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【イ毛メン通信】本当に素敵な男になるには(第11話)
2007年11月26日10時30分 / 提供:イ毛メン通信
久々の連休、ボクは半年ぶりに帰省した。実家では小さな果樹園を営む両親が二人で暮らしている。
「突然帰ってきてびっくりしたわ」
と言いながらも、母親は嬉しそうにボクの大好物をいくつも作ってくれた。その一方、父は顔を見るなり、「お前、髪の毛が増えたんじゃないか?」と驚いた表情を見せた。
「うちの家系は、じいさんからそのまたじいさんまで全員つるつる」
という父もまた、薄毛。本人は気にしているそぶりはないが、若い頃はかつらを試したこともあったそうだ。それだけに、まだ30代のボクの頭髪が気にかかるのだろう。
「まぁ、いつかはお前も俺みたいになってしまうかもしれない。だけど、抜け毛に振り回されず、どっしり構えていることが大切なんだ」
ちなみに母親は白髪も少なく髪もつやつや。「男は髪じゃない」と言われても、抜け毛だけでも動揺してしまうボクは、母方の血を濃く受け継ぎたいと思ってしまう。
「それにしても、お前は若返ったなぁ。顔ツヤもいいし、何か顔つきがしっかりしてきたな」と父親。
「うふふ。すてきな女性でも見つかったの?」
母親は探るような目をしてボクを見る。
「そうなのか? いよいよお前も結婚か」
「母さんは別に同居なんてしなくてもいいと思うの。若い二人で好きに暮らしなさい」
「父さんも挨拶にいかなくちゃいけないなぁ」
「ちょっと、待ったー!!」
なぜか両親の話はすぐに飛躍する。お嫁さんどころか、社内のマドンナに無謀にも片思いしているというのに。
「今さらだけど、ボクは自分を変えたいと思っているんだ。だからダイエットに取り組んだし、服装や髪型にもこだわるようになった。できれば、会社でも責任のあるセクションにつきたいと思って、仕事も頑張っている最中。彼女なんて、まだまだ先の話だよ!」
つい、突き放すような口調になってしまった。「彼女だ、嫁だ」と浮かれているふたりはガッカリしたかもしれない。申し訳ないとは思ったが、何を言ってよいのかそれ以上言葉が浮かばず、しんとした空気を打ち消すようにコリコリと母親の漬物を食べた。
「大丈夫だよ、お前なら」
父が言ったのはその一言だけだった。根拠のない父親の「大丈夫」。何が、どう大丈夫なんだろう? エビ子ちゃんに失恋したことも、それでも彼女に振り向いて欲しくて、「イ毛メン化プロジェクト」に励んでいることも言っていない。だけど父はすべてを知っているかのように、目をつぶってうなずいていた。
東京に戻るとき、母親が自家製の果実酒を何本も持たせてくれた。
「こんなに持っていけないよ」と思ったが、これも愛情だと受け止めて持ち帰る。母がボクに作る酒は、いつも甘めだ。小さい頃、母の果実ジュースを「酸っぱい」と言ったのを今でも覚えていて、砂糖を多めに入れてくれる。いつまでも子供じゃないのになぁと思いながらも、その甘さは心地よかった。
そして翌朝、ボクは果実酒の1本をエビ子ちゃんに持っていくことにした。以前、シャンプーをもらったお礼だ。エビ子ちゃんの姿を見ると相変わらず緊張するが、父親の「大丈夫」という言葉を思い浮かべながら、総務部の扉をノックした。
■関連リンク
髪にやさしいコラム「脱毛は遺伝する?」
<登場人物>
イ毛メンくん 33歳
海川商事のSE 趣味はお酒を飲むこと。彼女いない歴5年。最近お腹も出てきて、脱毛がひどくなってきたことが悩み。3ヶ月くらい前から総務のエビ子のことが気になっているが、自信がなくて声がかけられない。山梨県出身。
バリモテ先輩 35歳
35歳 独身、女性社員の憧れの的でイ毛メンくんの上司。仕事ができると社内外で評判。髪の毛はフサフサで、引き締まった体をしている。毎晩いろいろな女性とデートをしているせいか残業は一切しない。大阪府出身。
エビ子 25歳
総務部 入社3年目。明るい笑顔がカワイイと社内の人気者。趣味は料理で料理教室に通っている。東京都出身。
