【イ毛メン通信】少しはイ毛メンになれた?(最終話)
2007年12月03日10時30分 / 提供:イ毛メン通信
上司に辞令を渡されたのは、実家へ帰省してから1ヶ月後のことだった。
「海外支店で急なプロジェクトが立ち上がることになったんだ。即戦力が欲しいということで、キミを推薦していたんだけど、正式にGOサインが出たぞ。さっそく来週から3ヶ月間、香港に行って欲しい」
「ボクがですか!?」
「最近の仕事ぶりを見て決めたんだ。お前には部下もつくぞ。栄転だ」
まだ年齢が若いこともあって役付ではないが、実質的な昇進だった。バリモテ先輩に報告すると、「よーしお祝いだ!」と自分のことのように喜んでくれている。ボクはもちろん嬉しいのだが、3ヶ月間もエビ子ちゃんに会えないのはどうしたものだろう。複雑な心境だった。
「まずはプライベートな送別会を開こう。メンバーは、オレとお前とエビ子」
「ええー!」
「で、さっそくエビ子の約束も取り付けた。あさっての金曜日、Xホテルのワインバーだ。夜景がきれいだぞ」とバリモテ先輩は意味深に笑った。
そして待ち合わせ当日。エビ子ちゃんと二人でバリモテ先輩を待っていると、
「残業で行けなくなった。悪いけど、今日は二人で飲んでくれ」と電話が入った。バリモテ先輩、作戦がベタすぎる…。
しかし、ボク1人だったらこの期に及んでもエビ子ちゃんをデートに誘うことなどできなかったと思う。
「二人になっちゃったけど、いいかな?」
緊張しながら尋ねると、エビ子ちゃんはニッコリとうなずいてくれた。この笑顔もしばらくの見納めかと思うと何だか切なく、ふたりで過ごす時間が貴重に思えた。
「向こうでの生活に心配はないんだ。エビ子ちゃんのおかげで自炊も慣れてきたし、すすめてもらったシャンプーも持っていくから」
「今度は向こうの野菜で作れる和食レシピをメールで送りますよ」
「ボクも、中華料理を覚えてレシピを送るね」
ふたりで笑いあった。打ち解けた雰囲気になったところで、ボクはずっと疑問に思っていたことをエビ子ちゃんに切り出した。
「エビ子ちゃん、もしかしてバリモテ先輩を好きなんじゃない?」
彼女はハッとした表情を見せる。そして、しっかりとボクの目を見つめながら答えた。
「今は吹っ切れたけれど、以前は好きでした。それから、バリモテさんからよくイ毛メンさんの話を伺っていて、勝手にイ毛メンさんのこと友達みたいに思ってしまいました。だけど、どうして気がついたんですか?」
それはボクがキミを見ているから…とは気恥ずかしくて言えなかった。
「ちゃんと先輩に気持ちを伝えたの?」
「バリモテさんは10歳も年上だし、私のことは妹としてしか見てくれなかったから、告白なんて絶対に無理だった。それに振られるのが怖かったのかなぁ」
ボクはショックだったが、それよりも思いを伝え切れなかった彼女の気持ちをおもんばかり胸が痛くなった。片思いの切なさは誰よりも知っている。
「バリモテ先輩はまったく気がついていなかったんじゃない?」
「それも自業自得だから、もういいの。だから私、イ毛メンさんに告白されたとき、生意気な言い方だけど、ちょっぴり見直しちゃった」
「あんな玉砕覚悟の告白だったのに!?」
「何も計算しないでまっすぐぶつかってくれたから、イ毛メンさんは私にはない勇気を持っていると思った。あの時は、まだバリモテさんに未練があってうまく答えられなかったけど、まだ返事間に合うかな?」
「間に合う、間に合う、間に合う!」
「イ毛メンさんのこと、前向きに考えさせてください。一生懸命に自分を変えたイ毛メンさんの姿に、私、元気をもらったの」
驚きのあまり、口に含んでいたワインをぶーっと噴出してしまった。大慌てでおしぼりでスーツを拭いていると、エビ子ちゃんが笑いながら手伝ってくれる。
