ひと味違うオモロ検索、価格コム縦型比較、GPS不要の位置情報
Mash up Award 3rdの開催期間は6月27日〜9月10日、この記事が公開された3日後の9月30日が授賞式。「つくるぶ」や「Mash up Caravan」などデベロッパーへの応援企画も充実した今回は、最優秀賞の賞金が何と100万円、マッシュ賞、アップ賞、各社・各サービスの部門賞はそれぞれ20万円。受賞作品数も増えてMash up Awardの進化は止まらない。

■SAGOOL:エッジの立った検索エンジンでネタ探しはいかがですか?
・最大公約数的な検索結果ではオモロくない!
ご存じの方も多いだろうが、検索エンジンは世の中にたくさんある。GoogleやYahoo!を一般・標準型とすれば、SAGOOLは自称「オモロ検索エンジン」。検索窓には吹き出しがあり、誰かが現在検索しているキーワードが並んでいる。
 これは「WACAAL」(ワカール)という機能だが、「イソマルトオリゴ糖って何だよ」などと思わず見てしまう。そして何より、「オモロアルゴリズム」という独自のアルゴリズムによる検索結果が秀逸だ。

「試しに『リクルート』って入れてみましょうか。普通なら御社のHPや媒体名などが検索されますよね。でもSAGOOLですと……ほら、『リクルートの人はなぜ辞めちゃうのか』なんてブログが見つかります(笑)。そのワードにある程度の知識のある人なら、エッジの立ったSAGOOLのほうがオモロ結果が見つかりますよ」(マーケティングテクノロジーサービスDiv. マーケティングプランナー 高須正和さん)

 SAGOOL誕生のきっかけは、社内ミーティングで出てきたロジックだった。
「多分、僕が言ったのだと思います。社長も『検索エンジンはアメリカにやられっぱなしだから、別のものをつくりたいね』と話していましたし。ただ、よく覚えていません。すみません(笑)」(ITサービスDiv. テクニカルディレクター 喜多慎弥さん)
 開発は主要メンバー4〜5人で2005年からスタート。2006年6月にリリースし、現在では1カ月に約100万クエリ(検索語)まで使われるようになった。
「私も開発メンバーですので、『ナゾール』を説明させてください(笑)。検索結果のテキストをなぞる(マウスで文字列を範囲選択する)と、その言葉の検索結果が下に表示されます。また、SAGOOLをプラグインすれば、通常のサイト内の文字をなぞるだけでSAGOOLで検索されますよ」(ITサービスDiv. テクニカルディレクター 槌谷拓也さん)
 ちなみに検索結果は先読みによる「無限スクロール」。機能があまりに便利すぎて、検索の迷路にハマってしまうかも?


■kakaku.com:ファンの厳しい声にこたえて、速く、見やすく、わかりやすく
・「この遅い掲示板を何とかしたい!」で転職
 価格.comを知らない人はまずいないだろう。しかし、その「内情」はどれだけ知られているだろうか。まず紹介したいのは「価格.comファン」の存在。サイトのデザインや機能について、バシバシとメールが飛んでくるという。
「色が見にくい、文字が小さいなど、指摘が厳しいんです(笑)。8月にリニューアルしたのですが、『クチコミ』のデザインも変えました。書き込む人の中には単純にコメントがしたいだけの人もいます。こんな方々はレスを嫌がるので、簡単に言い切りができるような形にしました。また、私のこだわりでもありますが、遅い表示がとにかく嫌です」(プロダクト本部 システム部マネージャー 真庭浩高さん)

システム開発全般、特に掲示板やレビューの開発・運用に携わる真庭さんの入社動機は、「この遅い掲示板を何とかしたい!」。2004年に転職後は3人ほどのチームで3カ月を掛けてその思いを遂げ、現在でも日々更新を進めているという。
「私自身が2秒と待てない人間なんです。ノートPCから無線でアクセスする方もいますから、もっとサクサク動かしたいですね。そうそう、価格.comはLinuxではなくWindowsで作っているんです。Windowsでここまでの規模のサイトはほかにないと思いますよ」
 スピードアップした価格.comはAPI提供にも積極的。「価格.com WEBサービス」として、「食べログ.com」や「4travel.jp」など8つのAPIを公開し、Mash up作品を募る「価格.com WEBサービスコンテスト」も実施した。
「私たちはどうしても『万人受け』を考えますが、でも、Mash up作品なら特定の人に向けたユニークな作品ができるはず。よく使われるのはほかのECサイトや地図サイトとのMash upなんですけど、もっと驚くようなアイデアが欲しいですね」


