【佐藤優の眼光紙背】第5回:守屋武昌前防衛事務次官に対する証人喚問
2007年10月30日11時00分 / 提供:眼光紙背
10月29日、衆議院テロ対策特別委員会において、守屋武昌前防衛事務次官の接待疑惑を巡る証人喚問が行われた。
筆者も5年半前、鈴木宗男疑惑の絡みで激しいメディア・バッシングを受けた。しかし、マスコミに対する恨みは全くない。外務省内部の権力闘争を背景に、一部外務官僚が、筆者が「報償費(機密費)を横領している」、「赤坂に鈴木宗男氏にしてもらった豪邸がある」、「日本の国家秘密をイスラエルに流している」などの事実無根の情報を流した。
報償費については、全て上司の決裁をとった上で、証拠書類を添付していた。赤坂5丁目に築30年のテラスハウスを借りて住んでいたが、月20万円の家賃はもちろん自分の給料から支払っていた。北方領土交渉の進展とともにひどい忙しさになり、超過勤務が月に300時間を超えるような状態になった。役所のタクシー券にも限りがあり、船橋の官舎に帰宅するために使うタクシー代の私費負担が20万円を超えたので、それならば少しでも睡眠時間を確保したいと思って外務省に徒歩で通うことができる赤坂に引っ越したのだ。それから、筆者はイスラエルとは良好な関係をもっていて、様々な意見交換や情報交換を行ったが、すべて上司の了承を得ており、日本の国益を毀損するようなことは一切していない。もっともマスコミの立場からすれば、「嘘をつかない」という建前になっている外務官僚や検察官が疑惑情報をリークすればそれに飛びつくのは当然だ。筆者の事例でも、悪いのは「鈴木宗男を潰すためにはなにをしてもいい」と考えて偽情報を流した当時の外務省執行部の連中だ。だから筆者がマスコミを恨むと、それは結果として、本当の敵である腐敗外務官僚を助けることになる。
もっとも、それにもかかわらず、一部外務官僚が歪曲された情報や偽情報を東京地方検察庁特別捜査部に提供し、筆者が企画した袴田茂樹青山学院大学教授、田中明彦東京大学大学院教授等を2000年4月、イスラエルのテルアビブ大学で行われた学会に派遣したことが、背任事件として摘発されてしまった。この背後には、日本外務省と政界の反ユダヤ主義的グループの策動があるのだが、このことについては、筆者にもう少し力がついてから全容を明らかにしたいと思う。イスラエルはインテリジェンス大国である。筆者の事件を契機に日本とイスラエルのインテリジェンス協力が頓挫したために失われた日本の国益は大きいと思う。残念で仕方ない。
なぜ、長々と筆者の事件について述べたかというと、官庁や企業の派閥抗争や権力闘争を利用して作られた事件は、情報が歪む可能性があるので、真実から乖離する危険があるということを読者に伝えたいからだ。今回の守屋前防衛事務次官を巡る事件は、山田洋行の内紛と防衛省の派閥抗争が複雑に絡み合って生じた事案と思う。東京地検特捜の捜査の手法は、元特捜検事の田中森一氏が『反転』(幻冬舎)で明らかにしているように、情報提供者の犯罪についてはお目こぼしし、狙った有名人を必ず犯罪者に仕立てる国策捜査の手法を用いる。
守屋氏は、防衛省のドンと言われた男だ。もっと腹を括って堂々とした態度をとってほしい。証人喚問の中継で動画を避けてくれなどといって泣きを入れるような人物が国防を担っていたと考えると、「これで日本の国は大丈夫か」と心配になってくる。筆者は、国会議員と高級官僚は、個人情報保護法の適用外にすべきというのが持論だ。大きな権力をもつ者、とくに自衛隊という国際スタンダードでは明白に軍隊である暴力装置をもつ防衛省の事務方トップについては、「プライバシーはない。全てを日本国家に捧げている」くらいの気持ちをもって欲しい。現場の自衛官は、一度有事になれば、日本の国のために命を投げ出さねばならない。元次官がフニャフニャしているのでは、自衛隊の士気に悪影響を与える。
守屋氏は、自らにとって都合のいいことも悪いことも洗いざらい正直に話せばよい。既に国策捜査の対象になっているのだから、絶対に逃れられない。腹を括ることだ。(2007年10月30日脱稿)
プロフィール:
佐藤優(さとう・まさる)…1960年、東京都生まれ。作家・起訴休職外務事務官。日本の政治・外交問題について、講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。
著書に「国家の罠」(新潮社)など。
眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧
筆者も5年半前、鈴木宗男疑惑の絡みで激しいメディア・バッシングを受けた。しかし、マスコミに対する恨みは全くない。外務省内部の権力闘争を背景に、一部外務官僚が、筆者が「報償費(機密費)を横領している」、「赤坂に鈴木宗男氏にしてもらった豪邸がある」、「日本の国家秘密をイスラエルに流している」などの事実無根の情報を流した。
報償費については、全て上司の決裁をとった上で、証拠書類を添付していた。赤坂5丁目に築30年のテラスハウスを借りて住んでいたが、月20万円の家賃はもちろん自分の給料から支払っていた。北方領土交渉の進展とともにひどい忙しさになり、超過勤務が月に300時間を超えるような状態になった。役所のタクシー券にも限りがあり、船橋の官舎に帰宅するために使うタクシー代の私費負担が20万円を超えたので、それならば少しでも睡眠時間を確保したいと思って外務省に徒歩で通うことができる赤坂に引っ越したのだ。それから、筆者はイスラエルとは良好な関係をもっていて、様々な意見交換や情報交換を行ったが、すべて上司の了承を得ており、日本の国益を毀損するようなことは一切していない。もっともマスコミの立場からすれば、「嘘をつかない」という建前になっている外務官僚や検察官が疑惑情報をリークすればそれに飛びつくのは当然だ。筆者の事例でも、悪いのは「鈴木宗男を潰すためにはなにをしてもいい」と考えて偽情報を流した当時の外務省執行部の連中だ。だから筆者がマスコミを恨むと、それは結果として、本当の敵である腐敗外務官僚を助けることになる。
もっとも、それにもかかわらず、一部外務官僚が歪曲された情報や偽情報を東京地方検察庁特別捜査部に提供し、筆者が企画した袴田茂樹青山学院大学教授、田中明彦東京大学大学院教授等を2000年4月、イスラエルのテルアビブ大学で行われた学会に派遣したことが、背任事件として摘発されてしまった。この背後には、日本外務省と政界の反ユダヤ主義的グループの策動があるのだが、このことについては、筆者にもう少し力がついてから全容を明らかにしたいと思う。イスラエルはインテリジェンス大国である。筆者の事件を契機に日本とイスラエルのインテリジェンス協力が頓挫したために失われた日本の国益は大きいと思う。残念で仕方ない。
なぜ、長々と筆者の事件について述べたかというと、官庁や企業の派閥抗争や権力闘争を利用して作られた事件は、情報が歪む可能性があるので、真実から乖離する危険があるということを読者に伝えたいからだ。今回の守屋前防衛事務次官を巡る事件は、山田洋行の内紛と防衛省の派閥抗争が複雑に絡み合って生じた事案と思う。東京地検特捜の捜査の手法は、元特捜検事の田中森一氏が『反転』(幻冬舎)で明らかにしているように、情報提供者の犯罪についてはお目こぼしし、狙った有名人を必ず犯罪者に仕立てる国策捜査の手法を用いる。
守屋氏は、防衛省のドンと言われた男だ。もっと腹を括って堂々とした態度をとってほしい。証人喚問の中継で動画を避けてくれなどといって泣きを入れるような人物が国防を担っていたと考えると、「これで日本の国は大丈夫か」と心配になってくる。筆者は、国会議員と高級官僚は、個人情報保護法の適用外にすべきというのが持論だ。大きな権力をもつ者、とくに自衛隊という国際スタンダードでは明白に軍隊である暴力装置をもつ防衛省の事務方トップについては、「プライバシーはない。全てを日本国家に捧げている」くらいの気持ちをもって欲しい。現場の自衛官は、一度有事になれば、日本の国のために命を投げ出さねばならない。元次官がフニャフニャしているのでは、自衛隊の士気に悪影響を与える。
守屋氏は、自らにとって都合のいいことも悪いことも洗いざらい正直に話せばよい。既に国策捜査の対象になっているのだから、絶対に逃れられない。腹を括ることだ。(2007年10月30日脱稿)
プロフィール:
佐藤優(さとう・まさる)…1960年、東京都生まれ。作家・起訴休職外務事務官。日本の政治・外交問題について、講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。
著書に「国家の罠」(新潮社)など。
眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
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