史は古く、今からおよそ800年前に描かれた絵巻物にそのルーツが見られます」というナレーションで、一気に歴史番組的な雰囲気になっていきます。
海外でも高い人気を誇る『フルーツバスケット』。2001年に放映されたアニメも良作なので、未見のファンは必見です。


今回のゲストは、美術評論家&富山大学教授の伊東順二さん。キャスターのバラカンさんが、日本の漫画の世界的な人気の原因について質問すると、伊藤教授は「まず、面白いですよね。様々なテーマを扱いますし、余白をうまく使うなど、技術的にも優れています。登場人物もユニークで、他の国の漫画とはかなり違います」と教授らしいコメント。

●最初の日本漫画
この後、日本の絵画の歴史を辿るVTRが流れるのですが、ここだけ見るとNHK教育の美術番組にしか見えません。紹介された作品名は以下の通りです。

・『Choju Jinbutsu Giga(鳥獣人物戯画)』
※およそ800年前に描かれたといわれる絵巻物。漫画の原典としても知られる。国宝。

・『Shigisan Engi Emaki(信貴山縁起絵巻)』
※12世紀の作品と言われる絵巻物。大きな鉢が空を飛ぶ荒唐無稽な物語。国宝。

・『Illustrated Stories on Courtier Ban Dainagon(伴大納言絵巻)』
※これも12世紀に描かれたとされる絵巻物。国宝。

・『Uesugi-bon Rakuchurakugaizu Byobu(上杉本洛中洛外図屏風)』
※織田信長が上杉謙信に贈ったと伝わる屏風。屏風絵には当時の京都の様子が描かれている。国宝。

漫画のルーツが国宝の4連コンボで語られていきます。この美術品の中に現代の漫画に通ずる技法が見られるという切り口はNHKならではといった趣がします。伊藤教授は、この国宝に描かれた絵から読み取れる持論を展開します。

伊藤教授:「動きをとらえる表現力の高さは驚くべきレベルに達していますね。なぜ動きをとら
えようとしたか。その理由は仏教の教えにあると思います」

バラカン:「どういうことですか?」

伊藤教授:「万物は流転するというのが仏教の教えです。動き続けるものにこそ真実があるのです。時の流れを感じる中で、万物が流転するという実感が湧くのです。絵巻物は、こういった仏教の教えを人々に伝える、あるいは人々に感じさせるためのものだったのではないでしょうか。絵というのは、誰が見ても容易に理解することができます。当時、読み書きができる人は多くはありませんでした。ですから、絵巻物が仏教の思想を伝えるために効果的だったのです」

どうやら日本の漫画のルーツは、仏教の教えを広めるための手段という側面も持ち合わせていたようです。普段ツンデレとか腐女子とか絶対領域とかにアンテナを合わせているアキバ系には思いもよらぬ話です(煩悩大過ぎ)。