■今まで意図して排除していたガールズバンドらしいコーラスワークも今回のアルバムでは聴く場面が増え、それは自信や成長の表れでもあると思うのですが、レコーディングの際にそれぞれのパートで苦労したことはありますか?

橋本:私はギターで1本以上のリフを弾かないことを目標にしていたので、ソロになるとギターひとつになってしまって。特にソロの手前がサビだったりすると、コードと歌の次に急にギターひとつになるので、どうしてもギターのソロの音が寂しくなるんですよ。どの曲もソロになったらそういう悩みが増えてきて、なんとか太くしようとして音色をいっぱい試して作るんですけど、今度はソロの音が似てしまうんですね。ソロの音が似ると、どんどん別の音にしたくなってきて。今回はそれがすごく難しかったですね。やってみたのはいいけど、やったら結構悩み所が多くて(笑)。

■でも現時点で満足いくものができて、それは今後も継続していく課題でもあるんですね。

橋本:そうです。ちょっとの変化でもちゃんと考えて作ったら、ガラっと印象が変わったので、良かったですね。

■特にライブで強く感じることなのですが、もちろん歌でありメロディラインに耳が行きつつも、チャットモンチーはリズムパターンが非常に独創的で、それが体に心地良く響きますね。

高橋:きっと、えっちゃんが先に弾いて歌って「これにリズムをつけて」と言われる形だったら、どうしてもメロディのイメージからワンパターンのものばかりになってしまうと思うんです。でも、えっちゃんが「何でもいいから、先に好きなリズムを叩いて」と言ってくれて、それにメロディを乗せていく時が多いので、結構自由にやらせてくれるというか。それがすごくチャットの強い所で、柔軟なんですよね。あっこちゃんは、ドラムがこういうフレーズを叩くから、キックとかをよく聴いて合わせてくれて、アレンジを開始してくれたり。他のアーティストさんのCDとかもよく聴きますけど、やっぱりリズムってすごく重要だと私は思っていて。13曲を通して聴いた時に、一つ一つの個性を決めるのってメロディはもちろんそうですけど、リズムが変わっていたらそれだけで明るさとか暗さとか、詞のイメージまで変わってしまうと思っているので。

■すごく変わっているというか、メロディに負けず劣らず表情豊かですよね。

高橋:ドラマー、ドラマーしていないからかもしれないですね。型にハマっていたらきっと「ドラムはずっとビートを刻み続けるべき!」みたいな。そういうのもすごくカッコいいし憧れますけど、色々なものをやりたい、バリエーションをつけたいという想いはあります!

■ベースって、根幹を築くドラムがいて、最前線で動くヴォーカルとギターがいて、その両者をつなぐ柔軟性とバランス感覚が一番求められる、縁の下の力持ち的なポジションだと思うのですが。

福岡:そうですね。ファーストアルバムの時は「3ピースだから」と言って、王道的なことを避けがちだったというか。フレーズもすごくハイポジションで付けたり、ギターリフみたいなものをベースでやってみたり、ソロになってもルートを押さえずギターと絡み出したり(笑)、結構目立つものをすることが多かったんです。それで今回はルートで主にやってみようということを考え出したら、逆にそっちの方が難しくて。ギターもドラムも大体決まって、最後にベースが間を取って付けたりすることがあるんですけど、そういう時にベースが動ける範囲がルートだけでも結構あって。私はすごく切ないコード感にするのが好きなんですが、今回はスピードもある曲も多かったし、そういう面で難しかったですね。