【MiAUの眼光紙背】第3回:未来は見えているか?〜歴史が教えてくれる著作権法の怖さ(中川譲)
2007年11月19日11時00分 / 提供:眼光紙背
現在筆者は、映画業界に関連する仕事をしている。昨今はテレビや新聞でも「コンテンツビジネス」がもてはやされていて、映画業界といえば、さぞや豪勢で華やかなものだと思われる皆さんも多いかもしれない。だが実はこの業界、読者の皆さんが漠然と想像されるより、ずっとずっと規模が小さく、こじんまりとしたものなのである。
日本における映画の売上は、全てをかき集めても年間5000億円くらいにしかならず、これはセブンイレブン1社の年間売上にも及ばない。そしてこのうちの半分以上、3000億円くらいは、実は劇場での売上ではなく、DVDやビデオの売上(これを専門用語では二次使用という)に頼っているのだ。映画は、とっくの昔に映画館で見るものではなくなっている。
劇場ではなくビデオ販売に頼っているという映画の産業構造は、日本のみならず、アメリカ・ハリウッドでも変わらない構造である。実際に映画会社や映画プロデューサが製作費を工面していく際にも、「劇場での人気は読めないが、ビデオの売上ならある程度読める」と言って、ビデオの売上から逆算して予算を組んでいたりする。DVDやビデオの売上は、今日において世界の映画産業を支える大黒柱なのである。
しかし、過去においては、ビデオが映画産業の敵だった時期がある。1976年、米国の映画会社ユニバーサル社は、世界で初めて家庭用のビデオデッキ(ベータマックスというヤツだ)を作ったソニーを、訴えた。ビデオデッキの販売を差し止めたり、映像は一切録画できないようにしろなどという、かなり図々しい要求も行われた。
ユニバーサル社は、前年の『ジョーズ』が大当たりしてウハウハな状態であり、また多数のテレビ番組も製作していた。そこへ、誰もが簡単に映像を記録できる機械が出てきた。これは不味い、録画されてしまったら、一度でもテレビで流してしまった映像には商品価値がなくなってしまうじゃないか! きっと、そんな風に考えたのだろう。もちろん実際には、優れた映像は何度も鑑賞されるものであるが。
初めの裁判はソニー側が勝ったが、控訴審ではユニバーサル側が勝った。米最高裁にまで持ち込まれた裁判は、最終的には5対4のきわどい差でソニーが勝った。もしソニーがこの裁判に負けていたら、現在のように、9割くらいの家庭にまでビデオデッキやDVDプレーヤーが広まることは、まず無かっただろう。
それはつまり、家庭のテレビでお気に入りの映画を繰り返し鑑賞するようなライフスタイルも生まれることはなかった、ということだし、そしてもしそうなっていたら、現在のようにビデオの売上に収入の多くを依存するユニバーサル社自身も、傾いてしまったかもしれない。1976年当時の家庭用ビデオソフトの売上は、ゼロだったのだから。
映画会社は、10年ほどの無駄な時間と巨額の裁判費用を費やした後、著作権法を利用してビデオデッキの存在を叩き潰すより、味方にした方が儲かるということに、ようやく気がついた。
1976年時点の映画会社にとって、ビデオデッキとは、自らの目の届かないところでコンテンツをコピーされるだけの、悪のツールにしか見えなかった。でも10年経ってみたら、ビデオを使わずに商売をする方が愚か、という状態になっていて、しかも劇場での売上は落ちるどころか、ビデオの売上と共に伸びていった。ハリウッドの映画産業を牽引する巨大企業の経営陣ですら、わずか10年先の見通しを誤ったのである。
さて、今日のインターネット上で大人気を博している、Youtubeやニコニコ動画といった動画投稿サービスを、著作権侵害の場になっていると批判する人達がいる。ああいうサイトのせいで、DVDの売上が落ちたのだと公言して憚らない権利者もいる。筆者の目には、こうしたネットワークを利用した新しいサービスを批判する著作権者たちは、30年前の「未来が見えていなかった」ユニバーサル社とダブって見える。
日本における映画の売上は、全てをかき集めても年間5000億円くらいにしかならず、これはセブンイレブン1社の年間売上にも及ばない。そしてこのうちの半分以上、3000億円くらいは、実は劇場での売上ではなく、DVDやビデオの売上(これを専門用語では二次使用という)に頼っているのだ。映画は、とっくの昔に映画館で見るものではなくなっている。
劇場ではなくビデオ販売に頼っているという映画の産業構造は、日本のみならず、アメリカ・ハリウッドでも変わらない構造である。実際に映画会社や映画プロデューサが製作費を工面していく際にも、「劇場での人気は読めないが、ビデオの売上ならある程度読める」と言って、ビデオの売上から逆算して予算を組んでいたりする。DVDやビデオの売上は、今日において世界の映画産業を支える大黒柱なのである。
しかし、過去においては、ビデオが映画産業の敵だった時期がある。1976年、米国の映画会社ユニバーサル社は、世界で初めて家庭用のビデオデッキ(ベータマックスというヤツだ)を作ったソニーを、訴えた。ビデオデッキの販売を差し止めたり、映像は一切録画できないようにしろなどという、かなり図々しい要求も行われた。
ユニバーサル社は、前年の『ジョーズ』が大当たりしてウハウハな状態であり、また多数のテレビ番組も製作していた。そこへ、誰もが簡単に映像を記録できる機械が出てきた。これは不味い、録画されてしまったら、一度でもテレビで流してしまった映像には商品価値がなくなってしまうじゃないか! きっと、そんな風に考えたのだろう。もちろん実際には、優れた映像は何度も鑑賞されるものであるが。
初めの裁判はソニー側が勝ったが、控訴審ではユニバーサル側が勝った。米最高裁にまで持ち込まれた裁判は、最終的には5対4のきわどい差でソニーが勝った。もしソニーがこの裁判に負けていたら、現在のように、9割くらいの家庭にまでビデオデッキやDVDプレーヤーが広まることは、まず無かっただろう。
それはつまり、家庭のテレビでお気に入りの映画を繰り返し鑑賞するようなライフスタイルも生まれることはなかった、ということだし、そしてもしそうなっていたら、現在のようにビデオの売上に収入の多くを依存するユニバーサル社自身も、傾いてしまったかもしれない。1976年当時の家庭用ビデオソフトの売上は、ゼロだったのだから。
映画会社は、10年ほどの無駄な時間と巨額の裁判費用を費やした後、著作権法を利用してビデオデッキの存在を叩き潰すより、味方にした方が儲かるということに、ようやく気がついた。
1976年時点の映画会社にとって、ビデオデッキとは、自らの目の届かないところでコンテンツをコピーされるだけの、悪のツールにしか見えなかった。でも10年経ってみたら、ビデオを使わずに商売をする方が愚か、という状態になっていて、しかも劇場での売上は落ちるどころか、ビデオの売上と共に伸びていった。ハリウッドの映画産業を牽引する巨大企業の経営陣ですら、わずか10年先の見通しを誤ったのである。
さて、今日のインターネット上で大人気を博している、Youtubeやニコニコ動画といった動画投稿サービスを、著作権侵害の場になっていると批判する人達がいる。ああいうサイトのせいで、DVDの売上が落ちたのだと公言して憚らない権利者もいる。筆者の目には、こうしたネットワークを利用した新しいサービスを批判する著作権者たちは、30年前の「未来が見えていなかった」ユニバーサル社とダブって見える。
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