亀田祭り? 常軌を逸したメディア報道
2007年10月20日04時35分 / 提供:PJ
10月17日午後5時過ぎから始まった亀田史郎トレーナー、亀田大毅選手の記者会見の模様が民放テレビ各局の夕方の報道番組でその一部始終がつぶさに報じられた。また天下のNHKも7時のニュースにおいて簡単ではあったが、会見の模様を伝えた。
一体、この国に何の一大事が起きたのかと思うほどのこのテレビ各局の一斉報道であった。8分間にも満たぬ短時間で終了した謝罪会見をTV各局は17日当日の夜の報道番組、翌日の朝の報道・情報番組でこれでもかこれでもかというほどに大きく取り上げた。
TBSは18日深夜1時1分からドキュメンタリー番組「バース・デイ」で内藤大助選手と亀田大毅選手のWBC世界フライ級タイトルマッチの舞台裏を特集する予定であった(16日に急きょ、番組差し替えを決定)。亀田一家のボクシングのサクセス・ストリーをそれこそ局を挙げサポートしてきたそのTBSにいたっては、謝罪会見が同時並行で行われていた17日夕方の「イブニング5」(キャスター三雲孝江らが出演するニュース&ワイド番組)のなかで、時間を置いて何回か繰り返し(わたしが見たところでは3回)この会見の様子を伝えた。
そしてテレビで会見を観るチャンピオンの内藤選手にイヤホンをつけさせ、そのコメントを求めたりした。この方式は他局も同様に行っていたものの、TBSがそれをやると、内藤選手が「もう済んだことです。ああいう態度の亀田親子を見たのは初めて、次に会うときにはお疲れさまとたたえ合いたい」と、大人の対応を見せる善き人の姿を伝え、同選手をことさらに持ち上げることで、これまで同局が亀田一家に偏向した報道姿勢をとってきたことを、何とかうやむやにし帳消しにしようとしているとしか映らなかった。
さらに試合翌日(12日)のTBSの「みのもんたの朝ズバッ!」で内藤選手だけでなく奥さま、子供さんまでインタビューに引きずり出してこれまでの苦労話などをさせていたことなど、つい試合前日までは「カメダ!」「カメダ!」と叫び、情報・報道番組のキャスターのテーブル上に「10月11日亀田大毅WBCタイトルマッチ」と目障りなまでに番組宣伝を行っていた亀田家一筋だったはずのTBS。
そのTBSの亀田一家に対するこれまでの一連の報道のあり方、そして今回の豹変ぶりを見るにいたって、このテレビ局には「公共の電波」という「公共財」を使用しているのだというテレビ会社としての意識がまったく欠けているのではないかと思わざるを得なかったのである。
放送法第一章第一条の「目的」には、次の三つの原則に従って「放送は公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図る」と謳(うた)われている。
一.放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二.放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。
三.放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。
この放送法の目的の原点に立ち返り、これまでTBSが亀田一家を取り扱ってきた番組編集の姿勢を顧みたとき、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保し、公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図る」ことから、その姿勢はほど遠いところにあると評さざるを得ない。
ヒーローを手作りで育て上げてゆく面白さを知り、お手軽に視聴率や注目度を上げることに酔い痴(し)れてしまったTBSの姿は、何もこのテレビ局に止まらず他のテレビ局や大手新聞社も五十歩百歩であるようにも思える。「公共財」を使用するとは言っても、メディアも私企業である。自社が放映権なり協賛、スポンサーをする競技大会やイベントの宣伝に力を入れ、視聴率を少しでも上げるまたは注目度を高める方策に努め、CM収入・販売部数を増やし利潤を追求すること自体は悪ではない。
しかし、そこはあくまでもメディアは「社会の興毅、もとい、公器」であり、だからこそ国民の知る権利を担保するうえで、諸々(もろもろ)のアドバンテージが与えられていることを忘れてはならない。限られた電波の使用しかり、記者クラブの存在、事件現場や法廷、国会内での取材特権、再販制度・特殊指定の容認等々、この規制緩和の時代にこれほどの優遇措置をメディアに与えている事実をわれわれももう一度思い起こす必要がある。タイトルマッチに係る一連の反則についての過熱報道にそもそもあきれていたが、この謝罪会見報道のメディア対応は、やはり度を越しており、常軌を逸しているとしか言えぬのである。
いま、国会ではテロ特措法やアフガンの海上給油・給水に限定した新法問題の取扱いが佳境に入ってきている。日本が国際社会の一員として、「テロとどう戦うのか」。第168回国会ではそれ以外にも年金問題、障害者自立支援法の抜本的見直しなど国民生活に密着した問題が山積している。放送は「公共の福祉、民主主義の発達に資する」という観点などと大上段に構えるまでもなく、国民に知らしむべき情報はボクシングの反則試合のその後の経過などでない、もっと違ったところにあることは自明であろう。
今回のテレビ局の亀田祭に狂騒する様を見るにつけ、現在の放送事業会社が「公共の福祉に適合するように規律」されているとはとても言えぬ代物であると強く感じた次第である。【了】
