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不人気の最高峰・御正体山で魅力探し。冬山登山で。=山梨(下)

不人気の最高峰・御正体山で魅力探し。冬山登山で。=山梨(下)
雪峰の富士山は日本人の心をとらえる。(撮影:穂高健一、12月6日) 写真一覧(5件)
【PJ 2007年12月10日】− (上)からのつづき。中央線沿線の山、富士急行沿線の山、丹沢山塊、道志の山々のピークに立てば、ほとんどが富士山を眺望できる。冬山となれば、正月カレンダーのような、白い峰の美しい富士山が眺められる。日本人の心にはことのほか感動がある。

 例外が山梨県の御正体山だ。苦労した挙げ句の果てに山頂に立っても、景観がなく、形のよい富士山の展望など楽しめない。山頂から灌木(かんぼく)の急坂を下る。山中湖を目指す。

 冬場の裸木の隙間(すきま)から、右手にそびえる杓子岳(1597メートル)がみえた。道志山塊の西端で、富士山の展望の良さで知られている。下山後は忍野八海を見物できる、人気のある山だ。「富士山を見たければ、こっちの杓子岳に登りな」という態度で威厳に満ちている。そんな山の表情だ。

 尾根道は小さなピークが連続する。冬場の日没が早い。現在地は常にしっかりつかみ、道に迷わず、タイムロスをしないことが肝心だ。杓子岳の方角から高圧送電線がこちらに伸びてきている。登山者はこれら送電線を見逃さず、地図上の鉄塔と送電線と照合し、現在地と距離をつかむことだ。

 前ノ岳(1471メートル)の標識を過ぎると、純白の富士山が見え隠れする。裸木の枝が邪魔し、写真にはなお難がある。時折、自衛隊の砲弾練習の音が低音でひびく。中ノ岳を通過した。つぎのピークは奥ノ岳だ。

 高い送電鉄塔がそびえている。近づくと突如として展望が開けた。送電線の広場に樹木はなく、富士山の写真撮影には絶好の場所だ。「満足できる富士山を見つけたぞ」と感動はひとしおで、写真は撮り放題だ。(奥ノ岳は御正体山でなく、石割山の領域らしい)。

 奥ノ岳の鉄塔を過ぎると、道の両側にはクマザサが背丈ほど茂っている。富士山はたちまち消えてしまった。なおも主尾根を進む。歩速と日没と腕時計と地図のにらめっこだ。日向峰(1446メートル)のピークをまくと、林の間から山中湖がみえはじめた。湖面には傾きはじめた陽がきらめいている。

 山中湖と富士山の景観では人気がある石割山(1413メートル)に到着した。太陽はすでに富士山の左肩にかかりはじめていた。山頂では数枚の写真撮りですませて、下山を急ぐ。八合目には石割神社がある。切り立った大岩が裂けている。古事記の「天の岩戸」の伝説のひとつらしく、注連縄(しめなわ)がかけられている。

 石割神社からさらに下ると、左手の斜面には、「食害防護筒」が筍のように無数にならぶ。近年は、鹿やカモシカが植林を食べつくし、森林が荒れて深刻な状況にある。健全な森林を育てるためのチューブだ、という立て看板があった。

 やがて途轍(とてつ)もなく長い石段だ。一直線に400段ほどある。登りに使う人はかなり苦労するだろう。下りきると、赤い鳥居があり、舗装の車道に出た。ここまでくれば、登山は終わり。高速バスの発着がある平野に向かう。

 御正体山から山中湖へのコースは距離が長い。今回は無積雪だったから距離を伸ばせた。地場の人に聞けば、十数年前に、大学生が冬の雪山で遭難したという。積雪期では無理をしないことだ。冬場は日没が早いし、ヘッドランプの持参は欠かせない。

 富士山周辺の山で、ここほど不人気な山はない。「御正体山は、樹木に葉が茂ると、視界が悪くて登りたくない。冬場でも、一度登れば充分だ」という登山者に出会った。富士山の美観を期待する登山者の本音だと思う。

 御正体山の魅力はなにか。富士山の姿をみて、『風呂屋のペンキ絵だ、芝居の書き割りだ』と酷評した、御坂峠で書いた太宰治の『富嶽百景』の一節を思い出した。

 富士山の景観よりも、森林に包まれた静かな山登り。自然の森を楽しみたい、という登山者には勧めたいのが、御正体山だ。【了】

■関連情報
記者HP:穂高健一ワールド
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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