自民・民主大連立破局に透ける真の筋書き
2007年11月06日12時21分 / 提供:PJ
11月4日夕方、小沢一郎民主党代表が10月30日、11月2日の両日にわたる福田首相との党首会談において自民、民主両党の「大連立」協議を進め、民主党内の反対で挫折した結果、「私が選んだ役員に否定されたことは不信任を受けたに等しい」として党内混乱の責任をとる形で代表辞任を表明した。
突然の党首間協議から大連立構想の公表、その破談、そして急転直下の小沢党首の辞任。この数日間、永田町の住人をはじめメディアや国民も時々刻々と変わる情勢に加え、真偽も定かならぬ情報がさまざまに飛び交うなかで翻弄(ほんろう)され続けた。このシナリオを誰が書いたのかは分からぬが、最近では幼稚なシナリオの政治劇ばかり見せられて辟易(へきえき)としていたわたしには、久方ぶりによく錬(ね)られた面白い筋書きを見せられているような気がする。
そもそも二大政党の「大連立」との話が駆け巡ったことで、永田町やメディアは一挙に上を下への大騒ぎとなった。今回の「大連立」は一瞬、55年体制を築き上げた保守大合同を想起させた。しかし、よくよく冷静に考えて見れば昔の保守大合同とはまったく似て非なるものであり、非現実的な構想であることがわかる。
かつて日本民主党と自由党が保守合同し自由民主党を結成した1955年のときは、選挙制度は一選挙区の議員定数が基本的には3人から5人の中選挙区制を採用していた。しかし、現在は1996年の総選挙から実施されている一選挙区一議席の小選挙区制(比例代表併用方式)である。
現実問題としてここで「大連立」を果たした場合、次の総選挙ではどういう選挙となるのか考えてみるとよい。300におよぶ小選挙区において、連立を組む二大政党が同一選挙区でもしおのおのが候補者を立てることになれば、選挙民は何を基準に投票をしたらよいのか。二大政党という大連立が閣外、閣内協力であれ成立するということは、両党の政策が限りなく近いものとなり差別化が非常に分かり難いというか、どっちでも構わぬことになりはせぬか。要は政党選択の必要性がなくなるのではないのか。現在の自公連立は民主党という第二政党が存在することで、キャスティング・ボートを握る公明党の存在意義があり、連立という政治手段にその意義なり正当性が認められると言ってよい。
しかし、第一党と第二党が連立を組むと言うのでは、おのずからその意味合いは大きく異なってくる。今の自民、民主の両院勢力の連立では民主主義のチェック機能が議会という場で働かぬことになり、その意味でもこの大連立というのは無理筋と言える。また一選挙区に自民・民主から仮にどっちか一人を立てるとなれば、郵政民営化で賛成・反対候補のどちらを公認するかでさえ、大もめにもめている自民党を見るまでもなく、その公認作業は実務的にも至難と言わざるを得ない。
要は「大連立」などという構想ははじめから非現実的な話であったと見るべきである。ではなぜこうした話が両党首協議から出てきたのか。それはもっと異なった事柄が福田・小沢両氏の間で話し合われたから、それも現段階では決して外へは出せぬ門外不出の話であったからではないのかと推理するしかないのである。その目眩(めくら)ましとして「大連立」というホットな話をぶち上げて見せた。老練な福田総理と策謀家の小沢氏二人だけの密談である。子供じみた策で手を握ることなど考えにくいのである。
それでは門外不出の話とは一体何か。この政治局面であれば、それは政界再編成でしかありえないのではないか。そしてただでさえ政界の「壊し屋」と呼ばれ、権謀術数に明け暮れた経歴にいろどられた小沢代表にとって、民主党を割って出るにはそれなりの大義がどうしても必要である。だから反対されるにきまっている「大連立」を持ち出し、当然のように反対され、そのことを民主党執行部から不信任されたと辞任の理由として語ったのであろう。自分が不信任された党にいる必然性はない。そういう理屈である。
現在の衆参両院の会派別所属議員数は次のとおりである。衆議院が自民305、民主113、公明31、共産9、社民7、国民6、無所属9の合計480名である。また参議院は自民84、民主119、公明21、共産7、社民5、国民0 、無所属6の合計242名となっている。
いまの衆参の勢力関係を見れば、ねじれ現象を解消するのに必要な数字は次の通りである。
自公連立に小沢党(小沢氏と共に民主党を離脱する派閥)が合流するケースを見ると、小沢・自公政権は参議院から17名(民主党参議院議員総数の14%)の民主党議員を移籍させれば、参議院過半数の122議席を確保できる計算となる。またさらに突っ込んで公明党を排除した政権与党構想(小沢・自民連立)では、38名(同32%)の民主党議員を離脱させ、自民党へ移籍させればよい計算となる。
現在の衆議院は自民・無所属会派のみで衆議院議席総数の64%にあたる305名もの議席を有しており、民主党からの移籍がゼロでも自民党単独で多数党であることに変わりはない。したがってねじれ現象を解消し、政権運営を安定化させるためには参議院議員の政権与党への移籍が必須ということになる。
そこで単純計算をすれば、小沢・自公連立政権は、わずかにと言うのか多数と表現するのかは評価の分かれるところであるが、民主党参議院議員17名の移籍によって成立をみるのである。
このように大連立構想破局の裏には次の一手というより、当初からの筋書き通りの小沢・自公連立か小沢・自民連立という政権の姿が透けて見えてくる、そう思えて仕方がないのである。【了】