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「突然帰ってきてびっくりしたわ」
と言いながらも、母親は嬉しそうにボクの大好物をいくつも作ってくれた。その一方、父は顔を見るなり、「お前、髪の毛が増えたんじゃないか?」と驚いた表情を見せた。
「うちの家系は、じいさんからそのまたじいさんまで全員つるつる」
という父もまた、薄毛。本人は気にしているそぶりはないが、若い頃はかつらを試したこともあったそうだ。それだけに、まだ30代のボクの頭髪が気にかかるのだろう。
「まぁ、いつかはお前も俺みたいになってしまうかもしれない。だけど、抜け毛に振り回されず、どっしり構えていることが大切なんだ」
ちなみに母親は白髪も少なく髪もつやつや。「男は髪じゃない」と言われても、抜け毛だけでも動揺してしまうボクは、母方の血を濃く受け継ぎたいと思ってしまう。
「それにしても、お前は若返ったなぁ。顔ツヤもいいし、何か顔つきがしっかりしてきたな」と父親。
「うふふ。すてきな女性でも見つかったの?」
母親は探るような目をしてボクを見る。
「そうなのか? いよいよお前も結婚か」
「母さんは別に同居なんてしなくてもいいと思うの。若い二人で好きに暮らしなさい」
「父さんも挨拶にいかなくちゃいけないなぁ」
「ちょっと、待ったー!!」
なぜか両親の話はすぐに飛躍する。お嫁さんどころか、社内のマドンナに無謀にも片思いしているというのに。
「今さらだけど、ボクは自分を変えたいと思っているんだ。だからダイエットに取り組んだし、服装や髪型にもこだわるようになった。できれば、会社でも責任のあるセクションにつきたいと思って、仕事も頑張っている最中。彼女なんて、まだまだ先の話だよ!」
つい、突き放すような口調になってしまった。「彼女だ、嫁だ」と浮かれているふたりはガッカリしたかもしれない。申し訳ないとは思ったが、何を言ってよいのかそれ以上言葉が浮かばず、しんとした空気を打ち消すようにコリコリと母親の漬物を食べた。
「大丈夫だよ、お前なら」
父が言ったのはその一言だけだった。根拠のない父親の「大丈夫」。何が、どう大丈夫なんだろう? エビ子ちゃんに失恋したことも、それでも彼女に振り向いて欲しくて、「イ毛メン化プロジェクト」に励んでいることも言っていない。だけど父はすべてを知っているかのように、目をつぶってうなずいていた。
東京に戻るとき、母親が自家製の果実酒を何本も持たせてくれた。
「こんなに持っていけないよ」と思ったが、これも愛情だと受け止めて持ち帰る。母がボクに作る酒は、いつも甘めだ。小さい頃、母の果実ジュースを「酸っぱい」と言ったのを今でも覚えていて、砂糖を多めに入れてくれる。いつまでも子供じゃないのになぁと思いながらも、その甘さは心地よかった。
そして翌朝、ボクは果実酒の1本をエビ子ちゃんに持っていくことにした。以前、シャンプーをもらったお礼だ。エビ子ちゃんの姿を見ると相変わらず緊張するが、父親の「大丈夫」という言葉を思い浮かべながら、総務部の扉をノックした。
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イ毛メンくん 33歳
海川商事のSE 趣味はお酒を飲むこと。彼女いない歴5年。最近お腹も出てきて、脱毛がひどくなってきたことが悩み。3ヶ月くらい前から総務のエビ子のことが気になっているが、自信がなくて声がかけられない。山梨県出身。
バリモテ先輩 35歳
35歳 独身、女性社員の憧れの的でイ毛メンくんの上司。仕事ができると社内外で評判。髪の毛はフサフサで、引き締まった体をしている。毎晩いろいろな女性とデートをしているせいか残業は一切しない。大阪府出身。
エビ子 25歳
総務部 入社3年目。明るい笑顔がカワイイと社内の人気者。趣味は料理で料理教室に通っている。東京都出身。
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