裁判員制度、決める前になぜ実験をしなかったのか
2007年10月03日12時46分 / 提供:PJ
10月2日のNHK「おはよう日本」では裁判員制度による模擬裁判の模様を伝えていた。全く同じ想定の事件について模擬裁判が2カ所で行われたが、一方では殺人未遂で実刑判決、他方は傷害致死で執行猶予付き(実際の服役なし)の判決が出た。また、陪審員制度の国、アメリカでは死刑囚124人がDNA鑑定などによって無実が明らかになった。(8月29日放送のNHKクローズアップ現代による)
これらの事実をどう評価すべきだろうか。少なくとも素人が参加する陪審制や参審制の信頼性に疑問を投げかけるものであることは確かである。しかし、だからといって現行制度がよいと言うつもりはない。
裁判に市民感覚を取り入れるという理由で、いつのまにか決まった裁判員制度であるが、裁判員になりたくない人が7割を占めるなど、決まった後から問題が指摘されている観がある。裁判員は無作為に選ばれた候補者の中から、面接をした上で6名が選ばれるそうだが、この選抜基準が気にかかる。
果たして、裁判員としての適性、つまり常識、論理性、被暗示性、協調性などが短時間の面接で判断できるのだろうかと疑問である。例えば弁の立つカリスマ性のある人物を1人、付和雷同型の人物を5人選んだ場合などはどうしてもその1人に引っ張られるのではないか。また裁判員になりたくない者が、面接のときにトンチンカンな答えをすればどうなるのだろうか。
犯罪を構成する多くの要素を適切に評価していくことは難しい作業だ。たまたま議論の中心になった要素は大きい影響を与えるかもしれない。メディアの、予断を含んだ報道が影響を与える可能性も指摘されている。訓練を積んだ職業裁判官の判断に比べるとブレが大きくなるという懸念をぬぐえない。
いま行われている模擬裁判実験をなぜ制度の決定前に行わなかったのだろうか。社会実験の必要性と効果については「ゆとり教育の前になぜ実験をしなかったのか」(*1)に書いたが、裁判員制度の実験は規模も小さくてよく、金も大してかからない。
自然科学の世界では実験はあたりまえの手法なのだが、なぜか社会政策の分野では実験という発想が極めて少ない。いい加減な予想に基づいて実行し、結果が間違いであっても責任をとらされることがないシステムのためでもあろう。多分、いきあたりばったりが常態なのだ。
今からでも裁判実験をして妥当性を検証してから実施すべきだと思う。そして裁判員制度が不適切となれば、判事になる前に一定期間、実社会の経験を義務づけて市民感覚を身に着けてもらう方法もある。【了】
■関連情報
(*1)
噛みつき評論(記者のHP)
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これらの事実をどう評価すべきだろうか。少なくとも素人が参加する陪審制や参審制の信頼性に疑問を投げかけるものであることは確かである。しかし、だからといって現行制度がよいと言うつもりはない。
裁判に市民感覚を取り入れるという理由で、いつのまにか決まった裁判員制度であるが、裁判員になりたくない人が7割を占めるなど、決まった後から問題が指摘されている観がある。裁判員は無作為に選ばれた候補者の中から、面接をした上で6名が選ばれるそうだが、この選抜基準が気にかかる。
果たして、裁判員としての適性、つまり常識、論理性、被暗示性、協調性などが短時間の面接で判断できるのだろうかと疑問である。例えば弁の立つカリスマ性のある人物を1人、付和雷同型の人物を5人選んだ場合などはどうしてもその1人に引っ張られるのではないか。また裁判員になりたくない者が、面接のときにトンチンカンな答えをすればどうなるのだろうか。
犯罪を構成する多くの要素を適切に評価していくことは難しい作業だ。たまたま議論の中心になった要素は大きい影響を与えるかもしれない。メディアの、予断を含んだ報道が影響を与える可能性も指摘されている。訓練を積んだ職業裁判官の判断に比べるとブレが大きくなるという懸念をぬぐえない。
いま行われている模擬裁判実験をなぜ制度の決定前に行わなかったのだろうか。社会実験の必要性と効果については「ゆとり教育の前になぜ実験をしなかったのか」(*1)に書いたが、裁判員制度の実験は規模も小さくてよく、金も大してかからない。
自然科学の世界では実験はあたりまえの手法なのだが、なぜか社会政策の分野では実験という発想が極めて少ない。いい加減な予想に基づいて実行し、結果が間違いであっても責任をとらされることがないシステムのためでもあろう。多分、いきあたりばったりが常態なのだ。
今からでも裁判実験をして妥当性を検証してから実施すべきだと思う。そして裁判員制度が不適切となれば、判事になる前に一定期間、実社会の経験を義務づけて市民感覚を身に着けてもらう方法もある。【了】
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パブリック・ジャーナリスト 岡田 克敏
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