今週のお役立ち情報
体験学習で、地球環境を考える=東京・紙の博物館(下)
2007年12月03日07時49分 / 提供:PJ
【PJ 2007年12月03日】−
(中)からのつづき。東京・北区の財団法人「紙の博物館」では学芸員の平野祐子さんから、紙の歴史とか、館の特徴とかを聞くことができた。
渋沢栄一(しぶさわ・えいいち)が明治時代に入ると、文明開化で、紙の重要性に着眼し、抄紙会社(しょうしがいしゃ・後の王子製紙)を立ち上げた。明治8年には現在の北区・王子で操業開始した。このことから王子は、洋紙発祥の地といわれている。王子には紙作りの3つの条件がそろっていたのだ。
紙作りにはきれいな水が必要であり、水源として石神井川(しゃくじいがわ)と千川用水が利用できたこと。そして、原材料や製品には石神井川の水運が使えたことだ。そのうえ、東京近郊で、原料のボロ(木綿)の集荷に便利だったことによる。
王子製紙・王子工場は先の戦争の空襲で、壊滅的な被害を受けた。わずか1棟残ったのが電気室だった。戦後の「過度経済力集中排除法」で、王子製紙は三つの製紙会社に分割されることとなった。
戦前の旧王子製紙の遺産を後世に伝えよう。その意図で、戦火を免れた電気室に『製紙記念館』が設立された。それは製紙記念館の初代館長となった成田氏が、戦時中に苦心して収集した、手すき和紙の標本、和紙・洋紙に関する文献などの資料を中心にしたものだった。それが現在の紙の博物館に引き継がれた、という経緯を持つ。
平野さんからは同館の見どころを説明してもらった。金唐革紙(きんからかわし)はヨーロッパからもたらされた、型押しや金箔(きんぱく)などで、装飾を施した革製品(金唐革)を和紙で模造したもの。「明治時代にはウイーン万博に出品し、大変な人気を博したようです」。その後、ヨーロッパの王宮や貴族の屋敷の壁紙として、輸出産業として急成長した。しかし、生産量が追いつかず、結果として粗悪品となり、嫌われて衰退したという。
昭和30年代には、産業として完全に姿を消してしまった。ここ数年の研究で、現在、紙の博物館で所蔵する製造に必要なロール状の版木を用いて、金唐革紙が復元されているそうだ。
「紙は衣装にもなります。紙衣(かみこ)や紙布(しふ)と呼ばれるもので、紙布は洗濯もできます」と話す。「紙衣(かみこ)は各地で作られており、江戸時代の川柳などにはずいぶん出てきます。貧乏人の代名詞として。それだけ庶民生活のなかで定着していたようです。現在でも東大寺の『お水取り』の時に、修行僧が紙衣を着ています」と教えてくれた。
紙に柿渋や漆を塗ると、耐水性が増したり、頑丈になったりする。それを利用して、合羽、傘、煙草入れ、液体の容器など、あらゆるものが作られた。こんなものが紙でできるんだ、と博物館では驚かされる。日本人の知恵の豊かさを知ることができる。
平野さんが紙と地球環境について語ってくれた。「紙は森林を伐採する、森林を破壊すると騒がれたことがあります。森林を伐採した丸太でチップを取っているように思われますが、間伐材(かんばつざい・森林に太陽が差し込むように間引きした若木)や、丸太から角材などを取った残りの端材を利用しています」。製紙は木材廃品の利用先のようだ。廃材処分で焼いてCO2を出すよりも、有意義な使い方だともいえる。
製紙会社は国有林に次ぐ山持ち。「樹木が古くなると、CO2の吸着力が弱まります。伐採し、再生させる必要がある。放置した立ち枯れは山を痛めますから。山の活性化の伐採が必要です」。最近は森林の樹木の認証制度もおこなわれているという。他方、海外で8年で回転(ローテーション)できるユーカリなどの植林に積極的だと語る。
「製紙業で、棄てるものはありません。不要と思われる廃液すらも、バイオマスエネルギーとして、工場の発電に利用しています」と教えてくれた。
ウェブ文明の進化で、情報はスピードがアップした。新聞を読まない若い世代層が増えた。ニュースは活字から、液晶画面で見る時代に推移している。だからといって、紙文明が衰退するわけではない。
紙は地球環境に密接にかかわる。一人ひとりのリサイクル意識、リサイクル率の向上が地球を守る。それが低下したり、欠けたりしたならば、地球環境を壊す。
紙の博物館の見学者は子どもから大人まで、「わかりやすく、予想していた以上に勉強になりました」という声がほとんどだった。一度は訪ねてほしい博物館だ。紙を通して日常の環境の取組みを示唆してくれる。『ものを大切にする』という日本人古来の価値観の再認識にもつながる。【了】
■関連情報
紙の博物館 JR王子駅南口から徒歩5分
開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜・祝日の代休・年末年始
入館料:一般300円、小・中・高100円
記者HP:穂高健一ワールド
