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【よこ顔】無声映画は静かなブーム。新進気鋭の活動写真弁士=片岡一郎さん(下)

【よこ顔】無声映画は静かなブーム。新進気鋭の活動写真弁士=片岡一郎さん(下)
明治文学の悲哀物語。往年の大スターの名演技と、美声弁士の片岡さんの語りで、涙を流した、心がしびれたと、ファンは感動を語る。東京・池袋の新文芸座で、(撮影:穂高健一、16日)
【PJ 2007年09月29日】− (中)からのつづき。無声映画のジャンルは、時代劇から恋物語などと幅が広い。1本の上映時間はまちまちで、平均すれば1時間強が多いようだ。活動写真弁士の台本は誰が書くのかと、片岡一郎さんに聞いてみた。

 「活動弁士が自分で、台本を書きます」。それには驚かされた。1本の台本作りは1週間くらいだという。この短い時間にも驚きを隠せなかった。「台本を自ら書くことは、名画を正面から勝負できる、喜びがあります。それは理屈ではないのです」と話す。

 マツダ映画社が無声映画フィルムをビデオに起こしている。いまの活動写真弁士は原作を読み、ビデオを再生させながら台本を書く。昔の8000人の弁士はわずか2回くらいの試写で台本を書いていたという。それから見れば、いまは楽だという。

 「昔の弁士は日常の生活用品は見れば、すぐにわかったと思います。私にはスクリーンに映し出される、小道具が一体なんなのか? まったく分からないことが随所にあります」という。

 明治から昭和初期に活躍した弁士たちの台本がほとんど現存していない。それだけに、時代考証の面ではかなり苦労があるようだ。

 無声映画は三位一体で成り立つ。映画技師がスクリーンに映像を映しだす。弁士が登場人物の台詞(せりふ)を語る。オペレーターがMDでバックの音を流す。三者の呼吸によって上映された映画の評価につながる。

 活動弁士には決まった形式はないようだ。弁士のセンスは個人に委ねられる。「映像が映っているとき、弁士は自分の存在を主張しません」と話す。

 『折鶴お千』を見終わった観客から、片岡一郎弁士について感想を聞いてみた。東京・大泉学園町の並木裕樹さん(54)は、新文芸座の会員でもあり、1年間に350から400本の映画を観るという、映画の大フアンのようだ。そのうち無声映画は1年間に10本余り観るという

 「活動写真弁士の語りによって、映画の雰囲気がずいぶん違いますね。片岡弁士はきょうで二度目です。前回も今回も、盛り上げ方がうまい、いい弁士だと思いました。時折、講談調になり、格段におもしろい」と評す。

 50代の女性にも、同様のはなしを聞いてみた。「片岡弁士はスクリーンの男優と女優の声を、2時間ずっと調子を落とさず、疲れを見せず吹き替えています。これは素晴らしい。私は中国の通訳ですから、いい勉強になります」と話す。

 「おなじ無声映画でも字幕だけより、生の声の弁士付きが数段に良いですね。片岡弁士は悲しいところは悲しく語ってくれるし。雰囲気に誘い込まれます。入場料1300円は安いです」と絶賛する。

 昨今、各方面で映画史の研究はかなり進んでいる。しかし、無声映画を支えた8000人の活動写真弁士たちの歴史となると、学術的な研究がなされていない。片岡さんは自ら弁士の研究にも取り組みはじめた。

 「弁士の本名や生没年すらもわからないのです。一人ひとり丹念に掘り起こし、弁士の文化的、歴史的な意味づけをしたい。さらには後世の基礎資料になるように、一冊にまとめたいと思っています」と話す。

 片岡さんは大学卒業前にして、一度は将来を再考してみたという。「弁士の存在はマイナーだが、現在でも通用する芸術活動だ。演劇人よりも、弁士のほうがやりがいはある。将来は必ず無声映画の芸術性が再評価される。その一翼となる人材になりたい」と決意したのだと教えてくれた。今回の取材のなかで、片岡さんのそのことばはつよく印象的に残った。

 話術に興味ある人は、活動写真弁士の道を探ってみてはどうだろう。あえて無声映画を作り、能弁な話術・話芸としての弁士を志す、という試みもほかにあるようだ。

 弁士の仕事は過ぎ去ったものでなく、温故知新、これから新たに掘り起こされる、エンターテイナーの職種に間違いない。「弁士をやりたい人は積極的に入ってきて欲しい。体験してみたい人は門をたたいて欲しい」という。これら片岡さんの熱意と情熱に接するほどに、弁士の話芸がこのさき再評価され、光の当たる時代がくるだろう、という確信と期待を持った。【了】

■関連情報
片岡一郎さん
記者HP:穂高健一ワールド
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一【 東京都 】
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