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一体、この国に何の一大事が起きたのかと思うほどのこのテレビ各局の一斉報道であった。8分間にも満たぬ短時間で終了した謝罪会見をTV各局は17日当日の夜の報道番組、翌日の朝の報道・情報番組でこれでもかこれでもかというほどに大きく取り上げた。
TBSは18日深夜1時1分からドキュメンタリー番組「バース・デイ」で内藤大助選手と亀田大毅選手のWBC世界フライ級タイトルマッチの舞台裏を特集する予定であった(16日に急きょ、番組差し替えを決定)。亀田一家のボクシングのサクセス・ストリーをそれこそ局を挙げサポートしてきたそのTBSにいたっては、謝罪会見が同時並行で行われていた17日夕方の「イブニング5」(キャスター三雲孝江らが出演するニュース&ワイド番組)のなかで、時間を置いて何回か繰り返し(わたしが見たところでは3回)この会見の様子を伝えた。
そしてテレビで会見を観るチャンピオンの内藤選手にイヤホンをつけさせ、そのコメントを求めたりした。この方式は他局も同様に行っていたものの、TBSがそれをやると、内藤選手が「もう済んだことです。ああいう態度の亀田親子を見たのは初めて、次に会うときにはお疲れさまとたたえ合いたい」と、大人の対応を見せる善き人の姿を伝え、同選手をことさらに持ち上げることで、これまで同局が亀田一家に偏向した報道姿勢をとってきたことを、何とかうやむやにし帳消しにしようとしているとしか映らなかった。
さらに試合翌日(12日)のTBSの「みのもんたの朝ズバッ!」で内藤選手だけでなく奥さま、子供さんまでインタビューに引きずり出してこれまでの苦労話などをさせていたことなど、つい試合前日までは「カメダ!」「カメダ!」と叫び、情報・報道番組のキャスターのテーブル上に「10月11日亀田大毅WBCタイトルマッチ」と目障りなまでに番組宣伝を行っていた亀田家一筋だったはずのTBS。
そのTBSの亀田一家に対するこれまでの一連の報道のあり方、そして今回の豹変ぶりを見るにいたって、このテレビ局には「公共の電波」という「公共財」を使用しているのだというテレビ会社としての意識がまったく欠けているのではないかと思わざるを得なかったのである。
放送法第一章第一条の「目的」には、次の三つの原則に従って「放送は公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図る」と謳(うた)われている。
一.放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二.放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。
三.放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。
この放送法の目的の原点に立ち返り、これまでTBSが亀田一家を取り扱ってきた番組編集の姿勢を顧みたとき、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保し、公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図る」ことから、その姿勢はほど遠いところにあると評さざるを得ない。
ヒーローを手作りで育て上げてゆく面白さを知り、お手軽に視聴率や注目度を上げることに酔い痴(し)れてしまったTBSの姿は、何もこのテレビ局に止まらず他のテレビ局や大手新聞社も五十歩百歩であるようにも思える。「公共財」を使用するとは言っても、メディアも私企業である。自社が放映権なり協賛、スポンサーをする競技大会やイベントの宣伝に力を入れ、視聴率を少しでも上げるまたは注目度を高める方策に努め、CM収入・販売部数を増やし利潤を追求すること自体は悪ではない。
しかし、そこはあくまでもメディアは「社会の興毅、もとい、公器」であり、だからこそ国民の知る権利を担保するうえで、諸々(もろもろ)のアドバンテージが与えられていることを忘れてはならない。限られた電波の使用しかり、記者クラブの存在、事件現場や法廷、国会内での取材特権、再販制度・特殊指定の容認等々、この規制緩和の時代にこれほどの優遇措置をメディアに与えている事実をわれわれももう一度思い起こす必要がある。タイトルマッチに係る一連の反則についての過熱報道にそもそもあきれていたが、この謝罪会見報道のメディア対応は、やはり度を越しており、常軌を逸しているとしか言えぬのである。
いま、国会ではテロ特措法やアフガンの海上給油・給水に限定した新法問題の取扱いが佳境に入ってきている。日本が国際社会の一員として、「テロとどう戦うのか」。第168回国会ではそれ以外にも年金問題、障害者自立支援法の抜本的見直しなど国民生活に密着した問題が山積している。放送は「公共の福祉、民主主義の発達に資する」という観点などと大上段に構えるまでもなく、国民に知らしむべき情報はボクシングの反則試合のその後の経過などでない、もっと違ったところにあることは自明であろう。
今回のテレビ局の亀田祭に狂騒する様を見るにつけ、現在の放送事業会社が「公共の福祉に適合するように規律」されているとはとても言えぬ代物であると強く感じた次第である。【了】
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 野田 博明
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