「インターネット大学」の将来を占う
2007年11月14日06時43分 / 提供:PJ
日本初の完全インターネットによる授業形態をとる「サイバー大学」が2007年4月に福岡県福岡市に設置された。初代学長には考古学者の吉村作治が就任し、株式会社ソフトバンクグループが運営する。IT総合学部・IT総合学科と世界遺産学部・世界遺産学科からなり、学部名も非常にユニークなものとなっている。前者では、全般的にパソコン、インターネットに関連した内容を持つ授業を行っていて、後者では世界遺産のことから、観光や、時には建築についても学習できるカリキュラムとなっており、どちらも他に類を見ない内容となっている。
学費等は、検定料1万円・入学料10万円・授業料2万1000円(単位あたり)となっており、例として早稲田大学・文系をとりあげると、検定料3万5000円・入学料29万円・授業料平均(施設費込)・88万9500円(年間)であり、それと比べると、非常に低コストですむようになっている。
このサイバー大学、運営形態が株式会社であるが、なぜこの形態をとるようになったのか。サイバー大学事務局担当者はこう答える。
「サイバー大学の学長である吉村作治先生はもともと、『教育革命を起こして、教育格差のない社会を作りたい』という考えを提唱していました。これに、『21世紀のデジタル情報革命』を企業理念として掲げるソフトバンク側が賛同。誰もが平等で格差のない教育を受け、世界中の価値ある情報にアクセスできる、真に豊かで公平な社会の実現を目指す、というビジョンが一致した結果、ソフトバンクグループからの資本出資やビジネス・インフラ構築協力、リソースの提供等が実現しました」。
では、このような大学を建設した具体的な理由はどのようなものがあるのか。公式ホームページによると「1つは『教育格差をなくすことによって教育改革をする』。2つ目は『教育をサービス産業ととらえ、利益を求めて、その利益を堂々と教育、研究に還元する』、そして3つ目は『均質な誰にでもわかる講義を創る』」といった理由である。
これらから読み取れる通り、設置目的の中心が「教育格差をなくすこと」であるため、受験資格を持っていれば、遠隔地に住んでいる人々や、さまざまな理由で通学が困難な人々らであっても入学対象となりうるのである。
そんなサイバー大学であるが、では、一般の大学と比較してどのような違いがあるのだろうか。まず、キャンパスライフで最も重要と言っていい「友人」である。オンデマンドでのインターネットの授業のために、大学生活を通しての人と接する回数はほぼゼロに近いと思われがちである。しかし、決してそんなことはなく、同じ科目を選択している生徒間でのメールのやり取りなどネットを利用したコミュニケーションが可能であり、ディベートルームで授業についての意見交換も可能であるために、通常の大学には劣るものの、友人を作れる可能性は十分にあるのである。
また、通常の大学に比べ時間に融通が利くのもサイバー大学の大きな特徴である。というのも、サイバー大学の授業はオンデマンド方式なので、ネット環境さえ整っていれば、自分の都合のいいときにいつでもどこでも授業が受けられる。さらに、最長12年の受講期間を設けてあるので、どんなに忙しい人間でも個々のペースで受講する事が可能なのである。しかし、パソコンの基本的な操作を覚えなければならないのと、ネット環境をある程度整えておくことは受講する上で必須条件となっている。
しかし、このようなオンデマンド方式の授業形態に対する批判の声もある。明治大学のある教授はこのようなことを言っていた。「大学というのは、教室内である種の共同体を形成し、その中で学問を学ぶというのが楽しみであるのに、インターネットで授業を行う形式は、それを根本から壊している」。この教授は、直接サイバー大学のことを示唆したわけではなかったらしいが、この発言は間接的にサイバー大学のシステムを批判していると言えるだろう。
しかし、サイバー大学はこの点においても対策を打っている。というのも、毎授業後にディベートルームで授業についての意見交換をやっている。このディベートルームで共同体が形成され、ディベートを通して学問を学ぶ形態となっている。通常の大学とは形態は違ってきてしまうものの、共同体が形成されるという点では変わらないため、授業の楽しみは失われないと思われる。
現在サイバー大学には二学部(IT総合学部・世界遺産学部)しかない。一般的な大学と比べると少ないが、学部についてはいずれ増設を見据えているそうだ。それも、既存の大学のような「経済学部」や「法学部」といった枠組みの学部を作るのではなく、学部名にバラエティーを持たせて作るようである。サイバー大学の学部教育で重視しているのは「実学であること」「複眼的視野を養うことができること」「社会に適応できること」であるため、いわゆる縦割りでない、総合的な知識を身につけるのが狙いである。