・「縦型比較」で1画面表示すれば、複数のブラウザは不要
価格.comの人気のひとつが製品ごとにランキング表示される「価格比較」。実はこの金額は、出店側がリアルタイムで入力している。
「他店の金額を見て値付けをしているショップさんも少なくありません。値段を下げると順位が上がりますから、利益は薄くなっても知名度アップ優先で『プラズマテレビの○○で1位を取る!』などの作戦もあるようです。そのために、24時間体制で専任スタッフを置くところもありますよ」(経営企画部 広報室長 甲斐かおりさん)
 もうひとつのキモが「製品比較」。ただ、価格や値動き、詳細な製品スペック、ユーザーの評価と検討材料は何項目にもなりがちだ。そこでオススメは「製品詳細比較」だ。

「私たちは『縦型比較』と呼んでいるのですが、意外と知られていません。ランキング1位から10位の中から5つを選んで、『アイテムを比較する』ボタンを押すと、5つの製品が縦列に並んで表示されます。1画面でスペックや評価が横並びになるので比較しやすいですし、『並び替え/削除』ボタンで表示をカスタマイズできます」
 ちなみに「人気アイテムランキング」がPVで決まるが、このページにアクセスする人が多いため、ここでのPVはランキングに加算されないとのこと。一方で「ユーザー満足度ランキング」は書き込みによって決まる。製品ごとにブラウザを立ち上げてタブで切り替えるなどせず、人気商品は「縦型比較」でサクサクと検討しよう!


■PlaceEngine:GPSが不要なので地図サイトにはデフォルトでしょ
・地下街でも届く「ゆるい位置情報システム」

 位置情報を取得するのはGPS、ばかりではない。ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)で開発された「PlaceEngine」は、ノートPCなどのWi-Fi機器の無線LANを使う位置情報システムだ。
 ダウンロードしたソフトが近くのアクセスポイントから出るビーコンの電測情報を取得し、その情報をPlaceEngineのサーバに送信、データベースと照合して推測された位置情報を、サーバからソフトに返信する仕組み。これで地図ソフトの上に現在地が表示される。

このデータそのものがDB化されるので、登録情報が多いほど精度が上がる理屈。そのため、スタートアップ時にはアルバイトを雇って「仕込み」を続けたとか。
「私自身もいろんな場所に行って登録しましたよ(笑)。アクセスポイントの密集度やDB化された電測情報によりますが、位置の誤差は5m〜200m。現時点でアクセスポイントは約50万件、国内17政令指定都市で利用できますから、『ゆるりと位置のわかる都市型サービス』と思ってください」(取締役 塩野崎敦さん)

 PlaceEngineは既に「駅探ラボ」など多くのサイト、あるいはWi-Fi機器の付いたゲーム機でも活用できることから「みんなの地図2」(PSP)などにも搭載されている。また、GPSの弱点を補うメリットが多いことも特徴だ。
「GPSでは起動するまでのコールドスタートに十数秒から数分かかり、屋内や地下街、ビルの谷間などでは電波を受信しにくく精度も乱れます。PlaceEngineではコールドスタートは数秒で、場所についてはビルの階数や部屋の場所まで特定できる場合もあります」
 ソニーCSLでPlaceEngine開発に携わってきた塩野崎さんを含めた3人が、研究所の枠を超えて社会に貢献したいと7月にクウジットを設立。ソニーCSLから初のベンチャー誕生となった。

・仲間の現在地を把握して、「今日、メシに行かない?」
 PlaceEngineを使えばいつでも位置がわかる。しかしそれは「自分の現在地」でなくてもいいかもしれない。
「例えばSkypeのコンタクトリストで、自分の位置をプレゼンス情報として仲間と共有する。友人同士で位置情報をオープンにするわけです。すると、『田中は今、渋谷にいるのか。ここから300mなんて近いじゃん。久しぶりにメシでも食うか』などと誘ったりできます。公開する場所を設定するなどプライバシーを考慮した制限もできますので、位置情報を発信する楽しさが感じられると思います」

 さまざまなデバイスと位置情報を結びつけることもできそうだ。例えば無線LANを搭載した携帯型音楽プレーヤーを身につけて、山手線の中で好きな音楽を聴く。
 「多くの人のログを集めれば、特定の場所でよく聴かれる曲やミュージシャンの傾向がわかるかもしれません。結果だけ見ても面白いですし、ひょっとしたら企業のマーケティングに使えるかもしれないですね。われわれもログを取るためのデバイスを開発中で、何カ月後かには商品化させたいと思っています」
 GPS不要の手軽さからか、「Mash up Award 2nd」では盛んに利用されたPlaceEngine。今回も多くの作品に使われそうだ。
「地図のサイトにはデフォルトで入れてほしいくらいの気持ちです(笑)。ただ、作品としてはもう少し新味が欲しいですね。高速データ通信のできるモバイル機器とのMash upなんてどうでしょうか」

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