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突然の党首間協議から大連立構想の公表、その破談、そして急転直下の小沢党首の辞任。この数日間、永田町の住人をはじめメディアや国民も時々刻々と変わる情勢に加え、真偽も定かならぬ情報がさまざまに飛び交うなかで翻弄(ほんろう)され続けた。このシナリオを誰が書いたのかは分からぬが、最近では幼稚なシナリオの政治劇ばかり見せられて辟易(へきえき)としていたわたしには、久方ぶりによく錬(ね)られた面白い筋書きを見せられているような気がする。
そもそも二大政党の「大連立」との話が駆け巡ったことで、永田町やメディアは一挙に上を下への大騒ぎとなった。今回の「大連立」は一瞬、55年体制を築き上げた保守大合同を想起させた。しかし、よくよく冷静に考えて見れば昔の保守大合同とはまったく似て非なるものであり、非現実的な構想であることがわかる。
かつて日本民主党と自由党が保守合同し自由民主党を結成した1955年のときは、選挙制度は一選挙区の議員定数が基本的には3人から5人の中選挙区制を採用していた。しかし、現在は1996年の総選挙から実施されている一選挙区一議席の小選挙区制(比例代表併用方式)である。
現実問題としてここで「大連立」を果たした場合、次の総選挙ではどういう選挙となるのか考えてみるとよい。300におよぶ小選挙区において、連立を組む二大政党が同一選挙区でもしおのおのが候補者を立てることになれば、選挙民は何を基準に投票をしたらよいのか。二大政党という大連立が閣外、閣内協力であれ成立するということは、両党の政策が限りなく近いものとなり差別化が非常に分かり難いというか、どっちでも構わぬことになりはせぬか。要は政党選択の必要性がなくなるのではないのか。現在の自公連立は民主党という第二政党が存在することで、キャスティング・ボートを握る公明党の存在意義があり、連立という政治手段にその意義なり正当性が認められると言ってよい。
しかし、第一党と第二党が連立を組むと言うのでは、おのずからその意味合いは大きく異なってくる。今の自民、民主の両院勢力の連立では民主主義のチェック機能が議会という場で働かぬことになり、その意味でもこの大連立というのは無理筋と言える。また一選挙区に自民・民主から仮にどっちか一人を立てるとなれば、郵政民営化で賛成・反対候補のどちらを公認するかでさえ、大もめにもめている自民党を見るまでもなく、その公認作業は実務的にも至難と言わざるを得ない。
要は「大連立」などという構想ははじめから非現実的な話であったと見るべきである。ではなぜこうした話が両党首協議から出てきたのか。それはもっと異なった事柄が福田・小沢両氏の間で話し合われたから、それも現段階では決して外へは出せぬ門外不出の話であったからではないのかと推理するしかないのである。その目眩(めくら)ましとして「大連立」というホットな話をぶち上げて見せた。老練な福田総理と策謀家の小沢氏二人だけの密談である。子供じみた策で手を握ることなど考えにくいのである。
それでは門外不出の話とは一体何か。この政治局面であれば、それは政界再編成でしかありえないのではないか。そしてただでさえ政界の「壊し屋」と呼ばれ、権謀術数に明け暮れた経歴にいろどられた小沢代表にとって、民主党を割って出るにはそれなりの大義がどうしても必要である。だから反対されるにきまっている「大連立」を持ち出し、当然のように反対され、そのことを民主党執行部から不信任されたと辞任の理由として語ったのであろう。自分が不信任された党にいる必然性はない。そういう理屈である。
現在の衆参両院の会派別所属議員数は次のとおりである。衆議院が自民305、民主113、公明31、共産9、社民7、国民6、無所属9の合計480名である。また参議院は自民84、民主119、公明21、共産7、社民5、国民0 、無所属6の合計242名となっている。
いまの衆参の勢力関係を見れば、ねじれ現象を解消するのに必要な数字は次の通りである。
自公連立に小沢党(小沢氏と共に民主党を離脱する派閥)が合流するケースを見ると、小沢・自公政権は参議院から17名(民主党参議院議員総数の14%)の民主党議員を移籍させれば、参議院過半数の122議席を確保できる計算となる。またさらに突っ込んで公明党を排除した政権与党構想(小沢・自民連立)では、38名(同32%)の民主党議員を離脱させ、自民党へ移籍させればよい計算となる。
現在の衆議院は自民・無所属会派のみで衆議院議席総数の64%にあたる305名もの議席を有しており、民主党からの移籍がゼロでも自民党単独で多数党であることに変わりはない。したがってねじれ現象を解消し、政権運営を安定化させるためには参議院議員の政権与党への移籍が必須ということになる。
そこで単純計算をすれば、小沢・自公連立政権は、わずかにと言うのか多数と表現するのかは評価の分かれるところであるが、民主党参議院議員17名の移籍によって成立をみるのである。
このように大連立構想破局の裏には次の一手というより、当初からの筋書き通りの小沢・自公連立か小沢・自民連立という政権の姿が透けて見えてくる、そう思えて仕方がないのである。【了】
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パブリック・ジャーナリスト 野田 博明
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