【保田隆明の眼光紙背】第3回:時価総額10兆円を超えた任天堂の次の戦略
2007年10月19日11時00分 / 提供:眼光紙背
DSとWiiで快進撃を続ける任天堂の株価が右肩上がりで上昇し、今や日本企業の中ではトヨタ、三菱UFJに次いで3番目の時価総額、10兆円の大台に乗ってきました。DSとWiiが好調だということは知っていても、時価総額ベースでそれほど高い評価をされるまでになっていることに驚いた方も多いと思います。
さて、この任天堂ですが、先日2007年秋のカンファレンスを開催し、新商品と今後の戦略についての発表を経営陣が行いました。その主な内容としては、オンラインゲームへの取り組みの強化、そしてWii Fitの発表です。
■家庭用ゲームの利用時間と利用層の拡大
家庭用テレビゲームでは、家庭内での可処分時間が増えないことには市場が拡大しません。そこで、Wiiは、家族のコミュニケーションの時間をゲーム時間に転換することで、その可処分時間の確保を目指しました。他方、DSは外出先でも楽しめるゲーム市場を開拓することで、ゲームを楽しんでもらう時間を家庭内に限らず、外出中の時間をも取り込みました。同時にWii、DSはそれまでゲームをしなかった層をもゲームユーザーとして取り込みました。
この任天堂の動きを図で表すと、縦軸にゲーム利用時間、横軸にユーザー数を取って考えると、その範囲が右上方向に向かって伸びているイメージとなります。時価総額上昇は、その利用時間とユーザー数の拡大によってもたらされたものです。
■利用者離れが最大のリスク
さて、今の任天堂にとっての課題は、広がったこの利用時間とユーザー数を維持していくことです。ゲームにとっての最大の敵は飽きです。せっかく初心者を取り込んだ初心者が飽きてしまいゲーム離れを起こしてしまうと、再び戻ってきてもらうのはより困難になることでしょう。
もともとはゲームを楽しむという行動習慣を持たなかったのが、この初心者層です。うまく興味を持続させる仕掛けを作らないことには、ゲームに飽きるのも早いはず。そこで任天堂は従来のゲームの枠にとらわれることのない商品としてWii Fitを開発したということになります。
■Wii Fitで商品のライフサイクルの長期化を狙う
Wii Fitはその名の通り、家庭内でWiiを用いてフィットネスをすることができる商品です。メタボ対策が社会的現象となる中、家庭内で楽しめるフィットネスは、ビリーズブートキャンプの盛り上がりを見るまでもなくニーズが高まっています。また、任天堂にしてみると、ゲーム初心者の更なる獲得と維持を行えるソフトの充実が需要であることは当然のこととして、消費者に飽きられない、長期にわたって使用してもらえるソフトを提供することは非常に重要です。その点、Wii Fitでは毎回の活動内容や体重を記録していくことで、何年にもわたって自らのフィットネスの効果の確認を行うことができます。そして、フィットネスをするには利用するには毎回Wiiを立ち上げることになります。この毎日触ってもらう機器になるというのが任天堂の今後の戦略にとって非常に重要です。
■次はオンラインでの取りこみ
一度、あるモノが人々の行動習慣に組み込まれると、そのモノを経由して様々なサービスを提供することが可能になります。Wiiに毎日触れている人に、何か新たなものを提供するには、新たなソフトを発売するという手法がありますが、そのためには常に新たに発売する商品を認知させる必要があります。もともとゲーマーではない初心者層が新作ソフトに常に注意を払うとはなかなか考えられません。しかし、Wiiにはネット接続環境が付いています。ネットを通じて利用者へアプローチが可能であることが、今後の可能性拡大に大いに貢献すると思われます。今の利用率は購入者の4割程度だそうですが、この割合を高めていけば、人々のPCや携帯の利用時間をも奪うことが可能です。
そうなると、Wiiはゲームというカテゴリーを超えて、利用シーンが圧倒的に広がります。それこそが次の任天堂のアクションプランになっていくはずです。実際、今回の秋のカンファレンスでは、今後はオンライン戦略の強化を行うという話がありました。
ネットへの取り組みは、他のゲーム企業、そしてテレビを作る各家電メーカーも模索してきた分野ではあります。しかし、今のところ成功している企業はありません。そこでWiiが成功することになれば、Wiiの時価総額がソニーや松下など家電メーカー各社をも上回っていることも、ますます納得がいきそうです。
右肩上がりを続けてきた任天堂株にたいしては加熱警戒感の声が出てきていますが、オンライン戦略の成功が今後の鍵を握ることは間違いなさそうです。
プロフィール:
保田隆明(ほうだ・たかあき)…1974年生まれ。投資銀行などの勤務を経て、ワクワク経済研究所代表。金融、ビジネストレンドについて、書籍・テレビ・ラジオ・ブログを通じてわかりやすく解説している。公式サイト:http://wkwk.tv/
眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧
さて、この任天堂ですが、先日2007年秋のカンファレンスを開催し、新商品と今後の戦略についての発表を経営陣が行いました。その主な内容としては、オンラインゲームへの取り組みの強化、そしてWii Fitの発表です。
■家庭用ゲームの利用時間と利用層の拡大
家庭用テレビゲームでは、家庭内での可処分時間が増えないことには市場が拡大しません。そこで、Wiiは、家族のコミュニケーションの時間をゲーム時間に転換することで、その可処分時間の確保を目指しました。他方、DSは外出先でも楽しめるゲーム市場を開拓することで、ゲームを楽しんでもらう時間を家庭内に限らず、外出中の時間をも取り込みました。同時にWii、DSはそれまでゲームをしなかった層をもゲームユーザーとして取り込みました。
この任天堂の動きを図で表すと、縦軸にゲーム利用時間、横軸にユーザー数を取って考えると、その範囲が右上方向に向かって伸びているイメージとなります。時価総額上昇は、その利用時間とユーザー数の拡大によってもたらされたものです。
■利用者離れが最大のリスク
さて、今の任天堂にとっての課題は、広がったこの利用時間とユーザー数を維持していくことです。ゲームにとっての最大の敵は飽きです。せっかく初心者を取り込んだ初心者が飽きてしまいゲーム離れを起こしてしまうと、再び戻ってきてもらうのはより困難になることでしょう。
もともとはゲームを楽しむという行動習慣を持たなかったのが、この初心者層です。うまく興味を持続させる仕掛けを作らないことには、ゲームに飽きるのも早いはず。そこで任天堂は従来のゲームの枠にとらわれることのない商品としてWii Fitを開発したということになります。
■Wii Fitで商品のライフサイクルの長期化を狙う
Wii Fitはその名の通り、家庭内でWiiを用いてフィットネスをすることができる商品です。メタボ対策が社会的現象となる中、家庭内で楽しめるフィットネスは、ビリーズブートキャンプの盛り上がりを見るまでもなくニーズが高まっています。また、任天堂にしてみると、ゲーム初心者の更なる獲得と維持を行えるソフトの充実が需要であることは当然のこととして、消費者に飽きられない、長期にわたって使用してもらえるソフトを提供することは非常に重要です。その点、Wii Fitでは毎回の活動内容や体重を記録していくことで、何年にもわたって自らのフィットネスの効果の確認を行うことができます。そして、フィットネスをするには利用するには毎回Wiiを立ち上げることになります。この毎日触ってもらう機器になるというのが任天堂の今後の戦略にとって非常に重要です。
■次はオンラインでの取りこみ
一度、あるモノが人々の行動習慣に組み込まれると、そのモノを経由して様々なサービスを提供することが可能になります。Wiiに毎日触れている人に、何か新たなものを提供するには、新たなソフトを発売するという手法がありますが、そのためには常に新たに発売する商品を認知させる必要があります。もともとゲーマーではない初心者層が新作ソフトに常に注意を払うとはなかなか考えられません。しかし、Wiiにはネット接続環境が付いています。ネットを通じて利用者へアプローチが可能であることが、今後の可能性拡大に大いに貢献すると思われます。今の利用率は購入者の4割程度だそうですが、この割合を高めていけば、人々のPCや携帯の利用時間をも奪うことが可能です。
そうなると、Wiiはゲームというカテゴリーを超えて、利用シーンが圧倒的に広がります。それこそが次の任天堂のアクションプランになっていくはずです。実際、今回の秋のカンファレンスでは、今後はオンライン戦略の強化を行うという話がありました。
ネットへの取り組みは、他のゲーム企業、そしてテレビを作る各家電メーカーも模索してきた分野ではあります。しかし、今のところ成功している企業はありません。そこでWiiが成功することになれば、Wiiの時価総額がソニーや松下など家電メーカー各社をも上回っていることも、ますます納得がいきそうです。
右肩上がりを続けてきた任天堂株にたいしては加熱警戒感の声が出てきていますが、オンライン戦略の成功が今後の鍵を握ることは間違いなさそうです。
プロフィール:
保田隆明(ほうだ・たかあき)…1974年生まれ。投資銀行などの勤務を経て、ワクワク経済研究所代表。金融、ビジネストレンドについて、書籍・テレビ・ラジオ・ブログを通じてわかりやすく解説している。公式サイト:http://wkwk.tv/
眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧
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