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一般市民がプロ劇団と共演。公共ホール活性化のモデルづくり=横浜市(中)

一般市民がプロ劇団と共演。公共ホール活性化のモデルづくり=横浜市(中)
横浜市の一般公募で、29人が集まった。学生は5人。宮内咲希子さんは高校2年生。東京・狛江市の練習場で。(撮影:穂高健一、9月26日) 写真一覧(5件)
【PJ 2007年10月05日】− (上)からのつづき。横浜市泉区民文化センター(通称・テアトルフォンテ)から、一般公募による市民とプロ劇団との共演の話が持ち込まれた。

 U・フィールドは次の公演として『孤独な老婦人に気をつけて』に決めていた。「この作品は舞台に人数がいっぱい出てくると面白い。私たちの劇団だけでやると、15人ていどがマックス。横浜市の一般市民と連携すれば30、40人も可能だ」と井上さんたち劇団員は身を乗り出したのだという。

 U・フィールドとはいかなる劇団か。井上さんから聞いてみた。「私は26歳のとき、当時の日本で前衛劇(実験劇)ではかなり注目されていた、故・太田省吾さんが率いる『転形劇場』に入団しました」。それから約10年後、同劇団は解散になった。「結束力は強かった。逆にいえば、『転形劇場』は開かれず、ほかとの交流は極めてまれだったのです」。7人の同世代が集まり、新劇団の創設にむかった。

 「結束力はたいせつだけど、もう少し自由にやろうよ。『転形劇場』はフェンスに囲まれていたが、新設する劇団の囲いはくいを打ったていどでいい。ほかの劇団との出入りは自由にしようよ」と意見が一致した。

 くいが野原というイメージから、フィールドと決めた。それだけでは味気ない。アルファベットのなかで、気持ちの良い響きを持つ、Uを頭につけた。こうして「U・フィールド」が生まれたのだ。

 同劇団の旗揚げ公演を観て、武内紀子さんは入団したという。それから17年がたつ。現在の劇団員は6人。公演の都度、客演を招いて上演している。

 演目『孤独な老婦人に気をつけて』の選定について聞いてみた。一昨年、翻訳家の山田ひろ美さんがU・フィールドの芝居を観にきてくれた。まったくの初対面だった。「いまルーマニア出身の劇作家・マテイ・ヴィスニユック(1956年生まれ)の面白い短編戯曲集を翻訳中だけど、もしかしたら興味を持つんじゃないかしら」と勧めてくれた。3、4ヵ月後には翻訳が上がり、作品を送ってくれた。

 マテイ・ヴィスニユックさんは、80年代に多くの戯曲を書いたが、共産党政権下で、すべて上演禁止。87年にはフランスに政治亡命した。かれの作品の多くはフランス語で書かれ、20カ国で上演されている。最近では、母国ルーマニアで最も多く上演される劇作家となった。

 山田ひろ美さんが翻訳した15編にはこうした作者の境遇も反映されている。

 「人間はある局面で、こういう生き方を選ばざるを得ない。また、こうしか生きていけない。世界のどんな場所だって起こり得るものだ。日本だって、いつ起こらないともかぎらない」と演出家の井上さんは、作品の奥行きに魅せられたのだ。
 これを舞台で演じたならば、「人のたたずまい、表情とか、息遣い。演劇でしか見られない瞬間、瞬間がキラキラ出てくるはずだ」と強い確信をもったという。

 翻訳本の巻頭には『演出家は、それぞれの取材に基づいて、場面と順番を決めてよい』と書かれていた。井上さんは脚本作りのなかで、順番を並び替えるだけですまなくなった。一つの短編を三つの部分に分けたり、長せりふだけを取り出してキーワードにさせてもらったりした。それは乱暴な手術のような構成だった、と語る。

 1年半前、観光で来日したマテイさんと、井上さんは対面した。そして、構成を説明した。『劇作家と、演出家と、俳優とは、それぞれが独立した存在であるべきです。舞台は演出家の領域です。作家が提供した作品が、どう具体化されるのか、逆に楽しみ。あなたの好きなようにやってください』とマテイさんからいわれたという。

 日本では、言葉一つ変えるのにも大変。演出家にすべて任せてくれる劇作家はまずいないだろう。「作者は共産主義の弾圧の下で育ったから、自由を尊重する姿勢が鮮明なのでしょう」と井上さんはつけ加えた。【つづく】

■関連情報
U・フィールド『孤独な老婦人に気をつけて』
日時:10月13日、17:00開演
  10月14日、14:00開演
会場:横浜市泉区民文化センター テアトルフォンテホール
  045−805−4000
最寄駅:相鉄いずみ野線「いずみ中央駅」下車すぐ。横浜駅から約24分
有料駐車場、有り
料金:当日3800円、前売3600円、高校生以下2800円

記者HP:穂高健一ワールド
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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