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【佐藤優の眼光紙背】第7回:メディアスクラムとインテリジェンス戦争

2007年11月13日11時00分 / 提供:眼光紙背

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 主要出版社は、原稿の進行が遅れている著者を閉じこめて仕事に集中させる「缶詰施設」をもっている。最近、筆者も新宿区にある某出版社の施設で、午前10時から午後4時まで集中的に仕事をした。その出版社の前に行くと、黒塗りの公用車がたくさん停まっている。何事かと思って見ていると、濃紺色の街宣車がやってきた。「コリャー、守屋、貴様は防衛事務次官をつとめながら、業者とゴルフ場に200回以上行くとは、どういうつもりだあ〜〜〜」とがなり立てる。その街宣車の後ろに収音マイクがついた警察車両が張り付いている。街宣車も騒音条例を熟知しているようで、停止勧告を食らわないギリギリの音量で守屋氏を弾劾をしているようだ。どうもこの出版社のすぐ裏に守屋氏の私邸があるようなのだ。

 「缶詰施設」で静かに原稿を書くという計算は崩れたが、再びメディアスクラムについて考える契機になった。こういう情景を見ると5年半前の鈴木宗男疑惑のときの出来事がフラッシュバックしてくる。筆者が、ゴミを出すと、記者にすぐに持ち去られてしまう。ゴミとして出した場合、私の所有権は放棄されるが、このゴミの所有権は東京都に移転する。従って、記者の行為は、厳密に言えば、窃盗に該当する。当時、私は築30年、賃貸の木造テラスハウスに住んでいた。ちなみにこのテラスハウスは、国会で赤坂の豪邸と非難され、公務員でこんな家に住めるはずはないと非難された。一部メディアは「鈴木宗男さんに買ってもらったんじゃないか」という憶測報道を流していたが、事実無根だ。もちろん月20万円の家賃は自分で払っていた。仕事が忙しくなり船橋の官舎に帰るタクシー代が月20万円を超えたので、徒歩で通勤できる赤坂に引っ越したのだ。取調室で検事に「そこまで仕事に熱中することはなかった。仕事は言われたことだけやればよい。それが官僚というものだ」と言われたが、当時の筆者は、それこそ命をかけて北方領土問題を解決したいと思い、寝食を忘れ、自腹を切って仕事をしていた。その迫力はロシア人にも伝わったので、それはそれでよかったと思う。テラスハウスの1階で風呂に入っていると、窓の外に人の気配がする。小窓を開けて見てみると、座り込んでいる青年がいた。筆者が風呂の窓から逃亡すると思って監視していたようだ。また、郵便物が開封され、残骸が玄関に投げ捨てられていることも何度もあった。これは明らかに憲法違反だが、メディアスクラムが加速するとマスコミ関係者は何でもするようになる。故意にテレビカメラの角で殴られたこともある。後にテレビ記者から、「筆者が怒った姿の映像が欲しかったかららだった」と内訳話をされた。筆者は、逮捕されたときに「これでこのメディアスクラムから逃れられる」と実はほっとしたのだ。「赤坂の豪邸」は一例であるが、国民の「知る権利」とは「真実を知る権利」である。守屋氏を巡る疑惑報道のほとんどは検察からのリーク報道であると思うが、その内のどの程度が真実を反映しているか、過去の経験から筆者は大いなる疑念をもっている。

 さて、日本のマスコミが本質と関係ない報道に明け暮れしている間に、東京のインテリジェンス(諜報)のプロたちは、守屋氏に関する情報を徹底的に集めている。それは、アメリカにこの事件がどう波及するかという観点からだ。アメリカには外国公務員腐敗防止法という法律がある。アメリカから見て外国公務員である守屋氏を接待する場所に、アメリカの企業関係者がい合わせただけで、「実行犯」は刑事責任を追及され、会社は政府機関との取り引きを停止される。アメリカの巨大軍事会社の名前が日本で出始めている。仮に外国公務員腐敗防止法に絡まる事案があると、かつて日本で起きたロッキード事件をはるかに上回るアメリカ政界を揺さぶる大スキャンダルに発展する可能性があることに情報のプロたちは強い関心を示している。アメリカに混乱が生じることを喜ぶ国家もある。守屋氏問題を巡り、現在、東京はインテリジェンス戦争の最前線になっている。ただ、日本人の大多数がそれに気づいていないだけだ。(2007年11月13日脱稿)


プロフィール:
佐藤優(さとう・まさる)…1960年、東京都生まれ。作家・起訴休職外務事務官。日本の政治・外交問題について、講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。
著書に「国家の罠」(新潮社)など。


眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧

関連ワード:
守屋武昌  眼光紙背  メディア  インテリジェンス  新潮社  
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