「海外支店で急なプロジェクトが立ち上がることになったんだ。即戦力が欲しいということで、キミを推薦していたんだけど、正式にGOサインが出たぞ。さっそく来週から3ヶ月間、香港に行って欲しい」
「ボクがですか!?」
「最近の仕事ぶりを見て決めたんだ。お前には部下もつくぞ。栄転だ」
まだ年齢が若いこともあって役付ではないが、実質的な昇進だった。バリモテ先輩に報告すると、「よーしお祝いだ!」と自分のことのように喜んでくれている。ボクはもちろん嬉しいのだが、3ヶ月間もエビ子ちゃんに会えないのはどうしたものだろう。複雑な心境だった。
「まずはプライベートな送別会を開こう。メンバーは、オレとお前とエビ子」
「ええー!」
「で、さっそくエビ子の約束も取り付けた。あさっての金曜日、Xホテルのワインバーだ。夜景がきれいだぞ」とバリモテ先輩は意味深に笑った。
そして待ち合わせ当日。エビ子ちゃんと二人でバリモテ先輩を待っていると、
「残業で行けなくなった。悪いけど、今日は二人で飲んでくれ」と電話が入った。バリモテ先輩、作戦がベタすぎる…。
しかし、ボク1人だったらこの期に及んでもエビ子ちゃんをデートに誘うことなどできなかったと思う。
「二人になっちゃったけど、いいかな?」
緊張しながら尋ねると、エビ子ちゃんはニッコリとうなずいてくれた。この笑顔もしばらくの見納めかと思うと何だか切なく、ふたりで過ごす時間が貴重に思えた。
「向こうでの生活に心配はないんだ。エビ子ちゃんのおかげで自炊も慣れてきたし、すすめてもらったシャンプーも持っていくから」
「今度は向こうの野菜で作れる和食レシピをメールで送りますよ」
「ボクも、中華料理を覚えてレシピを送るね」
ふたりで笑いあった。打ち解けた雰囲気になったところで、ボクはずっと疑問に思っていたことをエビ子ちゃんに切り出した。
「エビ子ちゃん、もしかしてバリモテ先輩を好きなんじゃない?」
彼女はハッとした表情を見せる。そして、しっかりとボクの目を見つめながら答えた。
「今は吹っ切れたけれど、以前は好きでした。それから、バリモテさんからよくイ毛メンさんの話を伺っていて、勝手にイ毛メンさんのこと友達みたいに思ってしまいました。だけど、どうして気がついたんですか?」
それはボクがキミを見ているから…とは気恥ずかしくて言えなかった。
「ちゃんと先輩に気持ちを伝えたの?」
「バリモテさんは10歳も年上だし、私のことは妹としてしか見てくれなかったから、告白なんて絶対に無理だった。それに振られるのが怖かったのかなぁ」
ボクはショックだったが、それよりも思いを伝え切れなかった彼女の気持ちをおもんばかり胸が痛くなった。片思いの切なさは誰よりも知っている。
「バリモテ先輩はまったく気がついていなかったんじゃない?」
「それも自業自得だから、もういいの。だから私、イ毛メンさんに告白されたとき、生意気な言い方だけど、ちょっぴり見直しちゃった」
「あんな玉砕覚悟の告白だったのに!?」
「何も計算しないでまっすぐぶつかってくれたから、イ毛メンさんは私にはない勇気を持っていると思った。あの時は、まだバリモテさんに未練があってうまく答えられなかったけど、まだ返事間に合うかな?」
「間に合う、間に合う、間に合う!」
「イ毛メンさんのこと、前向きに考えさせてください。一生懸命に自分を変えたイ毛メンさんの姿に、私、元気をもらったの」
驚きのあまり、口に含んでいたワインをぶーっと噴出してしまった。大慌てでおしぼりでスーツを拭いていると、エビ子ちゃんが笑いながら手伝ってくれる。
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