「『HOPE-LAST』シリーズ」のウェブサイトには、「完売」のお知らせが出ている

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   レジャーホテルに投資するファンド、いわゆる「ラブホテル・ファンド」の配当利回りが低下するという。なぜなのか。

   ラブホテルは、オフィスやマンションに投資する不動産ファンドと違って、新規参入がむずかしく大手企業との競争もなく、客室の回転率の高さがそのままファンドの高い収益性につながる。さらには不景気も関係ない産業として注目されて、高利回りが期待できるとはやされてきた。

金融商品取引法が追い討ちをかける

   実際に、グローバル・ファイナンシャル・サポートが運営するレジャーホテルファンド「HOPE-LAST」シリーズ(1口50万円から出資可能)で500万円を運用した場合、3年間で626万円になる。不動産ファンド全体では、このところ米国のサブプライム・ショックの影響もあって運用状況は芳しくないが、ラブホ・ファンドだけは違うとみられていたのに、今後は利回りが下がる可能性があるという。いったい、どういうわけだろう。

   ラブホ・ファンドの利回りが低下している理由について、ファンドへの総出資者数6000人、ファンド総額116億円を誇るレジャーホテルファンド「HOPE-LAST」シリーズを販売してきたグローバル・ファイナンシャル・サポートはこう説明する。

   「一番の理由は物件の取得価格の向上です。わたしたちの予想より早く価格が上がっています」。これに2007年9月末から施行される金融商品取引法が追い討ちをかける。

   同社はHOPEシリーズを11本、これまで個人投資家に対して直接販売してきた。それが金商法の施行で、直販できなくなるという。「わたしどもはこれまで商法に基づいて商品を販売してきました。それが金融商品取引法によって『ファンド』は有価証券の扱いとなり、販売するには証券会社の免許が必要になります。すぐに免許が取得できるわけではないので、現在、証券会社との提携によって販売してもらう方向で準備中です」と説明する。

   同社は年内にも提携する証券会社を通じて新しいファンドを販売する予定だが、そうなれば、販売手数料の支払いなど販売コストが上がる。通常の投資信託にある目論見書(商品説明書)なども必要になる。その分、これまで通りの利回りを確保できなくなるというわけだ。

   同社の調べでは、東京証券取引所第1部に上場する企業の平均配当は0.87%、10年もの国債1.69%、J-REIT2.70%(07年6月末)の配当利回りを示しているなかで、HOPEシリーズは8.40%となっている。しかし、「いまのところ、利回りが上がる要因はなかなか見つかりませんね」と話す。

利回りが下がることが、投資家保護?

   アニメ・ファンドや映画ファンド、オンラインゲーム信託ファンドなどを運営するジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)も、「任意組合が運営するファンドにはそういった(コストアップ)要因があるのかもしれません」と話す。ただ、同社の場合は影響は少ない、とする。

   同社は04年12月に改正された信託業法にともない信託免許を取得したが、それ以前(03年12月)に組成したアイドル・ファンド(グラビア・アイドルに投資するファンド)では、投資家保護のためのスキームづくりに腐心し、コストがかかったという。「そういった負担を軽減するためにも信託免許が必要だった」

   金融庁に届け出て認可を受けた証券会社等(信託代理店)を通じて販売しており、販売コストが上がる要因は少ない。「リスクの明記や対応しなければならないことは多くありますが、当社のスキームでは金商法への対応で(商品の)利回りが低下するようなことは考えにくい」(JDC信託)という。

   とはいえ、ニッチな「テーマ」のなかで、高利回りの魅力で集まってもらい、納得して投資してもらうプライベートファンドに、金商法の負担は軽くない。「金商法で、おかしなファンドが精査されることに異論はないですが、結果的に利回りが下がることが投資家保護なのでしょうかね」(グローバル・ファイナンシャル・サポート)と、首をかしげる。プライベートファンドのマーケットが萎みかねない懸念はあるようだ。