「続いてのニュースは〜です」「そこで見たものとは!?」というナレーションとともにテレビ番組の「ここぞ」という場面で流されるCMについて、約86%の視聴者が「不愉快」と感じていることが、榊博文慶大教授らの調査で明らかになった。さらに、CM明けに放送される同じシーンの繰り返しについても「好感が持てない」「しつこい」と答えている人が多く、CMでビジネスをしているテレビ局側からすれば現状のCM放送の「問題」を突きつけられたことになる。

「山場CM」だと、商品を「買いたくない」人が増える

   榊博文教授の論文「番組内CM提示のタイミングが視聴者の態度に及ぼす影響」は、慶大の学生727人を対象に、2002年8月〜10月にかけてCMの提示の実態について行った調査に基づいたもの。テレビ番組の「ここぞ」という山場にさしかかると放送されるCMを「山場CM」と呼び、話が一段落して落ち着いたところで放送されるCMを「一段落CM」と呼んで分類している。

   調査によれば、「山場CM」について「不愉快」とした人が「ややそう」「少しそう」「かなりそう」「非常にそう」を合わせて約86%に上り、「好感が持てない」という人も81%に上った。一方、「一段落CM」については、「不愉快」「好感が持てない」とした人がともに8%だった。「ここぞ」という場面での「山場CM」については、「一段落CM」の10倍近い人が「不愉快」「好感が持てない」と感じている実態が明らかになった。

   さらに、この調査では「山場CM」のCM効果についても「CM商品の購買意欲が低い」という結果が出た。「山場CM」の場合、商品を「買いたい」という人は2.9%で、「買いたくない」とした人は34%。「買いたくない」人の割合は、「一段落CM」の場合に比べて6.6倍だった。
   さらに、CM明けに、CM前のシーンを再び繰り返して放送することについては、「好感が持てない」が76%、「しつこい」とした人が86%に上った。テレビ局側として視聴者誘導や親切心で流す「繰り返し」シーンが、視聴者をウンザリさせている実態も浮き彫りになっている。

視聴者あってのテレビ局であるという「営業の原点」に戻れ

   この論文では、日本と欧米各国のニュース、ドキュメンタリー、ドラマ、クイズなどの番組での「山場CM」の比較もされており、日本の「山場CM」の割合が40%なのに対し、米国では14%、英国では6%、仏国では0%だった。調査では、「クイズ番組に正解を言う前にCMを出したら皆怒ってリモコンをテレビに投げつけるだろう」という英国人の声も紹介された。榊教授は、

「テレビ局は視聴者あってのテレビ局であるという『営業の原点』に立ち返る必要があり、その一方で広告主たる企業はその広告効果という観点から見て、スポンサーとなるメリットがあるか否か真剣に検討する時期に来ているといえよう」

と論文のなかで指摘している。

   CM中に視聴者を逃すまいと山場で挿入しがちなCMだが、CMの好感度や効果という点では「裏目」に出たともいえるこの調査結果。テレビ局側はどう受け止めているのか。
   テレビ朝日広報部はJ-CASTニュースに対し、「視聴者の声に対しては謙虚に耳を傾け、その感性に敏感でなければならないと考えている」とコメント。一方、TBS広報部は、

「番組のあいだにCMを挟むことでマイナスにならないようにすることは当然考えている。視聴者の方に不快感を与えないこと、また番組をつなぐということ、両方を考えながら番組作りをしている」

と話している。