マスコミにいつも囲まれている東国原英夫知事

写真拡大

   「徴兵制」発言で逆風を受けている宮崎県の東国原英夫知事が、発言の記事を配信した共同通信に公式サイトで反撃している。それも、北野武監督への「口利き」を携帯電話で頼んできたことに噛み付いているのだ。県議会で頭を下げてばかりの姿とは、対応の違いも浮き彫りになった。

記者とのやり取りを暴露

   記者とのやり取りを暴露する政治家は、あまり例がない。それは、有権者と広く対話したい政治家にとって、致命傷となるからだ。ところが、東国原知事だけは例外らしい。自らの公式サイト「そのまんま日記」で12月4日、「共同通信」と題して、その不文律をあっけらかんと破ってしまった。

   それによると、東国原知事の携帯に突然、共同通信社の記者から電話がかかってきた。そして、この記者は、「北野武監督にインタビューを取りたいので、知事の方から頼んで頂けないか?」と口利きを依頼した。が、知事は言い返した。「共同通信の方から、正式に所属事務所の方に依頼するのが筋ではないですか?」と。つまりは、それほど親しくない記者であったわけだ。

   頼んだ記者の言い分は、「正攻法で取材申し込みをすると断られる可能性が高く、現に断られたこともあった」からだという。しかし、知事は、依頼を断ったとして、日記で興奮してこうまくしたてた。

「だからと言って、僕に直接電話して来て、北野監督に取材依頼をするというのはいかがなものだろう?それが、あの会社の取材方法なのだろうか?」

   さらに、こうした依頼の是非を世に問いたいと言わんばかりに、

「キチンと事実を報道する姿勢・主義であるらしいかの報道機関が『宮崎県知事の携帯に直接電話して、北野監督に取材を受けて頂く様依頼したが断られた』という事実は報道していないみたいであるので、代わりに、ここで報告させて頂く」

と日記で述べている。

   確かに、政治家に何かを依頼すれば、「借り」を作ってしまう面がある。マスコミ人として「批判の矛先が鈍る」、との指摘もあって当然だろう。が、自らマスコミとの信頼関係を壊すような政治家は、変わっているのは確かだ。

   そこで、共同通信社に暴露のことをどう考えるか、J-CASTニュースが聞いてみた。すると、総務局の広報担当者は、「取材した過程の話ですので、事実関係も含めて、コメントすることはできません。取材するわが社と相手方との関係もありますので」と答えた。共同は、知事との信頼関係に重きを置いたわけだ。

県議会では頭を下げてばかり

   東国原知事の怒りは、そもそも共同通信による「徴兵制」発言の報道の仕方にあるようだ。同じ日記の中で、携帯電話の話に続いて、「県民ブレーン座談会の席、例の『徴○制発言』で、その後の囲み取材で、釈明・撤回をさせて頂いたにも関わらず、そのまま共同通信社は配信した」と不満を述べている。共同は、「徴兵制」の記事で、座談会後に知事が報道陣に発言の真意を説明したことに触れており、日記の指摘は分かりにくい。おそらく、「釈明・撤回」を強調する記事にするべきだった、あるいは、撤回したのだから記事そのものを載せるべきでない、とのことらしい。

   知事はことあるごとに、発言をきちんとニュースに反映させないとして、マスコミに噛み付いている。宮崎県政記者クラブの主催で行われた07年4月16日の定例会見では、「定例会見って必要ですかね」と問題提起し、記者から反論されると、「じゃあ、会見内容を全部、2ページぐらい割いて載せてくれます?」と色をなして言い返していた。知事のお願いを聞かないマスコミに不信感を募らせ、マスコミからお願いがあると、「それみたことか」と反撃しようとしていた節がある。

   そんな知事も、県議会だけには頭が上がらない。「徴兵制」について釈明した会見で、今度は「徴農制」の必要性を口走り、社民党宮崎県連による発言撤回の申し入れに対し、12月4日、「不適切だった」と陳謝した。各紙によると、知事は、「訂正すれば済むという問題ではない」と迫る社民党議員に対し、「(注意)しますと言っているじゃないですか。私の話も聞いて下さいよ」と興奮して机を叩いたという。謝罪までする異例の対応だったが、思わずマスコミ対応のくせが出てしまったようだ。

   知事のマスコミ嫌いは、1986年に師匠の北野武さんとともにフライデーを襲撃した事件以来。外国特派員協会で07年3月14日に行った講演では、「20年たっても講談社に狙われている」とジョークを飛ばしていた。その亡霊に今もうなされているということなのだろうか。

J-CASTニュースとは?

従来のマスコミとは違うユニークな視点で、ビジネスやメディアに関するさまざまな記事を発信しています。読者投稿のコメント欄も充実!
国内最大級の新商品サイト「モノウォッチ」も開設!