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パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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渋沢栄一(しぶさわ・えいいち)が明治時代に入ると、文明開化で、紙の重要性に着眼し、抄紙会社(しょうしがいしゃ・後の王子製紙)を立ち上げた。明治8年には現在の北区・王子で操業開始した。このことから王子は、洋紙発祥の地といわれている。王子には紙作りの3つの条件がそろっていたのだ。
紙作りにはきれいな水が必要であり、水源として石神井川(しゃくじいがわ)と千川用水が利用できたこと。そして、原材料や製品には石神井川の水運が使えたことだ。そのうえ、東京近郊で、原料のボロ(木綿)の集荷に便利だったことによる。
王子製紙・王子工場は先の戦争の空襲で、壊滅的な被害を受けた。わずか1棟残ったのが電気室だった。戦後の「過度経済力集中排除法」で、王子製紙は三つの製紙会社に分割されることとなった。
戦前の旧王子製紙の遺産を後世に伝えよう。その意図で、戦火を免れた電気室に『製紙記念館』が設立された。それは製紙記念館の初代館長となった成田氏が、戦時中に苦心して収集した、手すき和紙の標本、和紙・洋紙に関する文献などの資料を中心にしたものだった。それが現在の紙の博物館に引き継がれた、という経緯を持つ。
平野さんからは同館の見どころを説明してもらった。金唐革紙(きんからかわし)はヨーロッパからもたらされた、型押しや金箔(きんぱく)などで、装飾を施した革製品(金唐革)を和紙で模造したもの。「明治時代にはウイーン万博に出品し、大変な人気を博したようです」。その後、ヨーロッパの王宮や貴族の屋敷の壁紙として、輸出産業として急成長した。しかし、生産量が追いつかず、結果として粗悪品となり、嫌われて衰退したという。
昭和30年代には、産業として完全に姿を消してしまった。ここ数年の研究で、現在、紙の博物館で所蔵する製造に必要なロール状の版木を用いて、金唐革紙が復元されているそうだ。
「紙は衣装にもなります。紙衣(かみこ)や紙布(しふ)と呼ばれるもので、紙布は洗濯もできます」と話す。「紙衣(かみこ)は各地で作られており、江戸時代の川柳などにはずいぶん出てきます。貧乏人の代名詞として。それだけ庶民生活のなかで定着していたようです。現在でも東大寺の『お水取り』の時に、修行僧が紙衣を着ています」と教えてくれた。
紙に柿渋や漆を塗ると、耐水性が増したり、頑丈になったりする。それを利用して、合羽、傘、煙草入れ、液体の容器など、あらゆるものが作られた。こんなものが紙でできるんだ、と博物館では驚かされる。日本人の知恵の豊かさを知ることができる。
平野さんが紙と地球環境について語ってくれた。「紙は森林を伐採する、森林を破壊すると騒がれたことがあります。森林を伐採した丸太でチップを取っているように思われますが、間伐材(かんばつざい・森林に太陽が差し込むように間引きした若木)や、丸太から角材などを取った残りの端材を利用しています」。製紙は木材廃品の利用先のようだ。廃材処分で焼いてCO2を出すよりも、有意義な使い方だともいえる。
製紙会社は国有林に次ぐ山持ち。「樹木が古くなると、CO2の吸着力が弱まります。伐採し、再生させる必要がある。放置した立ち枯れは山を痛めますから。山の活性化の伐採が必要です」。最近は森林の樹木の認証制度もおこなわれているという。他方、海外で8年で回転(ローテーション)できるユーカリなどの植林に積極的だと語る。
「製紙業で、棄てるものはありません。不要と思われる廃液すらも、バイオマスエネルギーとして、工場の発電に利用しています」と教えてくれた。
ウェブ文明の進化で、情報はスピードがアップした。新聞を読まない若い世代層が増えた。ニュースは活字から、液晶画面で見る時代に推移している。だからといって、紙文明が衰退するわけではない。
紙は地球環境に密接にかかわる。一人ひとりのリサイクル意識、リサイクル率の向上が地球を守る。それが低下したり、欠けたりしたならば、地球環境を壊す。
紙の博物館の見学者は子どもから大人まで、「わかりやすく、予想していた以上に勉強になりました」という声がほとんどだった。一度は訪ねてほしい博物館だ。紙を通して日常の環境の取組みを示唆してくれる。『ものを大切にする』という日本人古来の価値観の再認識にもつながる。【了】
■関連情報
紙の博物館 JR王子駅南口から徒歩5分
開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜・祝日の代休・年末年始
入館料:一般300円、小・中・高100円
記者HP:穂高健一ワールド
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