構造改革特区として誕生したサイバー大学。これからの時代、同じ形態を持つ学校は日本に増えていくのであろうか。今後の動向から目が離せない。【了】
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学費等は、検定料1万円・入学料10万円・授業料2万1000円(単位あたり)となっており、例として早稲田大学・文系をとりあげると、検定料3万5000円・入学料29万円・授業料平均(施設費込)・88万9500円(年間)であり、それと比べると、非常に低コストですむようになっている。
このサイバー大学、運営形態が株式会社であるが、なぜこの形態をとるようになったのか。サイバー大学事務局担当者はこう答える。
「サイバー大学の学長である吉村作治先生はもともと、『教育革命を起こして、教育格差のない社会を作りたい』という考えを提唱していました。これに、『21世紀のデジタル情報革命』を企業理念として掲げるソフトバンク側が賛同。誰もが平等で格差のない教育を受け、世界中の価値ある情報にアクセスできる、真に豊かで公平な社会の実現を目指す、というビジョンが一致した結果、ソフトバンクグループからの資本出資やビジネス・インフラ構築協力、リソースの提供等が実現しました」。
では、このような大学を建設した具体的な理由はどのようなものがあるのか。公式ホームページによると「1つは『教育格差をなくすことによって教育改革をする』。2つ目は『教育をサービス産業ととらえ、利益を求めて、その利益を堂々と教育、研究に還元する』、そして3つ目は『均質な誰にでもわかる講義を創る』」といった理由である。
これらから読み取れる通り、設置目的の中心が「教育格差をなくすこと」であるため、受験資格を持っていれば、遠隔地に住んでいる人々や、さまざまな理由で通学が困難な人々らであっても入学対象となりうるのである。
そんなサイバー大学であるが、では、一般の大学と比較してどのような違いがあるのだろうか。まず、キャンパスライフで最も重要と言っていい「友人」である。オンデマンドでのインターネットの授業のために、大学生活を通しての人と接する回数はほぼゼロに近いと思われがちである。しかし、決してそんなことはなく、同じ科目を選択している生徒間でのメールのやり取りなどネットを利用したコミュニケーションが可能であり、ディベートルームで授業についての意見交換も可能であるために、通常の大学には劣るものの、友人を作れる可能性は十分にあるのである。
また、通常の大学に比べ時間に融通が利くのもサイバー大学の大きな特徴である。というのも、サイバー大学の授業はオンデマンド方式なので、ネット環境さえ整っていれば、自分の都合のいいときにいつでもどこでも授業が受けられる。さらに、最長12年の受講期間を設けてあるので、どんなに忙しい人間でも個々のペースで受講する事が可能なのである。しかし、パソコンの基本的な操作を覚えなければならないのと、ネット環境をある程度整えておくことは受講する上で必須条件となっている。
しかし、このようなオンデマンド方式の授業形態に対する批判の声もある。明治大学のある教授はこのようなことを言っていた。「大学というのは、教室内である種の共同体を形成し、その中で学問を学ぶというのが楽しみであるのに、インターネットで授業を行う形式は、それを根本から壊している」。この教授は、直接サイバー大学のことを示唆したわけではなかったらしいが、この発言は間接的にサイバー大学のシステムを批判していると言えるだろう。
しかし、サイバー大学はこの点においても対策を打っている。というのも、毎授業後にディベートルームで授業についての意見交換をやっている。このディベートルームで共同体が形成され、ディベートを通して学問を学ぶ形態となっている。通常の大学とは形態は違ってきてしまうものの、共同体が形成されるという点では変わらないため、授業の楽しみは失われないと思われる。
現在サイバー大学には二学部(IT総合学部・世界遺産学部)しかない。一般的な大学と比べると少ないが、学部についてはいずれ増設を見据えているそうだ。それも、既存の大学のような「経済学部」や「法学部」といった枠組みの学部を作るのではなく、学部名にバラエティーを持たせて作るようである。サイバー大学の学部教育で重視しているのは「実学であること」「複眼的視野を養うことができること」「社会に適応できること」であるため、いわゆる縦割りでない、総合的な知識を身につけるのが狙いである。
構造改革特区として誕生したサイバー大学。これからの時代、同じ形態を持つ学校は日本に増えていくのであろうか。今後の動向から目が離せない。【了】
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パブリック・ジャーナリスト 赤城 光一
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