世界の壁を初めて破った日の丸のエース/カツラギエース
2007年11月19日14時00分 / 提供:馬券ブレイク
日本競馬が世界へ向けて新たなる1ページを刻んだ1984年11月25日の第4回ジャパンC。4回目を迎えたこの国際競走で、初めて日本馬が外国の強豪馬たちを破って優勝した。そして、僕にとってこのジャパンCが特に印象に残っている理由は、この歴史的快挙を成し遂げた主役が誰も予期していなかった意外な存在であったからだ。
それは戦前から世間の注目を集めていた稀代の3冠馬シンボリルドルフ、ミスターシービーではなく、なんと10番人気の伏兵馬カツラギエースだったのである。優勝馬カツラギエースがゴール板を駆け抜けたとき、東京競馬場は静まりかえっていたという。
この年、僕はJRA騎手を引退し、栗東・高橋直厩舎の調教助手に転向していた。華やかな表舞台から退き、裏方へと居場所を変えたが、“いつか大きなレースを勝ちたい”という競馬人としての目標は変わらなかった。その先には日本の全ホースマンにとっての夢舞台である日本ダービーがあった。
しかし、その3年前に新設されたジャパンカップもまた、日本のホースマンたちにとって大きな目標となりつつあった。それまでの3回、すべて外国馬が優勝。毎回、当時の国内エース級が外国馬を迎え撃ったが、いずれも海外馬の後塵を拝する結果となっていた。僕ら日本のホースマンは、世界との差を改めて痛感するとともに、この悔しい思いをなんとか晴らしたい、そんな切なる思いを抱くようになっていったのだ。
その悲願達成への機運が高まったのが第4回ジャパンCだった。冒頭にも触れた2頭のトリプルクラウンホースの登場である。世間でも2頭への期待は膨らんでいたが、僕らトレセン関係者の間でも、この2頭の強さはずば抜けており、この2頭ならば屈強な外国馬にも太刀打ちできると大きな期待を持っていた。僕は京都競馬場の控え室で、その2頭が外国馬を負かしてくれるシーンを想像しながらテレビモニターを見つめていた。
戦前の大方の予想は、2頭のトリプルクラウンホースと外国勢の戦いだった。その年の外国馬の顔ぶれは、当時のアメリカで最上位の実力を持っていたメジェスティーズプリンスをはじめ、欧米豪といった世界各国のGI馬たち。このメンバーをみれば、戦前のカツラギエースが単なる脇役の1頭に過ぎなかったのも仕方のない話かもしれない。
しかし、カツラギエースも他の人気馬にひけを取らない能力の持ち主であった。重賞6勝に加えて、同年春に宝塚記念を勝ってGIホースの仲間入りをしていた馬である。世間の評価が低すぎたといわざるをえない。では、なぜカツラギエースが世間から軽んじられていたのか?
それは同世代の3冠馬ミスターシービーにGIでことごとく敗れていたからである。実際、このジャパンCの前走であった天皇賞でもミスターシービーの後塵を拝していた。その前の毎日王冠では、初めてミスターシービーを負かしていたカツラギエースだったが、このときはミスターシービーが1年近い長期休養明けで、万全の状態ではなかったとして評価してもらえなかった。このような経緯で、脚光を浴びたアイドル馬ミスターシービーとカツラギエースは、その実力以上に明暗をわけていた。(次のページへ)
それは戦前から世間の注目を集めていた稀代の3冠馬シンボリルドルフ、ミスターシービーではなく、なんと10番人気の伏兵馬カツラギエースだったのである。優勝馬カツラギエースがゴール板を駆け抜けたとき、東京競馬場は静まりかえっていたという。
この年、僕はJRA騎手を引退し、栗東・高橋直厩舎の調教助手に転向していた。華やかな表舞台から退き、裏方へと居場所を変えたが、“いつか大きなレースを勝ちたい”という競馬人としての目標は変わらなかった。その先には日本の全ホースマンにとっての夢舞台である日本ダービーがあった。
しかし、その3年前に新設されたジャパンカップもまた、日本のホースマンたちにとって大きな目標となりつつあった。それまでの3回、すべて外国馬が優勝。毎回、当時の国内エース級が外国馬を迎え撃ったが、いずれも海外馬の後塵を拝する結果となっていた。僕ら日本のホースマンは、世界との差を改めて痛感するとともに、この悔しい思いをなんとか晴らしたい、そんな切なる思いを抱くようになっていったのだ。
その悲願達成への機運が高まったのが第4回ジャパンCだった。冒頭にも触れた2頭のトリプルクラウンホースの登場である。世間でも2頭への期待は膨らんでいたが、僕らトレセン関係者の間でも、この2頭の強さはずば抜けており、この2頭ならば屈強な外国馬にも太刀打ちできると大きな期待を持っていた。僕は京都競馬場の控え室で、その2頭が外国馬を負かしてくれるシーンを想像しながらテレビモニターを見つめていた。
戦前の大方の予想は、2頭のトリプルクラウンホースと外国勢の戦いだった。その年の外国馬の顔ぶれは、当時のアメリカで最上位の実力を持っていたメジェスティーズプリンスをはじめ、欧米豪といった世界各国のGI馬たち。このメンバーをみれば、戦前のカツラギエースが単なる脇役の1頭に過ぎなかったのも仕方のない話かもしれない。
しかし、カツラギエースも他の人気馬にひけを取らない能力の持ち主であった。重賞6勝に加えて、同年春に宝塚記念を勝ってGIホースの仲間入りをしていた馬である。世間の評価が低すぎたといわざるをえない。では、なぜカツラギエースが世間から軽んじられていたのか?
それは同世代の3冠馬ミスターシービーにGIでことごとく敗れていたからである。実際、このジャパンCの前走であった天皇賞でもミスターシービーの後塵を拝していた。その前の毎日王冠では、初めてミスターシービーを負かしていたカツラギエースだったが、このときはミスターシービーが1年近い長期休養明けで、万全の状態ではなかったとして評価してもらえなかった。このような経緯で、脚光を浴びたアイドル馬ミスターシービーとカツラギエースは、その実力以上に明暗をわけていた。(次のページへ)
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